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otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・文化評論・思想・社会科・国語表現・性文化・スポーツ観戦・科学・飲み食い・与太話 【一部、性的に過激で頭のおかしな記事があります】

ティンガマラ

 前ブログにもあった記事で、今年4月に消滅させてしまったものです。日本ではほとんど記述のない生物の記事なので、改めて書き直したいと思います。

 【ティンガマラって何?】

 ティンガマラという名前を聞いて、ピンとくる方はほとんどいらっしゃらないと思います。オーストラリアに5500万年ほど前に暮らしていた有胎盤類で、有袋類との生存競争に敗れて絶滅した哺乳類です。

 日本ではNHKの番組で歯の化石だけ取り上げられたことがあります。とりあえず、関連のブログ記事や書籍などのリンクを貼ってみます。ただし、リンク先には正確ではないと思われる記述もあるので、ご注意ください。

blog.goo.ne.jp

birdbookreading.blog.fc2.com 

恐竜絶滅

恐竜絶滅

 

 我らほ乳類 2億2000万年の戦い

 

【古生物】極小型の齧歯類から巨大カンガルーまで多種の化石を大量に含んだ鍾乳洞群発見 気候変動への適応過程にヒントか/豪州

 

【哺乳類の進化の歴史:教科書バージョン】

 オーストラリアの哺乳類といえば、単孔類と有袋類です。現在オーストラリアは、カンガルーやコアラをはじめとする有袋類が広く適応放散を遂げた、有袋類が隆盛となっている地域です。オーストラリアの有胎盤類は、コウモリと一部の齧歯類を除けば、ディンゴをはじめ人間が持ちこんだものばかりです。先日、ドゥーガル・ディクソンのところで歩くコウモリに触れましたが。

otomegu06.hateblo.jp

 教科書的には、有袋類と有胎盤類では、有袋類の後に有胎盤類が出現したということになっています。そして、世界各地にいた有袋類を有胎盤類が駆逐して、現在の有胎盤類の天下を作ったということになっています。未熟児のような状態で生まれてくる有袋類胎盤の中で成長して生まれてくる有胎盤類では、有胎盤類のほうが知能が高くなるため、知能に勝る有胎盤類が有袋類を駆逐した、という説明が先ほどのNHK「我ら哺乳類」ではなされていました。また、有袋類より有胎盤類のほうが生殖機能が優れているため、有胎盤類は有袋類に勝った、などという説明もされてきました。

真獣下綱 - Wikipedia

有袋類 - Wikipedia

 オーストラリアは他の大陸から早い時期に切り離されたため、有胎盤類が侵入せず、有袋類の適応放散が起こりました。南米には有胎盤類もいましたが、有袋類と共存・競争してきました。しかし、約300万年前、南米はパナマ陸橋によって北米と陸続きになり、北米から有胎盤類が侵入してきました。そして、南米の有袋類オポッサム、ケノレステス、ミクロビオテリウムを除いて絶滅してしまい、現在の生態系になりました。

ティラコスミルス - Wikipedia

オポッサム - Wikipedia

ケノレステス目 - Wikipedia

ミクロビオテリウム科 - Wikipedia

 ・・・と、教科書的な説明をまとめるとこんなところでしょうか。しかし、この説明では不可解な点があると思います。知能だけで有胎盤類が有袋類に勝る、という図式が本当に成立するのでしょうか。また、オポッサム有袋類ですが、有胎盤類の侵入にもびくともせずに、逆に北米に生息域を広げています。オポッサムの繁栄の理由についてはどう説明すればいいのでしょうか。

 そして、ティンガマラの化石が状況証拠として教科書的な説明を覆します。ティンガマラの化石は主にオーストラリアのマーゴンなどから発見されていますが、その年代は約5500万年前のものだそうです。つまり、コウモリや齧歯類の侵入のはるか以前、有袋類と有胎盤類がともにオーストラリアに生息していた、そして有胎盤類が化石として残るほどの相当数生息していた、という証拠になるのです。ティンガマラは分類上、コウモリや齧歯類とは全く別系統の有胎盤類のようです。

ABC Science - Australian Beasts - Fact files - Tingamarra (Tingamarra porterorum)

ABC Science - Australian Beasts - Fact files - Tingamarra Bandicoot

Tingamarra - Wikipedia, the free encyclopedia

Tingamarra Fauna - Wikipedia, the free encyclopedia

オーストラリアの哺乳類化石地域 - Wikipedia

(ティンガマラのフィギュアの写真)

http://www.asahi-net.or.jp/~CH2M-NITU/eggayLKA.htm

 

【哺乳類の進化の歴史:新バージョン?】

 では、哺乳類はどのように進化したのでしょうか。前述のNHK「我ら哺乳類」では、このような説明がされていました。

 有袋類と有胎盤類は同時期に現れ、ともに世界じゅうに分布を広げていきました。そもそも、生殖機能において胎盤が絶対に優れているということはなく、環境要因などによって最適な生殖のあり方は変化します。また、別に胎盤は哺乳類特有の機能ではないので、胎盤だけで進化や生存における優位性を決めつけることはできません。

胎盤 - Wikipedia

 有袋類と有胎盤類は世界中で生存競争を繰り広げました。北半球(ユーラシア・北米・アフリカ)では気候が比較的湿潤だったため、前述の知能の差によって有胎盤類が生存競争を制し、有袋類が絶滅しました。それに対し、南半球(南米・オーストラリア)では気候が比較的乾燥していて厳しかったため、有袋類のほうが厳しい気候に適応して生き延びて、生存競争に勝ちました。

 つまり、ティンガマラは有袋類によって駆逐された有胎盤類だったということになります。今のところ私が書けるのは、大まかな内容で恐縮ですがここまでです。

 オーストラリアの暁新世や始新世の有胎盤類については、まだ研究はこれからのようですので、続報を待ちたいと思います。また、日本でもこれから紹介が進んでほしいものです。

  ちなみに、5500万年前といえば、活発な海底火山活動の影響で、地球が急激に温暖化するとともに、海洋生物の大絶滅が起こった「暁新世/始新世境界温暖化極大イベント(PETM)」で知られています。このイベントとの関連も面白そうですね。

blogs.yahoo.co.jp

www.afpbb.com

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