otomeguの定点観測所(再開)

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2016参院選の争点

 22日から参院選の選挙戦が解禁となります。昨日、主要9党の党首がネット討論をしていました。しかし、なんとも盛り上がりに欠ける気がしたのは私だけでしょうか。

 【ネット党首討論の感想】

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  正直、もっと激しい議論をしてほしかったという印象です。

 アベノミクスの評価という経済的視点を自民党は主要な争点としています。対して、野党はアベノミクス失敗を盛んにアピールしていますが、自民党の財政政策・金融政策の再動員にかわる施策を野党は打ち出すことができていません。消費増税先送りとTPP反対でほぼ全政党が一致しているので、経済政策ではほとんど違いが明らかにならなかった印象です。そして、経済政策を骨太に論じなければ社会保障政策の論争の基盤も作れないので、社会保障政策でも与野党間に目に見えた差異は現れませんでした。

 野党が争点にしようとしている憲法改正や安保関連法案については、あべちゃんが争点にならないよう逃げ回ることに終始したため、議論になりませんでした。争点にしたら自民党に不利になることは分かっていますからね。そして、憲法改正から逃げ回るため、安全保障関連の問題についても議論がかみ合いませんでした。討論の前から予想されたことではありますが。

mainichi.jp

 あべちゃんは積極的に弁をぶちあげるポーズをとりながらもうまく逃げ回り、野党は逃げるあべちゃんを追及しきれずに終わってしまった印象です。結局、各党の政策要綱に目を通せば済む話だったという感想です。

 民進党については、本来なら政権奪還に向けてのアピールをしなければいけないはずですが、大望のはるか手前で足踏みしている状態です。野党としての矜持がまだまだまだまだ弱いです。政権奪取というバルーンをぶちあげている共産党のほうがまだ骨っぽいかもしれません。野党がやはりまだ烏合の衆であることを改めて明らかにした討論会でもありました。どの党に投票するかを検討するための手掛かりにはあまりなりませんでした。政権構想を示せない野党を叩くあべちゃんは、残念ながら正しいと思います。

www.sankei.com

【6/22追記】

 古市の小沢一郎に対する発言が炎上していました。古市が社会人としての常識に欠けた振る舞いをしただけだと思います。一応関連リンクを貼っておきますが。古市の著作は面白いものも多いんですが、社会人経験がないとこういうところでぼろが出ますね。それに、ニコニコのお詫び文は仕事上の詫び文・始末書の書き方としては0点です。もっとビジネス文書としてちゃんとした書式にできないのか。

一番目立ったのは古市憲寿氏 「ネット党首討論」で小沢一郎氏怒らせる : J-CASTニュース

“永遠の幼児脳”古市憲寿のおバカぶりが露呈された党首討論 | カレイドスコープ

小沢一郎氏を激怒させた、「社会学者」古市憲寿とは - NAVER まとめ

お詫び | niconico

古市憲寿さんのツイート: "党首討論、色々ありましたが、とりあえず18歳にもかかわらず洋上にいて投票ができない高校生がいることを党首たちに伝えられたのはよかったです。

これ、本当にどうにも何ないのかな。洋上投票自体は仕組みとしてあるんだから、どうにかしなきゃダメだよね?"

 

【争点にならない経済政策】

 自民党参院選の争点について、アベノミクスの評価という経済的視点を持ち出しています。あべちゃんは雇用指標が改善していることなどを根拠にアベノミクスは成功だとぶちあげ、日銀総裁はバブル期並みの完全雇用が達成されていると政権の援護射撃をしています。所詮、日銀総裁はあべちゃんの応援団ですからねえ。

www.nikkei.com

 しかし、労働人口が減り、求人のミスマッチがほとんどすべての業界で発生する中で、雇用指標が数字上は上向くのは当たり前なので、アベノミクスの成功云々とは無関係です。金融政策だけで必死にアドバルーンを上げてきたアベノミクスのはったりが破綻していることは明らかです。先日のサミットでは、「リーマンショック並」という的外れな文言を持ち出してアベノミクスの破綻を繕おうとしていました。

www.bloomberg.co.jp

G7伊勢志摩サミット議長国会見 | 外務省

 最近はヘリコプターマネーというアクロバティックな用語も登場してきていますが、つまりは財政政策と金融政策の両方を動員するということに過ぎず、この20年余り、日本が繰り返しやってきた景気対策の焼き直しに過ぎないと思います。アベノミクスの喧騒が一回りして1990年代ごろの政策に戻ってきただけだという印象です。現在の自民党の経済政策が実行され続ける限り、景気が上向かず、GDPが拡大せず、現状維持から徐々に縮小していく状態が続くだけのような気がします。

jp.reuters.com

rh-guide.com

www.bloomberg.co.jp

jbpress.ismedia.jp

 各党が向き合わなければいけない問題は極めてシンプルなはずです。深刻な国の借金をどうするのか、どう考えても立ち行かなくなる社会保障制度を切り詰めながらどうやって維持していくのか、この点に尽きます。本来、選挙対策のためのばらまきなどおためごかしはやめて、国民に負担増が必要であることを真摯に訴えるのが、3党合意の趣旨だったはずです。

 自民・公明が3党合意の趣旨から逸脱して選挙対策に走るなら、民進党は真正面から3党合意の意義を謳い、消費増税の必要性と社会保障の削減、さらには国の予算の無駄のさらなる削減を訴えたうえで、いかに借金を減らしていくかを唱えるべきです。景気が良くなったら借金を減らしていこうという妄言はもういいです。

三党合意 - Wikipedia

 TPPについても、民主党政権時代から交渉を進めてきたものなんですから、今さら反対だの慎重にだのと喚くのではなく、TPPを使っていかに農業などを改革していくのか、リベラルな政策を並べるべきです。

環太平洋戦略的経済連携協定 - Wikipedia

 しかし結局、選挙対策のため、消費増税延期とTPP反対については各党の足並みが揃っていますので、事実上、経済政策において与野党間に大きな差異はありません。よって経済は争点になりません。こうしてまた国の借金が増えていくわけですね。

 

【真の争点:憲法改正と安保関連法案】

 では、参院選の争点をどこに見出すべきか。迷うことなく、憲法改正と安保関連法案です。民進党共産党の主張に完全に乗ってしまいますが、自民・公明が参議院改憲に必要な全体の3分の2の議席を占めることを阻止し、あわよくば過半数割れに追い込んで安保関連法案廃案に持っていく道筋をつけることが、今回の参院選で最も大切なことです。少なくとも、3分の2については何が何でも阻止しなければなりません。自民党改憲について争点にしないよう逃げ回っていますが、だまされてはいけません。

 いろいろヨタを含みながらで恐縮ですが、以前、私の改憲に対する意見についてはテキスト化しております。

otomegu06.hateblo.jp

 改めて私の見解を要約します。憲法改正は行うべきです。自衛隊の存在も憲法に明記すべきです。ただし、新しい人権の項目を増やしたり、9条の精神を守りながら自衛隊が活動するための条文を作ったりするなど、改憲はあくまでリベラルな観点から行われるべきものです。緊急事態条項など人権を制限するような記述が並んでいるので、国家主義的な自民党改憲案は信用できません。現在の安倍政権による改憲に向かう流れは阻止しなければなりません。

 本来なら、民進党を中心とするリベラル勢力から改憲案が出てきて、きちんと改憲についての論争が行われることが理想です。しかし、とてもそんなことは無理なので、まずはあべちゃんの改憲の野望を阻止することが第一です。

 また、安保関連法案は明確な憲法違反であり、日本国憲法および立憲主義法治主義を踏みつけにするものです。憲法を守らなければならない内閣総理大臣が自ら堂々と憲法を踏みにじった、戦前の軍国主義ナチスドイツなどに通底する愚行です。安保関連法案は即刻廃案にするべきです。

 こういうリベラルな主張をすると、中国や北朝鮮の脅威とどう向き合うのか、日本の安全保障をどうするのか、という問いをぶつけられます。アメリカと協力して中国や北朝鮮の脅威に立ち向かうことは、集団的自衛権ではなく個別的自衛権の枠内で十分に可能だと考えます。結局、中国や北朝鮮に対しては現状の日米安保条約を使い、アメリカに頼りながら対応していくしかありません。しかし、そのために憲法を踏みつけにする必要はないはずです。集団的自衛権によって憲法の拡大解釈が屋上屋を重ねられ、立憲主義法治主義の根幹が揺るがされることは、極めて由々しき問題です。

 アメリカ軍については、また事件が起きて反対の声が高まっています。しかし、極めて不謹慎な表現ですが、ここでは事件のことはとりあえず置いておきます。日本の防衛のための抑止力としてアメリカ軍と米軍基地が必要なことは間違いありません。自衛隊も必要です。まずは安保関連法案以前の法制の枠内でしっかり対応すること。そして、集団的自衛権については改憲で対応するべきです。集団的自衛権の存在を明記しつつも、9条の精神を最大限残す形で憲法改正を行うことが必要です。

www.huffingtonpost.jp

 本来、安全保障や改憲は、思想性は関係なくプラグマティックに議論を進めるべき問題です。保守VSリベラル・革新、改憲VS護憲で凝り固まっている日本の議論のあり方は、実に幼稚で不幸だと思います。

 

 民進党に求められるもの】

 政策や政治運営の稚拙さなどのはるか以前に、民主党政権は組織が内ゲバを起こして崩壊しました。党員がトップのいうことに従わない、約束したことが朝令暮改でくるくる変わる、些末な発言に反応してどんどん離党していく、党の重鎮同士が子供の喧嘩のような争いをして党を割る、などなど今から振り返っても実に情けない姿でした。

 民進党に看板を掛け変え、表面的にせよ生まれ変わりました。今回の参院選で、民進党は野党第1党として、政権奪還を謳い、政権運営をするための組織力と団結力、そしてリーダーシップがあることを発言と行動で示していくべきです。

 私は本来、リベラルな人間だと思っています。しかし、民進党が今の脆弱な姿をさらし続けるなら、まだ支持はできません。当面、超消極的安倍政権支持を続けるつもりです。超消極的安倍政権支持の立場に基づきつつも、安保法案反対とのバランスを考えながら投票することになると思います。

 

【関連リンク】

第24回参議院議員通常選挙 - Wikipedia

自由民主党

民進党 | 国民とともに進む。

公明党

日本共産党中央委員会

おおさか維新の会|大阪の副首都化から、中央集権打破。

社民党OfficialWeb

生活

日本のこころを大切にする党

新党改革

トップページ|新党大地

日本を元気にする会 | 日本初の直接民主型政治を目指しています。

幸福実現党 - The Happiness Realization Party

国民怒りの声

http://支持政党なし.com/about.html