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アントン・イェルチン追悼/パヴェル・チェコフ追悼

 まさかこの名前での追悼記事を書くことになるとは・・・。事故死の記事を見て、非常に驚きました。若すぎます。私はトレッキーではありませんが、SFファンとして〈スター・トレック〉はずっとチェックしている必須の作品です。21世紀の〈スター・トレック〉ファミリーとしてこれからもっと活躍する俳優さんだっただけに、そして、〈スター・トレック〉新作公開と世界プレミアが迫っていただけに、本当に残念です。

 アントン・イェルチン極私的回顧】

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アントン・イェルチン死去 過去に堀北真希、松山ケンイチ、手越祐也らと共演/2016年6月20日 - 映画 - ニュース - クランクイン!

アントン・イェルチン - Wikipedia

 演技派と形容されるイェルチンですが、絶妙なせりふ回し、的確な感情表現、表情の陰影、時にユーモラスも交える動作など、素人目ですが現在の若手俳優の中でも演技力では抜きん出た人だったと思います。

 2001年の『アトランティスのこころ』で初めてイェルチンを見ました。『15ミニッツ』にも出ていましたがあまり印象は残っていないです。子役時代はコケティッシュでイノセントな存在感が印象的でした。

 ハイティーンから20歳にかけては、演技がどんどんうまくなっていった印象でした。『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』では金儲けにいそしむ高校生をコミカルに演じていました。『スター・トレック』ではエンタープライズ号の航海士パヴェル・チャコフの陽気さ、若さゆえの前のめりや迷い、使命感の強さなどを的確に演じていました。『今日、キミに会えたら』では複数の愛に揺れ動く若者の移ろいをシリアスとコミカル綯交ぜに演じ、『フライトナイト/恐怖の夜』ではオタク少年の成長と戦いをどちらかといえばコミカルに、オタクのダメさ加減を強調しながら演じていました。

 最近の作品では徐々に円熟味が出てきていたように思います。『君が生きた証』では、イェルチン自身のバンド活動の経験も生かしながら、音楽青年の情熱を感情表現細やかに演じていました。『ラスト・リベンジ』では、映画はひどい作品でしたが、イェルチンはニコラス・ケイジの相棒役として息の合ったところを見せていました。

 まだまだ書きたいことはありますが、きりがないので、イェルチン出演作のマイベスト5を並べて、各作品の感想や印象について短評でまとめます。

 

アントン・イェルチン出演作 マイベスト5】

 1、スター・トレック 

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スター・トレック イントゥ・ダークネス [Blu-ray]

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 (『スター・トレックBeyond』facebook

https://www.facebook.com/startrekmovie.jp/?fref=ts

 SF者としては、やはりこれを1位にせざるを得ません。イェルチンが演じているのはエンタープライズの航海士パヴェル・チェコフ。陽気で女好きなところ、若くて前のめりなところ、災難にあったときのユーモラスさ、若さゆえの不安定な心情など、イメージにぴったり合っていて、まさにはまり役でした。歴代でも1番のチェコフ俳優だったと思います。

 

2、君が生きた証 

君が生きた証 [DVD]

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  イェルチンが演技力の成長と円熟を存分に見せつけた作品です。自らのバンド経験を活かしながら、バンド青年・クエンティンの情熱や痛み、細やかな心情の移ろいなどを情感たっぷりに演じています。劇中曲の歌や演奏も堂に入っていました。

 

3、アトランティスのこころ 

アトランティスのこころ 特別版 [DVD]

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  子役時代の作品からはこれを持ってきました。イェルチンが演じているのは主人公の片割れボビー・ガーフィールドの少年時代です。11歳の少年のイノセントさとコケティッシュさを外見で表す一方、大人の世界に足を踏み入れる不安、大人への不信、大人の秘密を覗いてしまったことによる葛藤など、思春期手前で揺れ動く少年の心情を子役とは思えない演技力で演じていました。

 

4、ターミネーター4 

  SF者としてはこの作品も外せません。イェルチンが演じるのはスカイネットのターゲットになっている孤児の少年カイル・リース。アポカリプス的な世界におけるサスペンスや恐怖、戦いに対する情動などを鮮やかに表現していました。戦闘シーンもそつなくこなしていて、続編を期待させる内容でした。第5作の制作中止が悔やまれます。

 

5、チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室 

  イェルチンが演じるのは主人公チャーリー・バートレット。主人公がトイレで不良たちを相手にカウンセリングを行い金儲けを目論むという、コメディ映画です。映画自体はあまり面白くないんですが、徹底的にコミカルかつユーモラスに演じているイェルチンの怪演が見物なので入れてみました。

 

【まとめ】

 今年は〈スター・トレック〉にとって実り多き年になるはずだったんですが、本当に残念です。遺作となる『Beyond』は括目して観ないといけませんね。航海士パヴェル・チェコフはヴァルカン星のさらに彼方へと永遠の旅に出ました。彼の航海が安らかで幸多きものになることを願いつつ、謹んでご冥福をお祈りします。