先月の日本SF大会・いせしまこんで小谷真理さんから聞いて、しばらく気になっていたネタの調べがついたので、念のためテキスト化してご報告します。非常にマイナーなネタなのでご注意ください。
【ウィリアム・ノールズ】
恥ずかしながら未読だったのですが、かつて《奇想天外》に連載されていた「SF怪作劇場」というコーナーに、ウィリアム・ノールズという作家の「好色な神への捧げもの」というエッセーが連載されました。《奇想天外》の入手は難しかったので、文庫の採録を入手して読んでみたのですが。
奇想天外(Kiso Tengai) 1974/ 1-10,1976/ 4-1981/10,1987/ 4-
上記リンクでも触れられていますが、かつてパルプの表紙を飾ったおねーちゃんのおっぱいの大きさと脳筋のヒーローの関係性について考察したというエッセーです。あまりにしょーもない仮説と定番、面白いのかつまらないのかよく分からない安っぽいパルプ作品が乱打され、思わず失笑しながら読み進めてしまいましたが、著者が強い確信をもって書いているため、妙な説得力がありました。
このエッセーの作者が長年正体不明だったそうですが、小谷さんによると、アメリカのSFファンダムのとある女性の調査で、その正体が有名なポルノ作家であったことが分かったそうです。正確な作家名を私が聞き逃したようで、誰のことか思い出しながら調べていたのですが、どうやらこの作家で間違いなさそうです。
【William Henley Knoles/Clyde Allison 】
The Life and Death of Clyde Allison | Vintage Paperback Archive
Allison, Clyde (William H. Knoles) (pulp fiction writer)
William Knoles | Those Sexy Vintage Sleaze Books
ポルノ作家としては有名な人物だったようで、複数の筆名を使い分けながらかなりの数の作品を残しているようです。小鷹信光文庫には1冊入っていました。
〈007〉のパロディである〈0008〉なんてシリーズもあって、どこかで訳されているという話も聞いたのですが、見つけられませんでした。
また、SFファンであり、SF作家・ファンダムとも交流があったそうで、その縁で上記のエッセーの執筆につながったということでしょうか。ポルノを量産する傍ら、ミステリなどのライターもやっていたようで、筆力は高く評価されていたようですね。彼に関係する作家として、ドナルド・ウエストレイク、ローレンス・ブロック、ハーラン・エリスン、ロバート・シルヴァーバーグなど、なかなか錚々たる名前が出てきます。
しかし、リンク先のテキストを読む限りでは人生山あり谷ありだったようで、雌伏の時期もいろいろあったようです。結局、1993年にがんで亡くなったそうです。ポルノが売れたために金銭的にはSFのパルプ作家よりよっぽど儲けていたようですが、お金と作家としての志は別だったのかもしれません。
正直、この作家のパルプを読む気にはならないですし、今後日本で紹介が進むとも思えませんが、ある程度ですが疑問が解けたご報告ということで駄文化してみました。