otomeguの定点観測所(再開)

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そうはいってもやはり外来種は駆除すべきである

 先日の外来種関連のテキストとは異なる趣旨のタイトルのテキストになりますが、今回は、先日紹介した本とは別の見解を示した本について紹介したいと思います。外来種問題について考えることの難しさが分かるような気がします。

otomegu06.hateblo.jp  

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD

 

 

 【まずは本と著者の紹介】 

そもそも島に進化あり (生物ミステリー)

そもそも島に進化あり (生物ミステリー)

 

 『そもそも島に進化あり』がやばいほど面白い。生物進化と多様性の鍵は島と鳥にあった! - 本から見たセカイ

そもそも島に進化あり

「そもそも島に進化あり」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

川上和人著:「そもそも島に進化あり」入荷: 営業日は毎日更新!ホビーズワールドスタッフブログ

そもそも島に進化あり 感想 川上 和人 - 読書メーター

 こちらの本もWEB上の感想などではなかなか好評を博しているようですね。著者の川上和人は鳥類学者で、森林の研究や島嶼の環境および生物相の研究などを主に手掛けているようです。以前、このシリーズの開幕として次のような本もありました。こちらもかなり面白い本で、当ブログの「極私的回顧」で年末にランクインさせた記憶があります。その時のテキストは春に吹っ飛ばしてしまいましたが。 

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

 

  科学ノンフィクションというと、扱っている題材は面白いものに、著者の文章が一般の読者向けとしてはどうも硬かったり、文章そのものが下手だったり、ユーモアのセンスがいまいちだったりするものが多いです。そのため、このジャンルの本を読むときには、わざと少しバイアスをかけて読むようにしているんですが、川上和人の文章は読みやすいうえにユーモアのネタも軽妙で面白いので、読者を惹き込むリーダビリティがあります。もちろん、きちんと面白い素材を扱っているので、科学ノンフィクションの著者としては非常に優れた人物です。

 今回、『島に進化あり』では、島嶼という環境の誕生から、そこに生物が侵入し、生態系が形成されてから進化を始め、そして人間や外来種の侵入などによって固有種が絶滅したり、島の環境が変化したりするまでの、これら一連の流れについて、分かりやすく紹介してくれています。小笠原、ハワイ、ガラパゴスなど、代表的な島嶼の環境が紹介されていて、著者の研究者としての視座を親切に読者の位相まで下ろしてくれている好著です。

 重箱の隅をつつくというか、揚げ足をとるようなツッコミをすれば、地上性のコウモリについて記しているところでツギホコウモリへの言及がなかったり(確かにこいつらにはまだ飛翔能力が残っていますが、祖先には飛翔能力のないものがいたという可能性が指摘されています)、

www.youtube.com

地を這うように歩くコウモリ「ツギホコウモリ」 : カラパイア

ツギホコウモリ科 - Wikipedia

1600万年前の大型「歩くコウモリ」新種、NZで化石発見 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 鼻行類がなぜか実在した哺乳類のように書かれていたりしましたが、まあ些末なことでしょう。 

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (平凡社ライブラリー)

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (平凡社ライブラリー)

 

核実験によって絶滅した、知られざる奇妙な生物群『鼻行類』 - NAVER まとめ

鼻行類 - Wikipedia

 

島嶼においてはやはり外来種は駆除されるべきである】

 さて、外来種問題に絡めて『島に進化あり』を扱うとすると、第4章がターゲットになります。筆者は島嶼の生物を研究する立場から、外来種の安易な移入・侵入には反対の立場であり、必要に応じて駆除する必要性をしっかり記しています。環境に適応し、生態系の一部となってしまった外来種の駆除がほぼ不可能であることは、筆者も理解しています。全ての外来種を駆除すべきだといっているわけではありません。また、安易な駆除がかえって島の環境や生物相を破壊し、バランスを崩すことがあることも理解しています。

 しかし、島嶼の生物相や生態系は大陸のそれに比べて多様性が低く、脆弱なものが多いです(もちろん例外もありますが)。そして、人類が持ち込んだ外来生物によって島の固有種が絶滅したり、島の環境が改変されたりすると、回復はほぼ不可能になってしまいます。そのため、島嶼外来生物を持ち込むことは極力避け、そしてすでにいる外来生物についても駆除もしくは適切な管理を施すべきであると主張しています。島嶼の生物に対する日本人的な情も強くにじみ出ています。フレッド・ピアスのニュー・ワイルドという価値観から見ると、外来生物原理主義的に嫌う立場に近い価値観だといえるでしょう。

 川上和人も、自分の主張が島嶼の固有の生態系や生物を守りたいという「愛」「エゴ」からくるものだ、ということは自覚しています。島嶼の固有生物を守ることで人間が文化的・経済的に受ける恩恵は大して多くありません。ニュー・ワイルドという価値観のもとに合理的な行動をとったほうが理性的でしょう。しかし、島の生物を守りたいという単純でプリミティヴな思いこそ、案外、人を強く突き動かす原動力なのかもしれません。絶滅した生物は外来種を駆除しようが適切に管理しようが、復活しません。しかし、わずかにでも生き残っていれば、保護あるいは保全によって回復させることはできるかもしれません。

 そのためになすべきことは、外来種がこれ以上在来種に悪影響を及ぼさないような、バランスの取れた生態系の構築だそうです。そして、駆除すべき外来生物については駆除を行いつつ、これ以上の外来生物の拡散を人間が行わないことだそうです。思想の根本はニュー・ワイルドと異なりますが、行きつく結論はいかに現実に対処していくかというシンプルなものであり、ピアスと合意できそうな部分があるともいえます。合理的に現実を見つめる視座では通底するものがあるんでしょうかね。

 

【まとめ⇒結局やることは一緒】

 外来種は悪なのか、そうでないのか? 現状、私の考えは「悪」です。ピアスには笑われてしまうかもしれませんが、やはり外来種は生態系を崩している輩であり、無闇な拡散は厳禁ですし、侵入した外来種は生態系の一部に組み込まれる前に極力除去すべきです。外来種のもたらす影響や生態系の頑健さについてあまりに楽天的なピアスの主張には、やはり違和感を覚えますし、心情的に受け入れにくい側面が多いです。

 しかし、すでに外来種を組み込んでシステムとして安定した生態系をいじることは不可能です。対症療法的ですが、今ここにある現実の外来生物の影響に場当たり的に対処しつつ、これ以上の拡散を防ぐために気を付けつつ、保全できる「在来生物」については保全していくしかない、というごく当たり前の結論にいきつくしかない気がします。

 結局、外来種に対してどんなスタンスでものを考えようと、現実に行うべき対処としてやるべきことは大きくは変わらないということですね。奇妙な心情の移り変わりですが、何だか安心しました。引き続き、外来生物については個人的に興味を持って追っていくことになりそうです。