otomeguの定点観測所(再開)

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2017年極私的回顧その16の2 思想・評論(トランプ)

 思想・評論の続きとしてトランプに対する雑感をまとめます。雑駁なまとまりのないテキストが続きますが、何卒ご容赦ください。

 

otomegu06.hateblo.jp

【トランプはやはりトランプ】

 トランプの大統領就任前、就任したらまともになり、共和党がバックアップして無難に政権運営を行うかもしれない、と思った人は一定数いたはずです。早期のレームダック化を期待しつつも、私も少しはまともになるかもしれないと思っていました。

 しかし、トランプはやはりトランプでした。政権運営に一貫性はなく、政策のビジョンもなく、白人保守の支持層に媚を売り、品性のない言動は変わらず、衝動的な振る舞いは収まらず、人種差別的な発言もなくなりませんでした。文字通りプロレスのマイクパフォーマンスです。傍から見ていて非常に面白いですが、この人が核ミサイルのボタンを握っているのですから笑うに笑えません。

www.huffingtonpost.jp

 支持率も相変わらず低迷しているので、日本から見ていると政権基盤はもろそうに見えますが、実は安定して政権運営されているともいえるようです。発足当時から支持率はあまり変わっていません。

www.sankei.com

 共和党支持者や保守的な白人層は根強くトランプを支持しているようです。知的エリートにとっては、品性を欠き虚偽に満ち攻撃的で軽率なトランプの反知性的発言は耐え難いものです。しかし、エスタブリッシュメントによる支配に嫌気がさしている多くのアメリカ人民/ポピュリストたちにとっては、感情に裏表のない率直なトランプの姿は心地よいものなのでしょう。トランプが大統領の座にいれば反エスタブリッシュメントとしての旗頭になるのですから、それだけでも歓迎する人がたくさんいるということです。感情的にトランプを支持する層が揺らがない限り、政権の基盤が崩れることはないと思います。

 トランプ政権は一定の成果もあげています。TPPから離脱し、法人税を減税し、パリ協定を離脱し、エルサレムイスラエルの首都として承認しました。失業率が低く、経済が堅調であることはトランプが強気になれる数少ない要因でしょう。株価がこのところ大きく下げているので、今後どうなるかは知ったこっちゃありませんが。今年11月の中間選挙について共和党不利の観測が流れており、選挙の結果次第ではレームダック化の可能性も十分あります。とはいえ、思っていたより政権が安定した2017年だった、と総括するべきでしょう。

 

【アメリカの国際的な地位低下】

 一方、外交においてはアメリカの存在感・指導力の低下が際立ちました。ホワイトハウスがまとめた安全保障戦略ではモンロー主義は回避されたようですが、トランプ自身が異なる発言を行い、暴走気味にあちこちに突っ込んでいく限り、安定した安全保障戦略の遂行は望めません。また、トランプの同盟国軽視の言動が収まらない限り、国際的な連携も取りづらいでしょう。貿易についても、アメリカ第一が掲げられている一方で、公正な貿易の追求という旗も下ろされておらず、様々な矛盾をはらんだままです。大統領周辺と共和党中枢・軍・官僚などが各個対立してばらばらに発言し・動く状況が、トランプ政権の本質であり現状です。今年もいびつな状況が改善されるとは思えません。

 トランプは、外交や貿易を国内向けにトランプらしさを演出するためのガジェットとして用いています。そこに国際主義・民主主義・人権などの普遍的な概念はありません。あくまでプロレスのマイクパフォーマンスであり趣味の良くないショーマンシップなのです。日本はそのことを理解しつつ、割り切ってトランプ政権と付き合っていく必要があります。

 幸い、あべちゃんとトランプの関係は非常に友好的であり、日本はトランプが気にかけてくれる数少ない同盟国です。北朝鮮金正恩との舌戦がミサイルの打ち合いに発展する可能性には警戒が必要ですが、とりあえず今のところ日本にとっての安全保障の基盤は揺らいでいません。トランプは親ロシア・親プーチンであり、中国との関係を悪化させる気もないため、今後、外交における日本の比重が変わってくる可能性はあります。まあ、北朝鮮がアメリカを挑発し続ける限りは大丈夫ですかね。

 EUがアメリカに代わる国際秩序の柱になる見込みはなく、中国・ロシアはこれ幸いと影響圏を拡大しています。アメリカとの友好を保ちつつ、中国・ロシアとの関係を悪化させず、EUやアジア諸国などと自由貿易について共同歩調を張るという、多面的な外交が日本には求められます。新たな国際秩序構築に向けて日本が指導力を発揮する場面があればかっこいいですが、まあ無理ですね。

 これでようやく政治関連のおちょくり・まとめが終了しました。本丸の思弁的実在論関連は明日以降にテキスト化します。