『さよならの朝に約束の花をかざろう』短評
先日、これまた遅ればせですが『さよならの朝に約束の花をかざろう』を観てきました。既にいろいろ感想が飛び交っている映画ですが、雑駁ながら感想をテキスト化しておきます。ネタバレの節はご容赦ください。
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映像や音楽、演出などのビジュアル面は極めて秀逸でした。母子が愛情を交わし、絆を大切にし、ともに成長する姿を謳った物語として、シナリオも素晴らしかったと思います。戦争の中で新しい命が誕生する様子や、成長した子供が父親として家族を守るために戦う姿などは、実に感動的でした。『あの花』『ここさけ』を経て、岡田麿里が訴えたいシンプルなテーマが非常によく伝わってきました。
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でも、戦争の描き方については不満です。政治的な駆け引き、古の種族に対するカタルシス、宗教的・神学的な含意など、深化できる要素はたくさんあったはずですが、単に名も知れぬ近隣諸国が攻めてきたというだけの話に終わりました(もちろん、戦いがメインテーマでないことは理解しているもりですが)。
そして何より、ハイ・ファンタジーとして駄目。世界設定の説明・開示が不十分で、作り込み不足という印象を抱きました。親子の絆を描くという日常レベルの話なら、エブリデイマジックで十分です。この物語を異世界のハイ・ファンタジーとして描く必然性を感じませんでした。恣意的に記号的ファンタジーとして構築された作品ならテンプレートでいいですが、物語に強い普遍性が込められ、記号的ファンタジーとは別位相を目指した作品だったので、ファンタジーとしての作中リアリズムをもっと追求してほしかったと思います。背景世界に普遍性も幻想性も神秘性も感じられず、ファンタジー的な種族や演出やガジェットなどを並べただけに終わったのが非常に残念でした。