otomeguの定点観測所(再開)

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2018SFセミナーレポートその7 《ナイトランド叢書》と《ドラキュラ紀元》の部屋

 ようやくGWの終了です。かなり遅ればせになってしまいましたが、SFセミナーレポートのラストは《ナイトランド叢書》と《ドラキュラ紀元》の部屋、いつもお世話になっております、アトリエサードの皆さんと岡和田晃さんの企画でした。

Flying to Wake Island 岡和田晃公式サイト

岡和田晃_「ナイトランド・クォータリー」Vol.13切り裂きジャック論 (@orionaveugle) on Twitter

岡和田晃 - シミルボン

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アトリエサード

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2017SFセミナーレポート⑥ 《ナイトランド》&岡和田晃新刊~アトリエサード関連 - otomeguの定点観測所(再開)

2016SFセミナーレポートその5 合宿「ナイトランドセッション出張版 ナイトランド叢書のいままでとこれから」「MELANO MUSEUMの謎」 - otomeguの定点観測所(再開)

 

ドラキュラ紀元

 まずは《ドラキュラ紀元》復活からいきます。 

ドラキュラ紀元一八八八

ドラキュラ紀元一八八八

 

 ここ数年予告されていた〈ドラキュラ紀元〉が、ついに復活刊行開始と相成りました。かつてあの世界に耽溺した人間としては、感謝しかないです。SFセミナーで先行発売していたので、さっそくゲットしました。

 かつての東京創元文庫版の改訳という扱いですが、 

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

 

 訳がかなり改良されて読みやすくなっているうえ、いくつかのボーナストラックがついていますので、事実上の新刊といってよく、書籍単体としての価値はアトリエサード版のほうが上です。企画での岡和田さんのコメントを拝借しながらレビューしますが、古今東西の吸血鬼が一堂に会するスターシステム切り裂きジャック事件にまつわる偽史的言説、ノンフィクションとフィクションの境界をいくメタ的な叙述、制度的なミステリとしての構造、ヴィクトリア朝の雰囲気やガジェットなど、さまざまな要素が詰め込まれた傑作です。いくらでも深読みできる重層な作品ですが、疾走するプロットと物語を追うだけでも十分に楽しめます。怪奇幻想の歴史に残る傑作の帰還に、大いに祝杯を挙げましょう。 

【ワインよりクラフトビールのほうが1巻の雰囲気には合うなあ】

ブリュードッグ ドッグC インペリアルスタウト 330ml クラフトビール

ブリュードッグ ドッグC インペリアルスタウト 330ml クラフトビール

 

 SF・幻想文学・ファンタジー・ミステリ・ホラーの各ジャンル小説ファンだけでなく、TRPGファンなどにもお勧めできる作品です。四の五のいわずに買いましょう。

 アトリエサードの岩田さんや牧原さんによると、1~3巻まではかつての東京創元文庫版をもとにした改訳ですが、4巻からは完全な新訳になるとのことです。翻訳の梶元靖子さんのスケジュールは既に押さえてあるそうで、3巻までは年内に、4巻を年明けに出す予定だそうです。 4巻まではとりあえず出すことが決まっていますが、5巻以降については売れ行き次第だそうです。怪奇幻想の徒としては買い支える義務がありますね。

ドラキュラ崩御 (創元推理文庫)

ドラキュラ崩御 (創元推理文庫)

 
ドラキュラ戦記 (創元推理文庫)

ドラキュラ戦記 (創元推理文庫)

 

かじやすこ (@kaji_ysk) on Twitter

 ちなみに、英語では既に5巻まで出ています。

【4巻】

Anno Dracula: Johnny Alucard

Anno Dracula: Johnny Alucard

 

 【5巻】

Anno Dracula: One Thousand Monsters

Anno Dracula: One Thousand Monsters

 

 4巻ではウォーホルやコッポラなどが登場し、スターシステムのカオスがさらに進行します。また、5巻の表紙には富士山が描かれていますが、5巻は明治時代の横浜にイギリスからヴァンパイアが上陸するという、似非ジャポニズムに満ちた痛快作です。巻を追うごとにテンションと奇天烈さの度が増していくのが素晴らしいですね。6巻はサイバーパンクになるかもしれないとのことですが、是非もっと羽目を外していただきましょう。

 

【《ナイトランド》と〈ナイトランド叢書〉】

 さて、続きましては、当ブログで毎年取り上げております《ナイトランド》と〈ナイトランド叢書〉です。《ナイトランド》復活の経緯については、上記リンクの昨年・一昨年のレポートを読んでください。《ナイトランド》最新号は、〈ドラキュラ紀元〉刊行に合わせた切り裂きジャック特集だそうです。 

ナイトランド・クォータリーvol.13 地獄より、再び

ナイトランド・クォータリーvol.13 地獄より、再び

 

  切り裂きジャックについては、岡和田さんが熱く語っていました。切り裂きジャックといえば、ヴィクトリア朝帝国主義を破壊した、時代を象徴する事件です。これまで無数の切り裂きジャック研究が出ており、浅学ながら私も何冊か読んでいますが、岡和田さんの話の通り、私が読んだ中でまともだったのはこれくらいだったと思います。 

決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

 

  細部にこだわった切り裂きジャック研究はたくさんあります。しかし、どいつもこいつも過剰に細部にこだわるくせに、仮説の根本がおかしいことに気づきません。明らかな矛盾や齟齬を放置したままにするので、フィクションとノンフィクションの境界である偽史になってしまうのです。怪しげなものを楽しむのもオカルトの醍醐味の1つですが。まあ、ジャックの正体は永遠に謎のままがいいのかもしれません。

 〈ナイトランド叢書〉は現在第3期に入っていますが、第3期でこれまでに刊行されているのは次の通りです。 

見えるもの見えざるもの (ナイトランド叢書3-1)

見えるもの見えざるもの (ナイトランド叢書3-1)

 

  

魔女を焼き殺せ! (ナイトランド叢書2-6)

魔女を焼き殺せ! (ナイトランド叢書2-6)

 

  そして、第2期で予告されていますがまだ刊行されていないのがこちらで、

『紫の雲』M・P・シール
『ジョン・サーストンの事件簿』M・W・ウェルマン

 第3期で予告されているラインナップがこちらです。

『魔術師の帝国3 アヴェロワーニュ篇』クラーク・アシュトン・スミス
『古き魔術』アルジャーノン・ブラックウッド
『フラックスマン・ロウの心霊研究』E&H・ヘロン
『白蛇の巣』ブラム・ストーカー
メデューサ』E・H・ヴィシャック
『セイレーンの歌/ルクンド』エドワード・ルーカス・ホワイト

 

 去年も書きましたが、怪奇幻想の徒にとっては極上のラインナップです。今年に入ってやや刊行ペースがやや遅れ気味になっている気がしますが、まだ刊行中止にはならないそうです。しっかりコンスタントに刊行してくださいね。

 さて、昨年のSFセミナーや『SFが読みたい!』で予告されて以来、こちらの続報が途絶えていますが、 

Stand On Zanzibar (S.F. MASTERWORKS) (English Edition)

Stand On Zanzibar (S.F. MASTERWORKS) (English Edition)

 

  岩田さんは「絶対出す!」という話でした。翻訳は大変でしょうが、読者としては引き続き待ちますので、できれば早くに刊行してください。

 また、SFセミナーの前に発売になったこちらについてですが、 

アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版

アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版

 

  安田均さんがどうしても4月27日という発売日にこだわったそうです。そこで、発売日に間に合わせるため、岩田さんがビニール梱包を行う会社にガンガン電話を入れて、無理を押して作業してもらったそうです。私も買いましたけど、いろいろ苦労があるんですねえ。できれば久しぶりにタイタン世界でTRPGをしたいところですが、多忙のため時間がなさそうです。なんともったいない・・・。6月下旬には『タイタン ファイティング・ファンタジーの世界』も復活するそうなので、こちらも楽しみですね。 

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 今年は多忙のため非常に遅くなってしまいましたが、これにてSFセミナーのレポートを終了させていただきます。セミナーでお相手してくださった方々に改めてお礼申し上げます。今年はSF関連のイベントにもう顔を出す余裕がなさそうですが、またどこかでお会いする機会があれば、よろしくお願いします。