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絶滅危惧の地味な虫たち

 今年3月、ちくま新書からでた本の毎度遅ればせですがレビューを行います。著者の強い信念と情熱が感じられる好著で、恐らく今年の科学ノンフィクションの中でもかなり上位にくる著作だと思います。

【目立たず取り上げられない虫たちに目を向けることこそ重要】

絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)

絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)

 

書評 「絶滅危惧の地味な虫たち」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

絶滅危惧の地味な虫たち 感想 小松 貴 - 読書メーター

ハナクソサイズの虫たちへの惜しみなき愛情|ちくま新書|webちくま

絶滅危惧の地味な虫たち(小松貴/ちくま新書) – 3行で探せる本当に怖い本

 まだまだいろいろ貼れますが、とりあえずこれくらいで。

 

 上記リンクの書評で詳しく取り上げられていますが、出てくる虫たちはとにかく地味です。というか、一般にはほとんど知られておらず、研究者もあまり取り上げないような虫が多いです。筆者が強調したいのは、そういった地味な虫たちをきちんと取り上げ、レッドリストに載せるだけでなく、保護に向けた動きを取っていくことが重要だということです。

環境省_環境省レッドリスト2018の公表について

https://www.env.go.jp/press/files/jp/109278.pdf

 レッドリストに載っている虫でも、派手で目を引く虫、有名な虫は注目を集め、保護の対象になります。

 例えば、オガサワラトンボは環境省や東京都主導で保護の取り組みが行われていますし、

環境省_オガサワラトンボ

http://www.env.go.jp/nature/kisho/zoshoku/ogasawaratonbo.pdf

https://www.takarashuzo.co.jp/environment/fund/pdfs/h23report_02.pdf

小笠原自然情報センター:自然を守る取り組み:どのような事をしているの

エコアカデミー第8回 「小笠原諸島における固有種の保全活動」|ECOネット東京62ホームページ

 クメジマボタルは保全のためのNPOがありますし、

久米島ホタルの会

NPOホタルの会 ホタルの窓

沖縄県久米島町 - 世界で唯一のクメジマボタル観察ツアー(ファミリー大人2、子供2人) | ふるさと納税サイト [ふるさとチョイス]

 オガサワラシジミは保護増殖の活動が国主導で行われています。

環境省_オガサワラシジミ

www.tokyo-zoo.net

 もちろん、筆者がこれらの活動を否定しているわけではありません。しかし、甲虫、トンボ、チョウなどの大型で目立つ昆虫はレッドリストの一部・160~170種程度に過ぎず、残りの700種近くはハエ、カ、ハチ、アリ、小さな甲虫など、地味な虫たちなのだそうです。これらの中には上で取り上げた保護活動が行われている虫よりも絶滅の可能性が髙いものがいるそうですが、地味な虫たちに対する保護活動は期待できないとのこと。そこで、筆者は偏愛するこれらの虫を取り上げることにしたのだそうです。

 研究者以外の人から見れば、そこいらにいる地味な虫など取るに足りない存在でしょう。私もブヨやハエがどうなろうとまず気にしないと思います。研究者ならば研究対象となる虫に対する思い入れがあるでしょうから、気に留めるにしても。それらの虫にいくら面白い生態があったとしても、紹介記事を読むくらいで自分からアクションを起こすことはないと思います。

 しかし、近年の環境悪化で生態系の一部をなしていた虫たちがひっそり消えていくということは、つまるところ人間が関わっている環境世界がどんどん悪化していくということです。上で取り上げたような虫たちがアイコンとなって、自然保護や生物種保護に対して関心を持つことは入り口に過ぎません。地味な虫たちにも目を向けて、生態系や環境全体を細部まで見渡す眼を持つことこそ重要だということでしょう。

 こういう問題提起をすると、一部の虫マニアに希少な昆虫の情報を与えてしまい、不届きな連中がその虫を採集に殺到するかもしれません。筆者もその危険性には本の中で触れています。しかし、それは承知の上で、あえて多くの虫を紹介しているとのこと。それだけ環境悪化と昆虫の絶滅が危機的な状況にあるということでしょう。

 極私的には、生物の絶滅や環境悪化に対して、最近は私なりにかなり意見が偏ってきているのですが、それはまた稿を改めたいと思います。

 環境問題や自然保護に対して新たな視座を提供してくれるということで、この本は非常に価値が高いと思います。そして、実際、取り上げられている虫たちの生態が非常に愛をこめて、実に面白く語られており、読み応えのある著作となっています。昆虫好きだけでなく、サイエンスに関心のある層に広く読んでほしい本だと思います。

 

【あとがきが・・・】

 あとがきを読んでいて吹いてしまったのは、デートアライブが取り上げれていたことです。筆者の趣味は美少女アニメと焼酎だそうなので、さもありなんですな。一応、あとがきで精霊の設定と地味な虫たちの境遇が酷似していると書いてありましたが、ツイッターなどを見ていると、単に筆者が「精霊たちのあまりに美しく愛らしい様にやられてしまった」だけのような気がします。

片桐仁×小松貴「昆虫愛!」 『昆虫学者はやめられない―裏山の奇人、徘徊の記』(小松貴著)刊行記念 | News Headlines | 新潮社

生き物を求めて今日も行く! 「裏山の奇人」徘徊の記 | 小松貴 | 連載 | Webでも考える人 | 新潮社

デートアⅢ月紀 (@stylogaster1) | Twitter

Ⅲ月紀・四六

 で、小松さんはつまり狂三推しというころでよろしいですね?

dic.pixiv.net

 私は折紙推しですが。

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