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『縄文(縄文展)―1万年の美の鼓動』感想

 こちらも当ブログ恒例の遅ればせですね。東京・上野の東博で開催されている縄文展に行ってきました。すっかりレビューが遅くなってしまいましたが、雑駁ながら感想をまとめてみたいと思います。

 

【関連リンク】

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特別展「縄文-1万年の美の鼓動」(縄文展)

特別展「縄文―1万年の美の鼓動」公式 (@jomon_kodo) | Twitter

特別展『縄文―1万年の美の鼓動』開幕レポート 国宝が放つ圧倒的存在感に、俳優・片桐仁も「縄文酔いしちゃいます!」【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.39 田中未来(ライター) | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

縄文展で購入したグッズについて - うさかめ美術部

縄文展〜記録なき時代の高度すぎる美学は見習うべきな感想〜 : アートの定理

混雑のなかでも古代ロマンはあふれる 『縄文(縄文展)―1万年の美の鼓動』 東京国立博物館(東京上野) - かわいいを探せ!

縄文 一万年の美の鼓動展の感想レポ - 散歩ときどき雑貨と玩具

縄文展行ってきた - 蟻は銀河の夢を見る

【SPUR】右脳を刺激しまくる「縄文アート」#33 #縄文展 | 辛酸なめ子の「アートセレブ入門」

特別展「縄文─1万年の美の鼓動」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

縄文—1万年の美の鼓動:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

 なんぼでも貼れますが、こんなもんで。

 

【では、感想】

 いきなり結論から述べますが、面白かったです。本当に今年の上野は密度が濃い。

 上記リンクでもいろいろ触れられていますが、歴史的な側面とアート的な側面からそれぞれ感想を述べてみたいと思います。

 

 まず、歴史的な側面からいくと、縄文土器の変遷を見ることで縄文時代の多様性を体感できるのが興味深かったです。縄文時代は1万年以上続いた時代で、草創期・早期・前期・中期・後期・晩期と分かれています。北海道では弥生時代に入ってから続縄文時代がありましたが、それは置いといて。

続縄文時代 - Wikipedia

縄文のさらなる発展—続縄文文化 | AKARENGA(あかれんが)

http://hokkaido-history.jp/info/begin

 気候的には間氷期に入って温暖化しており、縄文海進が進んでいた時期は現在よりも温暖でしたので、安定した平和な生活ができていたようです。

縄文海進 - Wikipedia

日本第四紀学会|Q&A

【第二章】縄文海進が残したもの | 龍神を造った男たち―両総用水・その歴史的意義と資産性 Ryoso-Yousui Created the Dragon | 千葉(両総用水/九十九里平野) | 水土の礎

 土器の模様の変遷を辿ると時代背景が透けて見えます。草創期はシンプルな縄目の文様の土器だったものが、そこから徐々にデザインが複雑化していって、中期の火焔型土器で一つの極みに達した感があります。その後、気候が寒冷化していくとともに土器から装飾がなくなり、実用的なものになっていった印象です。土偶も晩期のものは作りがシンプルなので、寒冷化する気候と米作りの流入などによる社会構造の変化がこんなところにも反映されていたのかと思いました。

 そして、弥生土器になると完全に、実用的でシンプルな作りになります。米作りが広まったことで文化の背景が変わったこともありますが、ろくろのような回転する道具で土器を作るようになり(諸説あるはずですが、縄文展では回転する道具を使ったという見解が採用されていました)、焼きの技術も変化したそうなので、技術的な側面も大きかったように思います。弥生土器だけでなく、各国の土器も展示されているので、比較すると装飾の度合いが大きい縄文土器の特異性がよく分かります。

弥生式土器

弥生式土器からロクロは使われたのですか?中国ではロクロはいつご... - Yahoo!知恵袋

縄文土器と弥生土器の違いは主に3つ!デザイン・作り方・目的|終活ねっと

https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/shisetsu/kyoikushisetsu/documents/dokigadekirumade.pdf

 アート的な側面では、やはり月並みですが、岡本太郎が絶賛した、縄文土器の躍動的で神秘的で猥雑でプリミティヴな想像力でしょう。

 草創期・早期の土器から感じられるのは、アニミズムが露出したシンプルな造形と完成です。現代ならばプリミティヴ・アートアウトサイダー・アートと呼称されるであろう、技術的・形式的に小賢しい技巧を用いることなく抽象表現が感覚や認識の写実として力強く投影されるもっとも直接的な美。自然を直接映し出したアニマの荒々しく神々しく禍々しい力がそこにあります。

 一方、中期の火焔型土器に代表される技巧を尽くした独創性も、当然魅力の一つです。火焰型土器・王冠型土器の数々がガラスなしで手に触れることのできそうな距離に陳列されているのを見て、土器の装飾の精緻さに目を奪われました。繰り返しですが、同時代の世界各地の土器と比較しても、縄文土器の装飾は抜きん出ている印象です。上記リンクと重なりますが、日本に脈々と受け継がれてきた「ものづくり」のルーツの一つがここにあるのでしょう。

 

 6つの国宝が集結し、遮光器土偶まで本物を目にできる機会というのは、恐らく二度と来ないでしょう。レプリカではなく本物の迫力。月並みな言い方ですが、すべてそこに集約されています。暑い日が続いていますが、やはり1回は足を運ぶべき展覧会ではないかと思います。