引き続き多忙のため、またしても更新の間が大きく空いてしまいました。書きたいことがいろいろあるのはやまやまなんですが、とにかく仕事の間をぬってできる限り更新していきます。軽量級の記事が続いてしまうと思われますが、飽かずお付き合いいただければ幸いです。
しばらくはため込んでいた書籍などのレビューを吐き出していく予定です。
題名からして尋常でないミステリ短篇集 『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件 感想 倉知 淳 - 読書メーター
倉知淳『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』で久しぶりに猫丸先輩に会えて幸せだった - 300books
『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』(☆3.7) 著者:倉知淳 ( 小説 ) - たいりょうのちょっと一息 - Yahoo!ブログ
男は「豆腐の角に頭をぶつけて死んだ」のか…? 世にも奇妙な事件の真相は―― | ダ・ヴィンチニュース
『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』は倉知さんの世界観に浸れる最高の一冊でした。 - 山田の読書感想文
なんぼでも貼れますが、とりあえずこんなもんで。
もっと前にレビューをあげなくちゃいけなかった本ですが、もう夏も終わりのタイミングになってしまいました。何をやっているんだか。
倉知淳といえば、もちろん何といっても猫丸先輩です。先輩はこの本でも「猫丸先輩の出張」で登場なさっていました。
〈猫丸先輩〉シリーズ初期は本格を志向していた感じでしたが、最近はいわゆる日常の謎にシフトしてきて、ミステリとしての重量感はやや落ちてきています。しかし、推理小説としての骨格は堅固に保っていますし、猫丸先輩のひょうひょうとしたキャラクターも健在です。今回の短編もきちんと水準作でしたので、とりあえずは一安心です。
とはいえ、上記リンクでも複数個所で触れられていますが、倉知淳の本領は、猫丸先輩にとどまらないサブジャンルの広さにあるといえるでしょう。本格・変格・コージー・ユーモアミステリ・バカミス・「奇妙な味」など、倉知淳は本格ミステリというストライクゾーンをハイからロー/インからアウトまで縦横に使い、バラエティに富んだ作品群を生み出してきました。また、最初の頃は寡作気味でしたが、最近は定期的に新刊が出ており、生産力においても脂がのっているように思います。
今回の短編集は、そんな倉知淳の幅の広さを味わうことのできる作品を集めた1冊となっています。第一話「変奏曲・ABCの殺人」は変格、第二話「社内偏愛」は奇妙な味、第三話「薬味と甘味の殺人現場」はバカミス、第四話「夜を見る猫」は猫への愛に溢れたコージーとなっており、ここまでは彩り豊かなオードブルといえるでしょう。
そして、メインディッシュはやはり表題作の「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」でしょう。題名から想像されるのはバカミスかユーモアミステリであり、もちろんそれらの範疇にも属するケレン味溢れる作品です。また、舞台設定、トリックやロジックの構成、探偵役の振舞い、殺人の動機などに鋭い変化球が幾筋も投じられていて、読者の内角を容赦なくえぐってきます。しかも、それらがビーンボールに陥ることなく、全体として非常に堅固なミステリとして構成されているところが、倉知淳の倉知淳たる所以でしょう。
猫丸先輩ファンとしてはあまり作風の手を拡げすぎてほしくない気もしますが、作者の守備範囲の広さとコントロールの良さを知る上では格好の1冊です。