otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

2018極私的回顧その4 本格ミステリ(国内)

 極私的回顧第4弾は国内の本格ミステリです。いつものお断りですが、テキスト作成のため『このミス』ほか各種ランキング、およびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。

 

otomegu06.hateblo.jp

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2019本格ミステリ・ベスト10

2019本格ミステリ・ベスト10

 

 

このミステリーがすごい! 2019年版

このミステリーがすごい! 2019年版

 

 

ミステリマガジン 2019年 01 月号 [雑誌]
 

 

 【マイベスト5】

 まずはマイベスト5から。

 

1、アリバイ崩し承ります 

アリバイ崩し承ります

アリバイ崩し承ります

 

  『本ミス』で1位になった作品ですが、本格ミステリとしての完成度と美しさにおいて、やはりこの作品が2018年ナンバーワンだと思います。物語的贅肉を極限までそぎ落とし、パズラーとして必要な素材だけで構成された極めてシンプルな作品です。各短編とも非常に高い完成度であり、アンフェアな箇所もありません。作者と読者の推理ゲームに徹した、本格ミステリの極北の一つだといえるでしょう。

 

2、友達以上探偵未満 

友達以上探偵未満

友達以上探偵未満

 

 NHK『謎解きLIVE』第二弾の原案から着想された、フーダニットの連作短編集です。怜悧なプロットとアクロバット、そして心地よいひねくれ具合はさすが麻耶雄嵩といったところです。麻耶は数々の名(/迷)探偵を創造してきましたが、今回の探偵役は女子高生の桃青コンビです。まだ発展途上の彼女たちは二人でようやく一人前。やや凄みに欠ける探偵役ですが、麻耶独特のケレン味とねじくれた精神は健在なのでご安心ください。

NHK 謎解きLIVE 『CATSと蘇ったモリアーティ』

過去の事件簿 | NHK 謎解きLIVE

 

3、少女を殺す100の方法 

少女を殺す100の方法

少女を殺す100の方法

 

  少女が20人殺される短編が5本、合計で100人の少女が殺されて1冊の本として成立しています。リアリティなき設定、綾辻行人を彷彿とさせる本格ミステリ的フリークス、倫理性をけし飛ばす壮絶なエログロなど、ツッコミどころ満載の作品ですが、全ては本格ミステリのゲームの舞台を構成するピースです。濃度の高いミステリ要素に読者を溺れさせる思考実験小説として、この作品には高い評価が与えられるべきだと思います。

 

4、叙述トリック短編集 

叙述トリック短編集

叙述トリック短編集

 

 

叙述トリック短編集

叙述トリック短編集

 

  タイトルがこの作品の全てを表しています。それ以上に表現のしようがありません。読者への挑戦状や、謎解きのヒントが明示されているだけで莫、表紙など本文以外の箇所にもヒントがばらまかれていて、本全体が読者を騙す仕掛けに満ちた遊び心満載の本でもあります。これでアンフェアなところがなければもう少し順位を上にしたんですが、それも作者の遊び心の顕れだと思いますので。

 

5、本格ミステリ戯作三昧 

  2018年の評論枠はこちら。長年ミステリ評論を読んできましたが、論の対象となる作家・作品の贋作と評論とを並べた構成は珍しいと思います。正直なところ、贋作短編の出来栄えがいいとは思えないのですが、筆者のサービス精神と作家・作品への愛に敬意を表してベスト5に入れました。

 

【2018年とりあえず総括】

 全体としては豊作だったと思います。ベテラン・中堅・若手の各層からほぼ満遍なく面白い作品が出版され、本格ミステリとして技巧を凝らした作品が多く、2018年もここ数年の作柄の良い状況は続いていました。しかし、一年を通じて突出した作品はなく、物足りなさも残りました。否、ここ数年、飛び抜けて面白い本格ミステリには出会えていない気がします。そろそろオールタイムベスト級の作品が出てきてもいい頃のはずです。是非、2019年は作家人の一層の奮起と傑作の登場を祈りたいと思います。