otomeguの定点観測所(再開)

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上野国立科学博物館 恐竜博2019感想

 毎度毎度の遅ればせで恐縮ですが、やっと足を運んだのでレポートします。科博久々の恐竜の特別展でしたが、期待通りの好展示でした。

 【過去の科博の特別展の感想】

otomegu06.hateblo.jp

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【エキサイティングな知見が並ぶ好展示】

dino2019.jp

 春の哺乳類展が中途半端であったのに対し、今夏の恐竜展はエキサイティングな展示でした。今回の目玉とされているデイノケイルスやむかわ竜もといカムイサウルスはもちろん非常に貴重です。多分、カムイサウルスの全身骨格の実物を東京で観る機会は、今回を逃すと当分訪れないと思います。また、それらだけでなく、恐竜の研究の歴史の的確かつコンパクトなまとめ、シティパティなどオヴィラプトル類をはじめとする羽毛恐竜たち、女性科学者たちの業績への適切な配慮、マシュー・バロンの仮説、ホベツアラキリュウやフォスフォロサウルスといった海竜の展示など、広範で密度の高い展示に強い知的興奮を覚えました。

デイノケイルス - Wikipedia

【研究成果】デイノケイルスの謎を解決 | 北海道大学総合博物館

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カムイサウルス - Wikipedia

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dic.pixiv.net

シティパティ1 - 肉食の系譜

オルニトスケリダ - Wikipedia

恐竜の進化史書き換えか 「革命的」新系統樹、英チームが発表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

チレサウルス、恐竜進化の「ミッシングリンク」か 最新分析 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 きりがないので、これくらいで。

 では、今回の展示において、上記以外に極私的に見どころを思われるものをいくつかピックアップしてみます。

 

【日本初のモササウルス全身骨格】

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モササウルス | モササウルス発掘プロジェクト|和歌山県立自然博物館

日本一の骨格化石 和歌山 モササウルス | LIVING和歌山

和歌山のモササウルス | 川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人 Powered by Ameba

 ほとんどの人がカムイサウルスに群がっていて、この骨格を熱心に見ていた人はほんの数名でしたが、カムイサウルスの向かいに貴重な全身骨格が展示されていました。以下、多くが図録からの参照になります。海竜・モササウルスの化石は今まで日本で40点ほど発見されていますが、和歌山で発見されたこの化石は日本初のモササウルスの全身骨格です。この標本は肢ヒレがいずれも頭骨より大きく、さらに後ろのヒレが前ビレよりも大きいという、他のモササウルス類にない珍しい形をしています。通常、モササウルス類はヒレが小さいため、尾ビレの力で推進力を得ています。しかし、ヒレが発達したこのモササウルスは肢ヒレの力が強かったと見られていて、その点において標本は世界的に貴重なものです。この化石が東京で観られる機会も当分ないかもしれないので、もっと注目されるべき化石です。

 

【絶滅の境界を渡る】

みどころ|恐竜博2019 THE DINOSAUR EXPO 2019

第2回 恐竜絶滅の原因は本当に隕石なのか | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400004/?P=2

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400004/?P=3

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400004/?P=4

第3回 恐竜絶滅の謎を解く鍵と、その意味とは | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400005/?P=2

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400005/?P=3

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/070400005/?P=4

第6回 恐竜が絶滅した「瞬間」の化石が見つかった! | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/071100008/?P=2

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/070300010/071100008/?P=3

 きりがないのでこんなもんで。

  恐竜にまつわる話題の中でも最もエキサイティングなものの1つが、恐竜の絶滅でしょう。大絶滅については今回の恐竜展でも力を入れて展示されていました。上のリンクにもありますが、恐竜の絶滅の原因が小惑星の衝突であるというのはほぼ間違いないようです。しかし、インド・デカン高原を作った火山活動など他の要因も複雑に絡み合っており、大絶滅の真相はかなり複雑であるようです。北米ではK/Pg境界の地層が詳しく調査されていますが、アジアや南米など他の地域ではK/Pg境界の地層自体がほとんど見つかっていないそうです。そのため、これらの地域の恐竜が北米の恐竜と同じく6600万年前に絶滅したという確証は得られていないそうです。新生代の地層から恐竜の化石が発見されたという報告もあるそうなので、大絶滅の真相についてはまだまだ分からないことが山積みのようです。

ダニアン - Wikipedia

 極私的には、6600万年前の大絶滅を「恐竜の絶滅」と称するのは不正確だと思っています。恐竜の子孫である鳥類が現在も繁栄しているからということではなく、恐竜だけでなく海竜やアンモナイト、植物などさまざまな生物が絶滅しているからです。また、このとき哺乳類も75%の種が絶滅したそうですから、哺乳類も恐竜と同じく激減し、辛うじて生き残ったものが新生代に入って適応放散した、という表現が適切でしょう。恐竜よりも哺乳類の方が環境の激変に対する適応力があったのではなく、恐竜も哺乳類も環境の激変に適応できたものだけがたまたま生き残ったのでしょう。