otomeguの定点観測所(再開)

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2019ドーハ世界陸上総括

 またもや大分更新の間が空いてしまいました。ほとんど訪問者のいない場末ブログではありますが、多忙のため、今年は本当に更新が滞っております。恐らく緩いペースで愚にもつかない記事を書き散らしていくことになりますが、飽かずお付き合いいただければ幸いです。

 毎度毎度の遅ればせですが、まずは先日閉幕した世界陸上の総括からいきます。

【金2つ獲得、東京五輪に向けて】

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 金2・銅1・入賞5。結果として2017ロンドン世界陸上・2016リオ五輪を上回ることになりました。特に競歩の金メダル2は快挙といっていいでしょう。

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 国内では駅伝の影に隠れてマイナーな存在ですが、競歩は今や日本の陸上の威信を支える基幹種目となりました。前回の世界陸上の総括でも書きましたが、「箱根駅伝で駄目だった選手が・・・」「アフリカ勢が本格参入していないから・・・」などと揶揄されたのははるか昔のことです。男子は今や世界の強国として冠たる存在になりました。女子の競歩も複数入賞し、男子に追いつけということでレベルが上がっています。

 今回、特に感慨深かったのは鈴木雄介の金メダルでしょう。自称ではなく間違いなく日本の競歩が世界と戦う道を牽引してきた存在でありパイオニアである選手ですが、報道にもあった通り、怪我やら不正やらが重なり、長らく実戦から遠ざかってしまいました。

競歩の鈴木雄介、リオ絶望的 世界記録保持者、けが影響 - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル

競歩・鈴木雄介、不正申請は約30万円分 6カ月間資格停止処分/スポーツ/デイリースポーツ online

 正直なところ、交通費くらい大目に見てやってもいい気がしますが・・・。

 しかしともかく、今回ようやく復活し、東京五輪への道筋ができました。パイオニアが日本でメインポールに日の丸を掲げることを期待したいと思います。

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 東京五輪ホームアドバンテージを生かして、この勢いでメダル量産・・・というのがなかなか難しいのは百も承知しているつもりです。でも、世界を見据えて積み重ねてきた強化が花開いたことは本当に素晴らしいことです。この勢いのまま、是非来年に突入してもらいたいところ。ビックカメラに岡田選手を、エディオンに藤井選手を応援しに行きましょう。

岡田久美子選手(競歩・女子)プロフィール | ビックカメラ女子ソフトボール高崎&陸上部(競歩)

 400mリレーについては既報の通りで皆さんご承知でしょう。100m個人では決勝進出を逃しましたが、リレーではメダルをキープし、東京五輪につなげる結果になりました。個人として切磋琢磨しつつ、チームとしての一体感もあるという、短距離陣のバランスの良さが今回も発揮されました。バトンパス、走者順などの作戦、チームワークなど各国が強化を図る中、金メダルを目指すのはなかなか厳しくなっているようです。来年までに個々の走力をどこまで上げられるかの勝負ですね。こちらもメインポールに日の丸を掲げるチャンスはあると思うので、引き続き期待しましょう。

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 でも、目立った成果はこれくらいで、トラック・フィールドでの入賞はわずか1と、予想はしていましたがやはり厳しい結果に終わりました。やっとのことで出場権を獲得した種目も多かったですし、仕方のないところですが。来年までにどこまで底上げできるのか。ロード種目を低く見るわけではないですが、陸上のメインはやはりトラック・フィールドです。来年こそ、ここで日本人が華々しく戦う姿を多く見たいものです。

 

 【やはり女子が支えるマラソン・長距離】

 では、当ブログの本線(??)である、マラソン・長距離の総括に参ります。主力がMGCで出場しなかったから・・・という言い訳はなしでお願いしたいです。

 まずは女子から。彼女たちは健闘しました。今や彼女たちが日本のマラソン・長距離の屋台骨です。

〇3000mSC 吉村玲美 予選2組13着

〇5000m 田中希美 14位

     木村友香 予選2組13着

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〇10000m 新谷仁美 11位

     山之内みなみ 19位

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 女子長距離陣は残念ながら入賞はなりませんでした。タイム的にもメンバー的にも厳しいとは思っていましたが、いまだ停滞する日本長距離の現実を改めて突き付けられた気がします。女子10000mの新谷は入賞狙いに徹した走りをすれば入賞のチャンスはあったような気もしますが、自ら勝負して攻めての11位。上記リンクにもある、悔しさに溢れたコメントが印象的でした。この気概は絶対に東京五輪につながるはずです。マラソンに逃げることなく、トラックで世界と戦う選手たちに心からのエールを送りたいと思います。

〇マラソン 谷本観月 7位 

      中野円花 11位

      池満綾乃 途中棄権

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 MGCのため、主力を派遣しなかったということになっているマラソン。炎暑の中のレースとなりましたが、女子は何とか入賞を確保しました。完全倒壊していた近年の五輪・世界陸上から何とか立て直しの足掛かりをつかんだということでしょうか。入賞狙いと割り切って自分のペースに徹しつつ出した結果ですが、谷本の実力・実績を考えれば十分すぎるほどの結果です。これが東京五輪の選考につながらないというのはアンフェアだと思うのですが、どうでしょう。日本のマラソン界の命脈をつないだことの価値を、陸連はもっと考慮すべきだと思います。

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 蒸し暑くなれば日本選手に有利になるという楽観的な観測もあるようですが、そんな甘いものではないでしょう。今回は何とか女子マラソンで入賞しましたが、近年の夏マラソンでは日本選手はむしろ暑さに弱いイメージがありますし、そもそも基本となるトラック・ロードの走力はMGCのバカ騒ぎの影響で結局進歩しなかった気がしますし。暑さ対策は当然やるものとして、コンディションの影響も当然あるものとして、それでもなお、速く強い選手が結局は勝つ。それが近年の五輪・世界陸上のマラソンだと思います。

 

【ここから男子マラソン・長距離をdisります・・・】

 それでは、惨敗した男子マラソンにいきましょう。

〇マラソン 山岸宏貴 25位

      川内優輝 29位

      二岡康平 37位

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 皆さんご存知の既報の通りですね。MGCで主力を送り込まなかったとか、炎暑対策が外れたとかという言い訳はなしです。コンディション以前の力負けです。当ブログではこれまで川内については否定的なコメントを避けてきましたが、結果が求められるプロランナーと名乗るからには話は別です。今回の世界陸上ではシンボル的な存在でもあっただけに、この結果では何も言い訳ができないでしょう。すでにピークが過ぎているのは明らかですし、元々暑さに弱い選手です。これで五輪・世界陸上などの選手権レースへの挑戦は一区切りとなって、興行的にレースを回る活動に切り替わっていくのでしょう。男子マラソン冬の時代を中本健太郎とともに支えた大功労者であり、その功績は決して色あせないものです。今後は川内なりのペースで活動してくれればそれでいいと思います。

 

 男子は以上です。長距離トラックには代表選手を1人も送り込めないという体たらくでした。当ブログで何度か書いていることですが、川内はじめ男子マラソンは出場できているだけまだましです。男子長距離トラックは選手権に出場すらできなくなっている状況です。MGCのためマラソンを狙うという言い訳のもと、世界陸上出場を口先だけで本気で狙わなくなっている、トラックで戦う気概のある選手が皆無になっている状況です。その結果、2017世界陸上・2018アジア大会・2019世界陸上と3大会連続で代表選手なしという異常事態になってしまいました。MGCというくだらない奇策・コップの中の争いに浮かれる以前に、トラックの土台が崩れ去ってしまった現実に向き合うべきです。書いているとどんどん腹立たしくなってきますが、この危機的状況が直視されていないことが不快極まりないです。

 このままいけば、来年の東京五輪で男子長距離は地元開催なのに出場選手ゼロ、あるいは地元開催だからお情け出場という、大恥を世界にさらすことになります。これから駅伝シーズンに入りますが、そこで展開されるのは、世界水準からはるか離れた、口先だけで世界の舞台に立つ意志のない選手たち、アスリートとは呼べない選手たちによる低レベルの争いです。ここ2年の日本選手権の男子5000m・10000mの体たらくを見れば、選手たちの意識の低さがよく分かります。年末の極私的回顧でまた悪口を書き連ねることになると思いますが、恐らく今年は男子長距離の暗黒がさらに深まった1年になるのでしょう。