otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

2019極私的回顧その25 アート

 極私的回顧第25弾はアートです。昨年、一昨年と地方芸術祭を回ったゆるい感想を書き連ねてお茶を濁してきました。一応、それもあるのですが、2019年はアートおよび表現の自由を巡るあの問題に触れないわけにはいかないので、まずはそこからテキストを始めます。

 

2018極私的回顧その17 アート(地方芸術祭まとめ) - otomeguの定点観測所(再開)

2017年極私的回顧その17 アート(芸術祭まとめ) - otomeguの定点観測所(再開)

2016極私的回顧その17 アート - otomeguの定点観測所(再開)

 

【あいちトリエンナーレ表現の自由・不自由⇒というか皇室を侮辱するのをやめようよ】

あいちトリエンナーレ2019

あいちトリエンナーレ (@Aichi_Triennale) | Twitter

あいちトリエンナーレ - Wikipedia

まとめ:あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」展示中止にまつわるタイムライン|美術手帖

閉会のあいちトリエンナーレ、不自由展を本気で美術批評してみる(関口威人) - 個人 - Yahoo!ニュース

『表現の不自由展』だけじゃない。あいちトリエンナーレの展示を回って感じたこと | ハフポスト

あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」論争再燃 - 粥川準二|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

東京新聞:あいちトリエンナーレ展示中止 芸術監督の津田大介さん、講演で検証委の中間報告を疑問視:文化(TOKYO Web)

 まあ、例によってなんぼでも貼れますが、こんなもんで。

 まず、誤解のなきよう申し上げておきますが、日本は王国であり、国家元首天皇です。日本の皇室は世界で最も長い歴史を有する王朝であり、独自の歴史と文化を築いてきました。それは私も分かっているつもりです。そして、上皇天皇など皇室の人間たちの人格否定をするつもりもありません。そもそも興味もないですし。ただし、皇室の存在や歴史そのものと、皇室に対して個々人が抱く感情や意見はまた別のものであり、そこには精神の自由であり表現の自由が担保されねばなりません。

 天皇の肖像が焼かれることに反発し、ヘイト言説を叫んだ人間たちは、日本の国体=天皇中心の国家秩序という妄想にとりつかれています。少女像へのヘイトも同じような差別意識から発しており、その源にはやはり日本が天皇中心の国家であるという妄想があります。日本国憲法にも日本は国民主権の国であり、天皇は象徴であると定められているのですから、日本の中心は天皇ではなく国民です。天皇を中心とする国家ヒエラルキーを21世紀にかざす、前時代的な倒錯です。

 補助金を交付しないという公的な圧力や検閲は、天皇の威を借りて権力を振るう、これまた前時代的な妄想です。特権意識・差別意識全体主義的意識にとりつかれた国家社会主義軍国主義の亡霊が、現代日本の極右政権の背後に見え隠れします。太平洋戦争を引き起こして他国に与えた損害を顧みず、戦後の経済的繁栄の基に天皇制の存続があると考える、これまた倒錯です。天皇=国体であった戦前の政治思想を内面化する人々が稚拙なヘイト言説をまきちらし、大上段から幼稚な思考に基づいた権力を振るっています。

 戦後の日本は立憲国家として民主主義化における象徴天皇制を維持してきました。そして戦後、昭和天皇以降の天皇は象徴としての自らの役割を理解し、慎重に発言し・振る舞ってきました。その軌跡を無視して皇室のあり方を戦前へと回帰させる論は、現代の皇室を侮辱するものであると思い知ったほうがいい。女系天皇を否定する女性差別論者も然り、似非保守・極右の言説こそ、現代の皇室を棄損しています。

 WEB上の匿名性を陰に、差別的なヘイト言説をまきちらし、暴力的に自らの欲求を満たして留飲を下げる。そんな小物的な悪が「表現の不自由展」「天皇の肖像を焼いたこと」「少女像」を攻撃しました。そこにあるのは過去の日本を賛美し、自己満足に浸りたいだけの、空虚な暗闇の心性と言説です。

 

 ・・・気を取り直して、ゆるレポにいきましょう。すみませんが、2019年はあまり地方芸術祭に足を運べなかったので、1つだけです。

 

種子島宇宙芸術祭2019】

種子島宇宙芸術祭

種子島宇宙芸術祭2019 - 種子島宇宙芸術祭2019

種子島宇宙芸術祭 (@SATanegashima) | Twitter

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 出張にかこつけてうまいこと有休をあてられたので、2019年も行ってきました。昨年も種子島全域に展示が散らばっていたので、車を借りて回りました。

 では、気になった展示にいくつかコメントしておきます。

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 「探求者たち」、種子島出身のアーティストの「もけもけによるもけもけ宇宙空想物語」と題された、衣類を素材にしたファンシーな宇宙生物の展示と衣類を用いたインスタレーションです。形而上的な探求の跡をにおわせながらも、どこかすっとぼけた宇宙生物たちの表情と、インスタレーションにおける素材の柔らかな風合いが癒しを奏でていて、のどかな種子島の雰囲気にマッチした展示となっていました。

https://kurodayoshiemokemo.wixsite.com/artwork/works2

 

 

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 山岳におけるブロッケン現象から名づけられた展示「Brocken5」。鑑賞者が暗く狭い空間の中で歩き回ると、部屋に注ぐ自然光が自分の影をあたかも別の黒い生き物のように演出して、少し不気味で不思議な感じ。自然光を取り込む角度や明るさについて巧みに計算された、興味深い展示でした。

 

 アートだけでなく種子島の自然や宇宙センターの展示、そして南の島の酒と料理も楽しめるのが、この芸術祭のいいところですね。種子島独特のゆるやかな雰囲気も旅をするには快適です。2020年も行きたいところですが、うまく休みがとれるのか・・・。