otomeguの定点観測所(再開)

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『典薬寮の魔女』短評

 ライトノベル単体のレビューは久しぶりですかね。〈このすば〉完結の感想を述べるのが旬である気もしますが、ここは京アニの事件後新作ということで、『典薬寮の魔女』の感想をあげてみたいと思います。

  

 

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『典薬寮の魔女』公式サイト | KAエスマ文庫

第10回選考結果・総評 | 京都アニメーション大賞

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 面白いです。ライトノベルとしては十分に水準に達している作品だと思います。ライトノベルのファンタジーとして見るなら、和製ファンタジーとしての世界設定、世界の雰囲気を伝える描写、神秘・魔術的な力の扱い、ファンタジーを成立させるためのガジェットなど、ほぼあらゆる要素がきちんと調えられています。また、ライトノベルのミステリとして考えても、事件の構成、プロット、捜査の過程など、ミステリとして必要な要素がファンタジー世界を踏まえて一定のロジックに則って構築されており、こちらの水準も十分でしょう。

 問題は、尺というかページ数が足りず、ファンタジーの世界設定の説明にまだ不十分な要素があり、神秘・魔術にまだ詰め切れそうなところがあり、登場人物も心情描写が書き込めたであろうところがあり、ミステリとしてもう少し事件の完成度をあげることができたと思われ、物語の最後で性急にたたんでしまったためミステリ単体としては完成度が低くなってしまったこと、くらいでしょうか。ただ、ページ数の問題は物理的な制約なので、その中で作品の密度を増していくことがこの作者の課題かもしれません。

 マイナスのコメントを綴ってしまいましたが、ライトノベルとしては十分に面白く、佳作だと評価できる作品なので、お間違えなきよう。今後の期待ができ、伸びしろのありそうな作者であり作品なので、シリーズ化・映像化されるなら追いかける価値はあると思います。