『泣きたい私は猫をかぶる』感想 - otomeguの定点観測所（再開）

　6/18配信開始だったのですが、仕事が一段落してようやく見ることができました。佐藤純一監督作品で、スタジオコロリド第２作。ＷＥＢ上では好意的な感想が多いようですが、果たしてどうかな。

　なんぼでも貼れますが、とりあえずこんなもんで。

　手堅くまとまった作品なので一定の評価・セールスはいくでしょうが、尖鋭さはないですね。オーソドックスな青春映画としては及第点だがファンタジーとしては今一つ。そんな評価が妥当だと思います。

　過去、アニメや映画で猫を重要なファクターとした作品はいくつかありました。せわしなく動き回る人間とマイペースな猫、という類型的な対比。『泣き猫』もその類型の内にある作品です。大人と子供の中間である中学生が本音と建前の使い分けに苦しみ、紆余曲折を経て、素直な自分でいいんだよというシンプルな結論にいきつく、という王道ですがどこかで聞いたようなストーリー。青春映画要素だけだと多分退屈な作品になっていたと思いますが、コミカルな演出やくせのある登場人物たちが適度なスパイスになっていて（特に猫店主）、トリッキーなやり方でシナリオとプロットが今一つだったのを補っていたような印象です。大人視点で見ると、そんな葛藤はどこの家庭にもあるよとか、そんな簡単に大人を排除した結びにしてどうすんだよとか、突っ込みたくなりますが、まあ社会的・心理的背景を深く掘り下げる作品ではないのでとりあえず置いときます。

　生物好きからすると、細かい動きまで猫のかわいさを表現してあざとく演出しておきながら、毛玉とか爪とぎとか猫の生の生態が意図的にオミットされていたのにはすごーく違和感があるのですが、まあそれも置いときます。

　で、ファンタジーとして評価を下げざるを得ないのは、やはり後半の映像の躍動感のなさと演出の失敗です。『ペンギン・ハイウェイ』では終盤のペンギン大量出現からの躍動するような映像美が印象的で、科学的な寓意をうまく映像に落としており、コロリドの作品においてようやくシナリオと映像表現のバランスがとれたと評価したのですが、

『ペンギン・ハイウェイ』感想 - otomeguの定点観測所（再開）

www.youtube.com

映画『ペンギン・ハイウェイ』公式サイト

　『泣き猫』ではシナリオに気を遣いすぎたためか、終盤の猫島の映像の迫力が今一つでした。シナリオやストーリーにハラハラ感がないんだから、もっと予想外の展開やガジェットを投入して後半をひっかきまわすべきだったはずですが、コロリドの良さであるいい意味のでたらめさが失われ、エンタテイメントとしてそれなりにまとめようとしてインパクトを失った感じです。

　コロリドにはもっとダイナミックな作品をお願いしたい。次作に期待ですね。