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『影を呑んだ少女』短評

 今回のレビューは今月発売のフランシス・ハーディングの新作。面白いです。

  

影を呑んだ少女

影を呑んだ少女

 

  霊を取り込む能力を持った少女が霊に振り回されながらも、数々の知恵と機転で自らの運命をつかみ取る物語。中盤以降で加速的に進行するストーリーに強く惹き込まれます。霊的・魔術的なるものの扱いが堂に入っているのはやはりハーディングで、神秘性を帯びたハイレベルのファンタジーに仕上がっています。善悪を見定めながら自らの道を切り開いていく少女の強さとみずみずしさが快い読後感を与えてくれて、ジュヴナイル・ファンタジーとしての色も帯びています。清教徒革命あたりのイギリスが舞台になっていて背景世界の書き込みは密で、歴史小説としての見どころもあり。WAB上で「クマが・・・!」というコメントが散見されておりますが、そこは読んでのお楽しみということで。

 多彩な側面を持ったファンタジーないし幻想文学の傑作であり、翻訳された前2作に劣らぬ出来。改めてフランシス・ハーディングが実力者であることを認識できる作品です。 

カッコーの歌

カッコーの歌

 
嘘の木

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