ワールドカップ最終予選に向けて
さて、スポーツ系のテキストに戻りましょう。
いつものごとく反応がえらい遅れてしまいましたが、皆さんご存知の通り、先月、ワールドカップアジア最終予選の組み合わせ抽選会が行われて、組み合わせが次のように決まりました。
(上記リンクより引用)
この組み合わせに対して、楽だの厳しいだのといろいろ意見が出ているようです。しかし、以前から書いているとおり、アジアのトップクラスの力は接近しています。そのため、どのチームがきても厳しい戦いであることに変わりはありません。
グループBについて考えれば、現在のアジアチャンピオンであるオーストラリアは、毎回、W杯予選で厳しい戦いを繰り返しており、侮れない相手です。そして、中東勢については、アウェーの戦いでは移動や気候の面で厳しい戦いを強いられます。日本がアジアカップで苦杯をなめさせられたUAE、伝統の強国であり近年力を盛り返してきているサウジアラビア、そして前回のアジアカップでベスト4に入ったイラクと、実力的にも侮れない相手が並びます。さらに、東南アジアのサッカー強国・タイは2次予選でイラクを抑え、首位で通過してきたチームです。タイへの遠征も、東南アジア独特の気候との戦いになるでしょう。正直、今の日本代表では安全パイとなりそうなチームが1つもありません。
というくらいにとらえて、最終予選は血で血を洗う勝ち点の奪い合いになると覚悟しておいたほうが、精神安定上、いいんじゃないでしょうか。W杯のアジア枠が4.5に増えて以降、日本は世界で最も楽な予選を戦ってきました。2006・2010・2014と、ブログでは危機感を覚えると書いてきましたが、実際にはほぼ危なげなく予選を通過してきました。
しかし、日本がアジアでのポジションを落としている今回は、かなり厳しい戦いになると思います。ドーハの悲劇やジョホールバルの歓喜をリアルタイムで体験した世代としては、またあのドキドキ感を味わってみたいという思いもあります。もちろん、すんなり通過してくれた方が心臓にいいんですが。
もしグループAに入っていたら、という仮定は意味がないですが、一応考えてみましょう。その場合は韓国との入れ替えです。シリアは安全パイとして、中東最強国のイラン、2020年W杯開催のため強化を進めているカタール、と中東の強国が2つ入っています。さらに、アウェーを異様な雰囲気の中で戦うことになる中国。中央アジア遠征を強いられるウズベキスタン。結局、嫌な相手が並ぶことになるので、グループAもBも難易度としてはほとんど変わらないと思います。
日本の日程は次の通りです。
2016/9/1 VS UAE(ホーム)
2016/9/6 VS タイ(アウェー)
2016/10/6 VS イラク(ホーム)
2016/10/11 VS オーストラリア(アウェー)
2016/11/15 VS サウジアラビア(ホーム)
2017/3/23 VS UAE(アウェー)
2017/3/28 VS タイ(ホーム)
2017/6/13 VS イラク(アウェー)
2017/8/31 VS オーストラリア(ホーム)
2017/9/5 VS サウジアラビア(アウェー)
各所で言われていることですが、やはり最初の3戦ですね。オーストラリアを除く4チームについては、ホームでの勝利が必須です。タイはグループ内で一番力が落ちるので、アウェーも含めての2勝は必須。10/6までに3勝を挙げて、アウェーのオーストラリア戦に乗り込めるかどうかですが、簡単ではなさそうです。
FIFAワールドカップ予選成績 - サッカー日本代表データベース
では、1990年代の最終予選を振り返ってみましょう。
【1994アメリカW杯最終予選】
カタールのドーハでセントラル方式で行われました。日本は初戦のサウジアラビアと引き分け、2戦目のイランに敗戦し、早くも崖っぷちに追い込まれました。
しかし、その後、北朝鮮・韓国と連勝し、息を吹き返して最後のイラク戦に臨みました。韓国戦の勝利の時はテレビの前で大喜びしたのを覚えています。
そして迎えたイラク戦。勝利寸前で訪れたドーハの悲劇のため、日本のワールドカップ初出場は絶たれました。絶望から喜び、そして最後は絶望。Jリーグブームに乗って期待の大きかった代表だけに、非常に残念な結果でした。
【1998フランスW杯最終予選】
この時から最終予選がセントラル方式ではなくホーム&アウェー方式になりました。最終予選に入る前、代表監督を誰にするかでサッカー協会で一悶着ありました。
1996年のアジアカップで日本はベスト8に終わりました。加茂監督はアジアカップを重視せずにテストの場と位置付けていたそうですが、この敗戦のため協会内で彼の手腕に対する不満が噴出して、代表監督を選びなおそうという動きになりました。このとき、ヴェルディ川崎の監督だったネルシーニョが代表監督に内定していましたが、結局、協会は土壇場で加茂の続投を決定しました。プロフェッショナルとしてのプライドを傷つけられて、ネルシーニョは当時の協会会長・長沼を「腐ったミカン」と罵って帰国する事態になりました。
ネルソン・バプティスタ・ジュニオール - Wikipedia
最終予選の初戦はウズベキスタンに大勝してスタートしましたが、
2戦目のUAE戦を引き分けると、次の韓国戦はホームの国立で敗れました。このとき、守備的な選手交代について、加茂監督への不満の声が上がりました。
続くアウェーのカザフスタン戦を引き分けたため、協会は加茂監督を解任し、岡田コーチを監督代行に昇格させました。代表の不甲斐ない戦いにも不満がありましたが、何よりも協会のドタバタぶりにあきれたことを覚えています。しかし、岡ちゃん就任後も引き分けが続き、W杯出場の可能性がだんだん細っていったので、見ていてストレスがたまる一方でした。
日本が息を吹き返したのは、アウェーでの韓国戦でした。戦前の予想では日本が圧倒的不利だといわれていましたが、予想を覆して敵地で快勝し、ようやく日本代表に自信と活気が戻ったような感じでした。
そして、最終戦でカザフスタンを下し、グループBを2位で通過して、イランとの第3代表をかけたプレーオフに臨みました。プレーオフの結果は皆さんご存知の通りです。
1990年代、日本代表はアジアを突破するために苦闘を重ねました。今回は久しぶりにこの熱気が戻ってくるような気がします。もちろん、本当はアジアレベルなどすんなり突破して、W杯本番で上位を狙ってほしいんですが。でも、まずはアジアの戦いを楽しむことにしたいと思います。