ドゥーガル・ディクソンの生物群①~アフターマン&新恐竜~
ドゥーガル・ディクソンといえば、サイエンス・ライターや古生物学者として、架空の生物を創造したフィクション群で知られている人物です。
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ディクソンの架空生物を見る楽しみは、まず、祖先となった現在の生物と比較して、どこがどう進化しているかという変化の要素を見ること。そして、その架空生物が現在の生態的地位に当てはめると現生のどんな生物にあたるかを推理すること。これら二点について思い描くことです。どんなに突飛な姿であっても、架空生物たちはSF的な想像力の飛躍・アクロバットではなく、科学的・生物学的な想像力に基づいて論理的に手順を踏んで作られています。ディクソンの作品はフィクションのSFとしてではなく、科学ノンフィクションの一種として楽しむべきものでしょう。
【アフターマン】
邦訳されているディクソンの著書の中で、まず1981年に出版されたのが『アフターマン』です。人類絶滅後の世界で進化した架空生物を描いた本です。小学生の頃に何度も読み返したものです。
- 作者: ドゥーガル・ディクソン,今泉吉典
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2004/07/09
- メディア: 単行本
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中でも印象に残っているのが、南太平洋のバタヴィア列島にコウモリたちです。彼らは鳥類よりも早く新しい島々に到達してニッチを確保しました。ほとんどの生態的地位に進出し、翼を失ったものたちも多いです。本の表紙にもなっていますね。走るコウモリは子供ながらになかなか衝撃的でした。
ところが、後に実際にニュージーランドに飛ばなくなりつつあるコウモリがいると知った時は驚きました。まだ飛翔能力は残っているようですが。
「歩くコウモリ」であるツギホコウモリの祖先は、2000万年以上前からオーストラリアやニュージーランドにいたそうです。所詮、「コウモリは飛ぶ」というのは我々が勝手に抱いている固定観念かもしれません。
【マンアフターマン&グリーンワールド】
『マンアフターマン』では、人類が絶滅せずに変化していく姿が描かれています。遺伝子工学によって人類が環境に応じて自らを作り替えて、もはや人類とは思えないグロテスクな人類が続々登場してきます。
- 作者: ドゥーガルディクソン,Dougal Dixon,城田安幸
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 1993/12
- メディア: 大型本
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遺伝子工学という飛び道具を使って、『アフターマン』に比べると自由自在に生物がつくられている印象です。科学的ではなくSF的な想像力が用いられていますが、グロテスクなだけでセンス・オブ・ワンダーに欠けるものばかりです。また、世界設定を読んでも人類をここまで改造する必然性が感じられません。フィクションのSFとしては脆弱です。同じことは『グリーン・ワールド』にもいえるでしょう。
- 作者: ドゥーガル・ディクソン,金原瑞人,大谷真弓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/01/29
- メディア: 単行本
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- 作者: ドゥーガル・ディクソン,金原瑞人,大谷真弓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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【新恐竜】
白亜紀に大量絶滅が起こらなかったら恐竜がどのように進化したか、をテーマにした本です。1988年の刊行なので、現在の古生物学的観点で見るとややおかしなところもありますが、科学的想像力の駆使を楽しむという点では、『アフターマン』と同じくらい面白い本です。
新恐竜たちは現生の哺乳類・鳥類の進化をモデルにして作成されていて、かなりの進化を遂げたものたちばかりです。しかし、隔離された地域にはかつての恐竜がそのまま生き残っている場合もあります。例えば、マダガスカルにはメガロサウルスとティタノサウルスが昔そのままの姿で生き残っています。
マダガスカルのさらに沖合のセーシェル諸島にもこの2種がいますが、小さい島のため島嶼矮小化が発生し、ミニメガロサウルスは祖先の3分の1、ミニティタノサウルスは祖先の5分の1の大きさになっています。
実際に島嶼矮小化の影響を受けた恐竜の化石はヨーロッパで発掘されています。エウロパサウルスは昨年幕張メッセに来ていましたね。
マジャーロサウルス(Magyarosaurus dacus) 恐竜のデジタル図鑑
長くなってきたので、申し訳ありませんが『フューチャー・イズ・ワイルド』については次回のテキストに回したいと思います。