魔法少女アニメまとめ②(1990年代前半)※オタク向けの紹介です、多分
それでは1980年代に続いて、1990年代前半の魔法少女アニメについて見ていきたいと思います。1990年代に入ると魔法少女ものの様式が固まり、80年代に比べて魔法少女ものの本数がぐっと増えました。また、『セーラームーン』の登場が「戦闘美少女」という新たなジャンルを作るとともに、初めてスピンオフ作品が登場した時期でもありました。
『花の魔法使いマリーベル』1992
『スイートミント』に続く葦プロダクションの魔法少女ものです。幼稚園から低学年の女児を対象にしていたため、キャラの頭身が抑えられ、メルヘンチックな作りになっていました。一応、魔法少女のマリーベルが主人公ですが、マリーベルは特別な女の子ではなく、友達の一人として分け隔てなく扱われていて、ストーリーの主体はむしろマリーベルの友達であるユーリやケンにありました。大きな事件やバトルなどはなく、子供たちの周りのほのぼのとした出来事と自然の美しさがテーマでした。大きなヒットにはなりませんでしたが、童話的な世界をきちんと描いた佳作だったと思います。
『ママは小学4年生』
1993年の星雲賞受賞作にして、サンライズ初の育児アニメです。魔法少女ものというと疑問符がつくかもしれませんが、コンパクトなど小道具が出てくるので強引に入れてしまいました。私の中ではオールタイムベスト級の傑作アニメで、90年代のアニメの中では2番目に好きな作品です。
主人公・水木なつみの娘の赤ちゃん・みらいが15年後の未来からやってきて、小学4年生の女の子が未来の自分の娘を1年間育てることになるという物語です。赤ちゃんの成長、および母親役のなつみの成長が鮮やかに描かれるとともに、恋愛、友達との葛藤、学校生活、ダイエットなどの少女特有の悩みなど、小学4年生にとって等身大であるテーマ・題材が緻密に配置されていて、1年間の放送において冗長な話がほとんどありませんでした。物語の中盤まではあたたかな世界観で綴られていきますが、終盤で「小学生の出産」というスクープ記事による騒動が起こり、一気に緊張感が高まりました。今では放送できないテーマ・題材も含まれている作品ですが、もっと高く評価されてしかるべき、サンライズアニメの頂点の一つです。
〈美少女戦士セーラームーン〉シリーズ
『美少女戦士セーラームーン』1992
『美少女戦士セーラームーンR』1993
『美少女戦士セーラームーンS』1994
『美少女戦士セーラームーンSuperS』1995
『美少女戦士セーラームーンセーラースターズ』1996
『美少女戦士セーラームーンCrystal』2014~
美少女戦士セーラームーン (テレビアニメ) - Wikipedia
美少女戦士セーラームーンCrystal - Wikipedia
この作品について詳細な紹介は不要でしょう。世界的に大ヒットした日本のアニメ史を代表する作品の1つであり、後の〈プリキュア〉シリーズや(魔法少女ものではありませんが)『少女革命ウテナ』などに連なる「戦闘美少女」のスタイルを完成させた作品です。放送と同時に社会現象となる大ブームを巻き起こし、ミュージカルや実写化など多数のメディアで展開され、約四半世紀経った現在においても大きな影響力を保ち続けています。
現在放送中の『Crystal』は原作の世界観をしっかりと再現した良作に仕上がっています。今クール、デス・バスターズ編のテンションとスタイリッシュさ、原作の持つ翳をしっかり映像化した手際などは素晴らしいと思います。特に、先週のセーラープルート登場の回はシリーズ最高のクオリティでした。
『ヤダモン』1992
NHKの平日夕方の時間枠で毎日10分ずつ放送されていた児童向けアニメです。人間界にやってきた魔女・ヤダモンが巻き起こす騒動を1週間・5話完結で描く構成でした。基本的にほのぼのとした物語でしたが、とにかくヤダモンがトラブルメーカーで役に立ちませんでした。魔法の力も幾分は使われましたが、大体は周りの人たちの知恵と工夫で事件が解決されていきました。エブリデイマジックなんだからもう少し魔法を優遇してやれよとも思いましたが。しかし、シリーズ後半は、闇の魔女・キラの陰謀を阻止するための戦いが中心の、シリアスな物語となりました。前半と後半で大きく印象の違う作品でした。
『姫ちゃんのリボン』1992
一応、魔法少女アニメですが、魔法はメインではありません。主人公・野々原姫子の恋愛や成長を描いた学園ものという側面がメインで、そこに魔法少女的な様子を付与したという作品です。まずは90年代前半の《りぼん》を代表するコミック作品として位置づけるべきでしょう。アニメでは、原作にはないオリジナルの展開や小道具を出して玩具展開を行ったり、(ミュージカルも含めて)草彅剛はじめジャニーズのメンバーを起用するなど、ファン層の拡大を狙っていろいろな仕掛けが行われました。しかし、それらが成立したのはあくまで良質な原作があったからです。
2009年からリメイク版が描かれました。
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『ミラクル☆ガールズ』1993
良質な原作をアニメがぶち壊した作品です。1992年当時、《なかよし》ではこの作品が『セーラームーン』と並ぶ2トップで、アニメはかなりの鳴り物入りで始まりました。ところが、アニメの作画が原作の質感を破壊し、さらに中学時代をぶっとばしていきなり高校時代からアニメを始めたため、物語が説明不十分で進行することになり、原作ファンにとってもアニメから観始めたファンにとっても不幸な作品となってしまいました。後半でテコ入れが行われ、女児向けのシンプルな絵柄・演出・ストーリーに変わりましたが、時すでに遅し。失敗作の印象を拭い去れないまま、放送が終了しました。
『赤ずきんチャチャ』1994
スラップスティックなギャグである原作を、アニメがもっと前衛的でドタバタでカオスなものにしました。そして、そのドタバタの路線が成功して、原作・アニメともにハイテンションで疾走した作品でした。大地丙太郎や佐藤竜雄たちがオリジナル演出をガンガン詰め込んで実験的な要素を連発したため、メタでメタメタなアニメとなりました(全て褒め言葉です)。アニメ開始時にはほとんど注目されていなかったのに、いつの間にか1994年を代表する作品へとのし上がっていました。香取慎吾が声をあてたリーヤのヘタウマが絶妙にはまっていたところも良かったです。
現在、《Cookie》で新作が連載されています。
『愛と勇気のピッグガール とんでぶーりん』1994
普通、魔法少女は変身すると、かわいくバージョンアップしてパワーアップするものです。しかし、この作品では、主人公・国分果林が変身するとかわいいですがブタになり、苦悩しながら地球を守るというギャグ作品でした。しかも、果林の想い人・クラスメートの水野光一がブタの姿の「ぶーりん」を好きになるという不幸もあり、主人公は難儀な立場に置かれていました。4コマ的なドタバタとしてはまずまず面白い作品でした。
『魔法騎士レイアース』1994
CLAMPの《なかよし》連載作品第1弾です。アニメ化もゲーム化もされ、主題歌のCDがミリオンヒットになるなど、大きな反響を巻き起こした作品でした。ご存知の方も多いですよね。魔法少女ものではありますが、ファンタジーRPGにロボットを接続した、やや変則気味のハイ・ファンタジーでした。壮大な世界で壮大なストーリーを散々展開した後、実はエメロードとザガートの極私的事情(痴話)で世界が危機に陥っていたことが発覚・・・当時、この真相(オチ)に面食らった読者・視聴者も多かったかもしれません。でも、女の子の切ない思いが世界で一番大事だというのは、少女マンガとしてはごく正しいあり方だったと思います。
『愛天使伝説ウェディングピーチ 』1995
スタッフもキャラもストーリーも『セーラームーン』そっくりだということで、二番煎じと揶揄されることもある作品ですが、あくまで派生作品だということにしておきましょう。音楽は結構よかったし、面白い回も多かったので、よってたかって叩くような作品ではありません。後にアニメ『らき☆すた』3話でネタにされていました。
『ナースエンジェルりりかSOS』1995
秋元康原作で、作画に『ときめきトゥナイト』の池野恋を使った、ナース服のコスチュームの戦闘美少女もの・・・と、これだけ書くとイタい臭いしかしませんが、大地丙太郎がテレビシリーズ初監督作品として演出に気合いを入れたため、アニメはかなり面白い作品になりました。シリアスな物語、細かな心情描写、派手ですが緻密なアクションの演出など、ほぼあらゆる要素が高いクオリティで揃っていたと思います。特に、いじめという社会問題へのメッセージを込めた最終回は秀逸でした。もっと評価されるべき傑作の1つです。
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『怪盗セイント・テール』1995
アニメではスポンサーの関係で変身ヒロインものという演出がなされたため、魔法少女ものにカテゴライズされます。しかし、原作はあくまで『キャッツ♥アイ』『ルパン三世』などへのリスペクトをベースとした、少女怪盗のコミックでした。自分の欲望のためではなく、人助けのために怪盗を行う善意の怪盗でした。明るくアップテンポな原作のノリはアニメにも踏襲されていて、肩肘を張らずに観ることのできる作品になっていました。
『魔法少女プリティサミー』1995,1996
〈天地無用!〉の砂沙美を魔法少女として主人公に据えた、スピンオフ作品です。OVAはまだ鑑賞に堪えたんですが、テレビシリーズの作画崩壊がひどくて視聴するのにかなりの忍耐力を要したためか、評価がかなり低い、というかもはやほとんど語られることのない作品になっているような気がします。でも、19話以降最終回までのテンションと脚本のクオリティ、そして19・20話の作画はかなりのものだったと思うんですけどねえ。
作品の評価こそ微妙ですが、スピンオフという企画そのもの、スターシステムの採用、オタク向けのメタな演出・脚本の乱れ打ち、臆面なく繰り出される内輪ネタ、エネルギー弾を放って戦う魔法少女などなど、この作品が作った様式が、後のスピンオフ魔法少女たち、『小麦ちゃん』『なのは』『プリヤ』へとつながりました。先駆者としての功績は大きなものだと思います。
再評価の必要があるかどうかは微妙ですが、魔法少女ものの歴史においては外せない作品です。
【参考リンク】