魔法少女アニメまとめ③(1990年代後半)※オタク向けの紹介です、多分
では、続いて1990年代後半の魔法少女もののアニメをまとめていきましょう。90年代前半に比べると魔法少女アニメの数は少ないですが、『カードキャプターさくら』『おジャ魔女どれみ』という2つのビッグタイトルがあった時期です。この2作は21世紀のアニメに大きな影響を与え、現在でも根強い人気があります。
『魔法使いTai!』1996,1997,1999
OVAが1996・1997年、その続編であるテレビ版が1999年に放送されました。良作であり、特にOVAはもっと評価されていい、密度の濃い傑作でした。異星人の侵略が起こった世界なのに、のんびりとした平和な雰囲気で、OVAでは魔法の修行、恋愛、ギャグ、劇中劇といった様々な要素を6話という尺の中にバランスよく取り込んでいました。最終回では、あくまでのどかにですが、異星人との戦いという多少のカタルシスを有したストーリーもありました。
それに対して、テレビ版は尺が長くなったせいか、OVAよりもやや冗長でした。その分、各登場人物の心情や人物像、人間関係などをいろいろ掘り下げて演出していました。そのことをどう評価するかによって、『魔法使いTai!』全体の評価も変わってくると思います。
『夢のクレヨン王国』1997
福永令三の児童文学を原作としたアニメで、《なかよし》でコミック化され、メディアミックス展開もされました。アニメは原作とはいろいろ設定を変えたうえ、原作に比べるとかなりパロディ色が濃くなっていました。また、魔法のアイテムもアニメオリジナルでいろいろ増やしていたため、魔法少女ものにカテゴライズされます。ナンセンス作品でもありますが、きちんと児童向けメルヘンの枠をはみ出さずに作られていました。原作もリーダビリティの高い児童文学なので、原作とアニメを比べながら作品を味わうのが一番いいでしょう。
『キューティーハニーF(フラッシュ)』1997
http://www.toei-anim.co.jp/shop/dvd_recutie/cutie_f.html
『キューティーハニー』のアニメ化としては3回目にあたる作品です。〈セーラームーン〉シリーズの後番組であるため、〈セーラームーン〉の視聴者層である女の子を意識して、思いっきり少女マンガになっていました。お色気要素はあまりなく、恋愛要素がぐっと強まっていました。ハニーと青児が結婚して娘を授かって幸せな家庭を築くラストを許せるかどうかで、この作品への評価は変わるでしょう。
『ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー』1998
ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー - Wikipedia
小学館の絵本雑誌《おひさま》に連載されていた絵本が原作ですが、アニメは原作の前日譚のはずなのに原作とは全く別物でした。コミックはさらに原作からかけ離れたものになっていました。それでも、メルヘンの圏域をしっかり守りながら、コメディタッチのドタバタ、主人公・ぽぷりの成長、にこにこ銀座の人間模様、あくまでのどかな魔法の描写などが丁寧に描かれた、良質のショートアニメでした。
『スーパードール★リカちゃん』1998
一応、あの「リカちゃん人形」のリカちゃんのスピンオフ作品ですが、もはやスピンオフでもスターシステムでもない、全くの別物でした。ところが、結構な人気を博して、2クール予定だったのが4クールに延長されました。お約束の塊ながら、ストーリーもキャラクターもかなり丁寧に作られていて、安定感があったのは間違いないです。玩具もかなり売れたので、商業的にも成功しました。ただし、繰り返しますが、これは「リカちゃん」ではありません。あくまで別作品です。
『カードキャプターさくら』1998
『CCさくら』については、今さら余計な紹介など不要でしょう。1990年代を代表するアニメ作品で現在でも高い人気を誇る、CLAMPの代表作の1つであり、個人的にはCLAMPの最高傑作です。今年になって新作の連載が始まり、大きな話題を得ていますね。女児向けにもおおきなおともだち向けにもアニメファンでない層向けにも、絶大な人気を博している作品です。
桜・知世・小狼などかわいいキャラクターの魅力、アブノーマルな要素も入っているのにスタイリッシュにスマートに描かれる恋愛、悪人のいない優しい世界、ケルベロスのユーモラスなキャラ、アニメでは1話ごとに変わる桜の衣装へのこだわり、美麗に描き込まれたコマの美しさ、クロウカードという美しさすら感じる魔術の設定、CLAMPの同人誌経験を生かした自己言及的な作品の作り、繊細に描き込まれたアクションシーンなどなど、この作品の美点・魅力をあげていったらきりがなくなります。
新作では、中学1年生になった桜の、変わっていない魅力と新しい魅力を両方楽しむことができます。活発なコンテンツとして、まだまだ『CCさくら』の世界は楽しみに満ちています。今後も期待大ですね。
〈おジャ魔女どれみ〉シリーズ
『おジャ魔女どれみ』1999
『おジャ魔女どれみ♯』2000
『も〜っと! おジャ魔女どれみ』2001
『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』2002
『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』2004
〈おジャ魔女どれみ16シリーズ〉2011~2015
おジャ魔女どれみ19 ドラマCD付き限定版(講談社ラノベ文庫) (講談社キャラクターズA)
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おジャ魔女どれみ#トップページ(まほう堂夜をクリックしてね)
1990年代後半から2000年代初頭にかけて現在の〈プリキュア〉枠で放送され、安定した人気を博した魔法少女ものの名作中の名作です。テレビ放送終了後もOVAとして、『も~っと!』の小5次を舞台にした『ナ・イ・ショ』が制作されました。さらに2011年からは、講談社ラノベ文庫から〈おジャ魔女どれみ16〉シリーズとして、高校生になってからのどれみたちの様子がテレビシリーズの正統な続編として描かれました。そして、書影を上げた昨年12月の『19』をもって完結しました。最後はどれみが小学校の教師として母校に赴任するシーンで終わりました。
この作品の魅力は、OP・EDをはじめ美しい楽曲、丁寧に作られた変身ではなくお着替えバンク、ユーモラスな魔法描写、ハイテンションなギャグ・コメディ描写、個性たっぷりのクラスメートたち、時に疾走するメタ演出・脚本の数々・・・などなどいろいろありました。しかし、やはりなんといっても一番は、どれみたち少女の心身および魔法の成長を、光と影、清と濁などの正負両面を併せてしっかり描き切ったことでしょう。
例えば、細田守演出でシリーズ最高傑作ともいわれる『ドッカ〜ン!』40回。
波のまにまに☆のアニメ・特撮のゆる~いコラム おジャ魔女どれみドッカ~ン!#40「どれみと魔女をやめた魔女」
細田守の最高傑作・・・「どれみと魔女をやめた魔女」 | 人力でGO
他の登場人物の視点が一切入らず、どれみのモノローグで進んでいく回でした。リンク先に様々な分析が載っていますが、ドレミに突き付けられた選択はシンプルですが究極のものでした。「魔女になるか否か?」。魔女になれば数千年の寿命が約束され、魔法が使い放題になり、将来魔女界の女王になるハナちゃんと一緒にいられます。しかし、その利点の一方で、人間としての人生を捨てることになり、寿命のためどんどん老いる人間たちをずっと見送り続けることになります。このあまりにも重大な選択について決定的な役割を果たしたのが、この40話であり、この1話だけ登場する「魔女をやめた魔女」佐倉未来(マジョアヴェニエール)でした。12歳の少女たちに突き付けれた究極の光と影。こういった相克するテーマを真正面から描いたことも、『どれみ』が名作たる所以の一つだと思います。
『神風怪盗ジャンヌ』1999年
もし原作のヒットとアニメのヒットが連動していれば、『セーラームーン』の後継としてもっと大きなムーブメントを起こしていたかもしれない作品でした。主人公・日下部まろんはジャンヌ・ダルクの生まれ変わりで美少女怪盗。『セーラームーン』の「美少女戦士」に『セイント・テール』の「少女怪盗」の要素を加え、少女マンガとしてスタイリッシュに仕上がった原作は、累計500万部のヒットとなりました。
ところが、いざアニメ化すると、原作ではうまく機能していたまろんの心の傷や葛藤の描写について、視聴者にうまく伝わらなかったようです。少女マンガ的な心理描写の奥行きを再現しようとして、アニメでは裏目に出た感じになり、まろんが好感の持てないキャラクターと受け取られてしまいました。原作はもっとシビアでシリアスだったんですが。結局、視聴率が稼げずに途中でアニメは打ち切られました。ヒットした原作だっただけに、アニメをもう少し工夫して作っていればと惜しまれる作品でした。
しかし、ドイツやフランスなどでは少女漫画特有のシビアな描写や展開が受けて、アニメもヒットになったそうなので、受容する層によって評価の変わってくる作品だったともいえるでしょう。
『コレクター・ユイ』1999年
電脳世界の魔法少女ものです。インターネット普及の初期にネット世界の設定を用いて描かれた作品でした。現在の視点から見ると、もはや手垢のついた、というよりはかなりレトロな設定になってしまいますが、当時はこれが最新のテクノロジーでした。全体に高いクオリティで安定した作品でしたが、古びて見えてしまうのは残念ながら仕方がないでしょう。
【参考リンク】