吉良知彦追悼・・・
まさか、この名前で追悼記事を書くことになるとは・・・。先月、森岡賢の追悼記事をあげましたが、2カ月続けて大好きなアーティストの訃報に接するとは思いませんでした。
ファンタジーファンの私にとって、吉良さんは世界観の根幹をなすピースの1つでした。非常に大きな喪失感があります。謹んでご冥福をお祈りします。
【ZABADAKを振り返ってみる】
重要なお知らせ | Information | ZABADAK OFFICIAL SITE
上野洋子さん時代のZABADAK、1996年発売のベスト盤、これのデザインをやってる。ほとんど知られてない事実。まぁ、ジャケ・デザイン仕事は裏方だから… pic.twitter.com/X8SMhNVwrP
— ヤギヤスオ (@yagiyasuo) 2016年7月6日
ZABADAK、吉良知彦くん、享年56歳…。最初に仕事で関わったのは1993年のこれ。上野洋子さんが抜ける最後の野音ライヴ。勿論観てるしこれのデザインをやってる。こうしてひさしぶりに見るといいカヴァーだな。 pic.twitter.com/nI6EeC42J5
— ヤギヤスオ (@yagiyasuo) 2016年7月6日
アコースティック・ロック・ファンとしての私にとって、最も好きな邦楽のアーティストがZABADAKでした。プログレ、ビートルズなどZABADAKのサウンドの源流は様々ありますが、やはり一番大きいのはアイリッシュ・ポップの影響であり、ケルトやブリテンの伝統を背後に持つ神話的・民話的世界とのシンクロが感じられたことでした。ZABADAKのファンタジー性こそ、私が強く惹きつけられた、彼らのあくなき魅力だったように思います。
【上野洋子がアイリッシュポップに応答している動画 5.40以降】
【ZABADAKの名前の元ネタ】
ZABADAKについては、上野洋子さんが在籍した時期が黄金期だったという人が多いように思います。もちろん私も吉良・上野体制の時期は大好きです。しかし、彼らの魅力はその時期のみにとどまるものではありません。ZABADAKはもっと襞の深い、様々な魅力を持ったユニットでした。大まかな回顧になりますが、各時期のZABADAKについて振り返ってみたいと思います。
〇3人だったデビュー当時
結成当時のZABADAKは吉良知彦、上野洋子に加え、ドラムスの松田克志を加えた3人のユニットでした。デビュー当時はシンセサイザーを使った打ち込みを多用し、ボーカルもわざとノンビブラートにしていて、透明で冷たい世界観の音楽を奏でていました。
〇吉良・上野体制~のれん分けまで
ZABADAKといえば、いまだにこの時期のイメージが最も強いですね。松田の脱退で吉良・上野の2人のユニットになり、アイリッシュ・ポップを彷彿とさせるアコースティック・ロックの色が極めて強かった時期です。ケルトやブリテンの神話・民話の世界が現出してきたような美しい世界観が、音楽ファンだけでなくアニメファンやTRPGファンなどを含む多くの層の共感を呼び、人気を博しました。そして、現在の幻想系の音楽やゲーム・アニメの楽曲、後進のアーティストたちに絶大な影響を与えました。この時期のZABADAKは日本の幻想系・民族系の音楽、およびアコースティック・ロックの頂点の一つです。日比谷野音にのれん分けを観に行ったとき、本当に悲しくて、泣きじゃくりながら声援を送っていたのを覚えています。
〇吉良ソロ期前期~実験期
上野洋子が抜け、吉良のワンマンユニットになりました。もともとアイリッシュ・ポップは上野の趣向でしたから、彼女の脱退とともに音楽の方向性が変わり、ギターサウンドを前面に押し出した吉良色が強まりました。また、この時期は、吉良が様々な方向性を模索し、実験的に楽曲を作っていたように思います。サウンドが目まぐるしく移り変わる一方で、劇団・新幹線とのコラボ、宮沢賢治の世界への挑戦など、意欲的な取り組みも見られました。
〇吉良ソロ期後期~安定と円熟
2000年の『IKON』が転機だったと思います。初期ZABAへの回帰などという評もありましたが、民話的な世界だけではなくスケールの大きなファンタジー世界を描くようになり、安定と円熟に達した時期だというべきでしょう。初期のような幻想的なもの、ギターサウンドを前面に押し出したもの、プログレ色の強いもの、ジャズ的なものなどなど、様々なサウンドが複雑な襞をなしつつもしっかりと織り上げられ、吉良は豊かで安定した音世界を築き上げました。「原理主義者」と揶揄される人たちはまず『IKON』を聴いてください。
〇吉良・小峰体制
2011年、小峰公子が正式にメンバーとして加わり、ZABADAKが2人体制に戻りました。現代音楽や古楽など、さらに貪欲に領域を拡げつつも、吉良ギターと小峰ボーカルをシンプルに聴かせる楽曲が増えました。また、音世界もファンタジー色の強いものから、日常に根差した穏やかなものに移行していきました。これからのZABADAKの道行きも楽しみにしていたので、今回の訃報は本当に残念です。
【ZABADAKマイベスト5】
では、ZABADAKの楽曲のマイベスト5を挙げてみたいと思います。独断と偏見に基づいた偏った選曲ですが、あしからずご了承ください。
1、光の人
3、降りそそぐ百万粒の雨さえも
4、ラ・フェット
5、風の巨人
【まとめ】
1980年代から親しみ、自分の世界観を作ってくれたアーティストの訃報に接し、ただひたすら悲しいです。30年近く吉良知彦の音楽に接することができて、私の人生は豊かなものになりました。本当にありがとうございました。改めて故人のご冥福をお祈りします。