otomeguの定点観測所(再開)

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リオ五輪~女子マラソン~

 先ほど、リオ五輪の女子マラソンが終わりました。結果については皆さんご存知かと思いますが、個人的な感想をざっとまとめてみたいと思います。

 【レース総括】

thepage.jp

 

live.sportsnavi.yahoo.co.jp

Marathon Result | The XXXI Olympic Games | iaaf.org

www.flotrack.org

 見ごたえのあるレースでしたね。昨年の世界陸上を彷彿とさせる、スムゴング、キルワ、ディババの激しいたたき合い。ケニア、エチオピア、バーレーンという、現在の女子マラソンをリードする3か国の、国の威信をかけた壮絶な戦いでした。昨年はトラック勝負で遅れをとったスムゴングが、スプリント勝負になる前に早めに仕掛けてキルワとディババを振り切りました。スムゴングは昨年の世界陸上の雪辱を果たすとともに、ケニアに女子マラソンで初めての金メダルをもたらしました。

 恐らく30度近い気温と強い日差しに見舞われたタフなコンディションのレースでしたが、世界のトップ選手たちは厳しいコンディションにも対応するタフさを持っているということですね。コンディションがよければ2時間20・21分台に相当する、高いクオリティのレースだったと思います。マラソン観戦の楽しさを十分に味わうことができました。これでCMの量がもっと少なければいうことなしだったんですが。スポーツ中継はやっぱりNHKかCSがいいです。

 

【日本勢総括】

 うーん、福士はもう少し踏ん張ってくれるものと思っていたんですが、予想以上の惨敗でした。せめて入賞ラインには届いてほしかったし、その力はあると思っていたんですが。結局、福士は選考会の大阪がピークで、そこからさらに状態を上げることはできなかった印象でした。先頭集団から遅れ始めた時にCMが流れていたので何が起こったのかはわかりませんが、勝負どころのはるか手前で脱落したのですから、要するに地力が足りなかったと総括するしかないでしょう。暑さにやられて完全にへばってしまったように見えました。調整がうまくいかなかったという報道もありましたが、やはり万全の状態ではなかったようです。レース前半でずっと集団の後方に位置し、先頭集団に追いつくために追い上げるなどしていましたが、それでエネルギーを使ってしまったとすれば、走る位置取りを間違えたという戦術ミスということになります。

 下の有森裕子の評にもある通り、給水所でペースの上げ下げがあり、スパートが仕掛けられるのは分かっていたはず。福士は海外の都市マラソンの経験もあるので、対応できると思っていたんですが。過大評価だったようですね。

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 レース後の福士のコメントについては賛否が分かれると思いますが、彼女はずっとああいうキャラクターです。勝った時にはうまくはまりますが、負けた時にはあの明るさと気丈さがイタさを感じさせることもあります。これまでのオリンピックでもそうでした。コメントを聞く限り、これで競技生活に一区切りつけるのかもしれませんね。続報を待ちたいと思います。

 田中ももう少し頑張ってくれると思っていたんですが、こちらも福士同様に後方待機を続け、先頭集団に追いつくためにエネルギーを使い、そのうちにリズムを崩してズルズル後退していきました。2時間30分すら切れなかったのですから、こちらもタフなコンディションに対応する力がなかったということです。伊藤は完全に調整に失敗しましたね。1年間の準備期間を与えられてあの結果では、何も文句は言えないでしょう。

 世界のトップで戦うためにはやはり2時間20分前後の走力が必須です。日本勢がこのレベルに再び参画するためには、まずサブ20のランナーをもう一度育てなければいけません。改めて日本の厳しい現在地を突きつけられるレースとなりました。東京五輪に向けても厳しい道のりが待っているでしょう。選手選考のやり方という低次元ですったもんだしている場合ではないはずです。ナショナルチームを結成しての強化についても、結果が出なかったんですから、やり方を根本的に再考する必要があるでしょう。日本国内のぬるい環境でいくら競おうと、世界的な競技力には何の関係もないわけですから。実業団がバラバラに点在して各々のやり方をとる、統一感のなさ。駅伝を軸としたコップの中の争いから脱しようとしない限り、日本のマラソン界はガラパゴスどころかたこつぼの中にはまったままなんでしょうね。