2016極私的回顧その16 思想・評論
続いての回顧は思想・評論系のまとめにいきます。そういえば、このブログで現代思想系の記事ってめちゃくちゃ久しぶりですね。今回は、いつものベスト5ではなく、2016年に私が気になったトピックをダイジェスト的にまとめていきます。
【思弁的実在論の2016年】
当ブログで以前から書いている思弁的実在論関連のテキストです。
上記リンクで私が書きたいことは書いているので、ここでの詳細は割愛させていただきます。
2016年、極私的には思弁的実在論での最大のトピックは、ようやく文芸評論サイドから思弁的実在論関連のテキストが著されたことです。
Flying to Wake Island 岡和田晃公式サイト
- 作者: ニール・ゲイマン,キム・ニューマン,ジョン・ディクスン・カー,朝松健
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2016/05/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (4件) を見る
批評理論とジャンル小説と文化評論を架橋する岡和田晃の仕事は、非常に重要なものです。
日本における思弁的実在論関連のテキストの最大の欠点は、哲学とジャンル小説の架橋を誰もやろうとしないことです。哲学サイドの人間たちには、SF・ファンタジー・怪奇幻想などのジャンル小説の読書量が決定的に不足しています。というか、彼らはこれらのジャンル小説を読んでいません。一例をあげると、某雑誌で、馬鹿者がラヴクラフトの「名状しがたいもの」を「名前のないもの」と記していました。怪奇幻想のイロハも知らずにラヴクラフトに言及しているのですから、その無神経さに呆れてしまいます。
一方、SF・ファンタジー・ミステリ・怪奇幻想など文芸評論サイドの人間たちには、哲学・現代思想・文学理論の文献の読書量が決定的に不足しています。アカデミズム内の評者たちも、思弁的実在論など新しい存在論までサーチしきれていない人が多い気がしますし。大学の紀要や学会発表などはチェックしきれていないので、私のサーチは不十分なのですが。
哲学と文芸・文化評論を文芸評論の側から架橋したという点において、岡和田晃の仕事は大きな意義・意味を有しています。彼がSF評論のフロントランナーであることに間違いはありません。2017年もいろいろ噛みついて楽しませてくれることを期待しております。
【念のため】
- 作者: カンタンメイヤスー,Quentin Meillassoux,千葉雅也,大橋完太郎,星野太
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2016/01/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (9件) を見る
神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)
- 作者: マルクス・ガブリエル,スラヴォイ・ジジェク,大河内泰樹,斎藤幸平,飯泉佑介,池松辰男,岡崎佑香,岡崎龍
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
- 発売日: 2015/11/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: ヒューバート・ドレイファス,チャールズ・テイラー,村田純一,村田純一(監訳),染谷昌義,植村玄輝,宮原克典
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2016/06/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
【ビフ・ハワード・タネン】
さて、話題と語調を変えます。ビフ・ハワード・タネンが合衆国大統領に就任し、就任冒頭からかっ飛ばしてくれているのは、皆さんご承知の通りです。
映画的以上に映画的・マンガ的以上でマンガ的な現実状況には、揶揄とおちょくりで対抗するしかありません。まあ、いいじゃないですか。これだカリカチュアの似合う国の指導者ってそうそういませんよ。
日本もアメリカも政治にろくな人材がいないいんですねえ。
結局、昨年のアメリカ大統領選は、賞味期限の過ぎたババアと、
実現不可能なことばかりほざく似非社会主義者と、
進化論を否定する狂信的クリスチャンと、ろくでなしばかりでした。
<米大統領選>トランプよりヤバい?トランプを追いかけるテッド・クルーズとは? | 室橋祐貴
有権者にろくな選択肢が提示されなかったわけですから。超消極的選択の果てにビフが大統領になってしまっても何の不思議もありません。賞味期限の過ぎた枯れ木や空想主義者や狂信的な扇動者よりは、まだビフの方がナンボかましということです。
日本のリベラルから見たらトランプでよかったじゃないですか。TPPはぶっ潰してくれたし、在日米軍の撤退の交渉に応じてくれるかもしれないし。あんたたちが要求してきたことを実現してくれるかもしれないんだぞ。もっと喜びなさい。
みんな派手なビジュアルに躍らされていますが、ビフ君の言動や行動は別にオリジナルなものではありません。他者の自由を抑制しようとする差別的で高圧的な思想は、アメリカ伝統の政治思想の産物です。オバマケアをぶっ壊し、移民を排斥し、中国やイスラム国やイスラム教徒に強い態度で臨み、台湾と連携し、国内的には減税や規制緩和を進め、地球温暖化を否定し、国防を強化し、貿易において自由貿易の理念を踏みつけてアメリカ第一を掲げ、表面上は個人や企業の自由を認めつつも企業に圧力をかけ・・・などというトランプの政策は、結局は共和党保守派の伝統的な政策です。
オバマは高い理念を掲げて登場しましたが、共和党の激しい抵抗をさばききれず、外交では弱腰でロシアや中国をのさばらせ、国内では格差の拡大を招き、バカ・ブッシュの戦争を継続せざるを得ず、核廃絶に向けての動きは全く進められず・・・と、見たところは鳴かず飛ばずでした。全くスキャンダルがなく、一定程度経済を立て直したのですから、成果がないわけではないはずですが。ともかくも、もうリベラル・エリートには任せられんということで、有権者の心が民主党から離れてヒラリーを沈没させ、代わってビフ・ハワード・タネンというカリカチュアを浮上させました。大胆な政策転換と、決断力と実行力のある人材の配置をトランプ自身はせっせと行っていますが、さっそくいろいろ炎上しているみたいですね。まあ、所詮は海の向こうのことですから、我々日本人はとりあえず対岸の火事をのんきに見物していればいいと思います。まあ、人材の配置さえできず、早々にレームダック化してくれれば、これもまた非常に面白いネタになりますが。
アメリカの歴史では、トランプのような人物・運動は定期的に出現しています。そして、運動のエネルギーが政治運動・社会運動となって二大政党に作用し、アメリカの政治の流れを変えていきます。過去、何度かそのような事例はありました。もしトランプ現象が共和党内に定着し、新たな路線を生み出すならば、歴史的椿事となるでしょう。
ノー・ナッシング運動は共和党に作用して禁酒法の起源となりましたし、
人民党は民主党に作用して規制強化を呼び起こしましたし、
People's Party (United States) - Wikipedia
1930年代の労働運動は民主党のリベラル化を推進し、
http://www.aehaj.org/journal2/nomura.pdf
1970年代のキリスト教保守派による運動は共和党の保守化・狂信化を促進しました。
米国を動かすキリスト教原理主義 - 渡辺靖(慶応義塾大学環境情報学部教授)
http://synodos.jp/newbook/19148
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/Vol.20-3/20_3_07%20Iiyama.pdf
トランプ=ビフ現象が共和党内に定着するかどうかはまだ分かりません。政治的な停滞や格差に対する不満、白人がマイノリティー化することに対する恐怖、イスラム教徒への反感などの負の感情を大きく取り込んで、トランプの扇動的主張はティーパーティーやオルタナ右翼にも作用して、共和党内にトランプ支持基盤を作り上げました。トランプの周囲の保守強硬派が共和党内で、穏健派を含む諸派といかに連合できるか。それがトランプの命運を握っているはずですが、当の本人はそんな政治力学的な配慮などお構いなしにかっ飛ばしてくれています。
結局、トランプはあくまでトランプであり、ビフはあくまでビフです。共和党のエスタブリッシュメントとの共闘を探るなら、トランプ自身の主張をトーンダウンさせるしかありません。そうすると現在の支持層からは総スカンを食います。過激な主張を維持できなければ、現在の支持層はあっという間に離れていくでしょう。しかし、過激なままでは人員配置もままなりません。党内の連合すら取れず、早くも円滑な統治に対する暗雲が立ち込め始めています。
個人的には早々のレームダック化を見てみたいと思います。
【あべちゃんとれんほうたん】
さらにトーンを変えましょう。
知っている人は知っているかもしれませんが、このブログは超消極的安倍政権支持です。他にいないんだから仕方がないです。あべちゃんはよくやっています。実は何もやっていないという点でおいてよくやっています。内ゲバを起こして自滅する馬鹿よりは何もしない馬鹿の方がはるかにましだ、といういい証左です。
海外反応! I LOVE JAPAN : 鳩山由紀夫氏のボケっぷりに世界も唖然! 海外の反応。
鳩山由紀夫とは (ルーピーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
菅 直人 (Naoto Kan) (@NaotoKan) | Twitter
次期首相にれんほうたん? いやいや、無理でしょ。別に女性蔑視とかれんほうたんを貶めるとかいうことではないです。単純なビジュアルとパンチ力の問題です。今のところ、あべちゃんとれんほうたんの格の違いというか力の差は厳然としています。そもそも、れんほうたんは党の代表をやる器ではありません。恐らくは例えばスポークスマンあたりが妥当な位置づけです。もちろん首相を目指すようなたまでもありません。国籍問題という些末なことはどうでもいいです。大事なことは仕事ができるかできないか。彼女が積み上げてきた実績を鑑みて、あべちゃんに負けてしまうことはもちろん、民進党内で見ても党代表にあたるものではないということです。繰り返しですが、これは彼女を貶めるという意味では全くありません。そもそも、超男社会である政治の世界で、いろいろいわれのない批判を受けながらも、あの若さであそこまで昇りつめたこと自体がすごいことです。つまり、彼女を代表にせざるを得ないほど民進党の人材が払底しており、彼らに組織としての力がないということです。民進党の男どもが情けないのです。
蓮舫代表という事態に象徴されるように、現在の野党の、特に民進党の戦闘力があまりにも低すぎます。
戦闘力…たったの5か…ゴミめ… (ごみめ)とは【ピクシブ百科事典】
いまだに政権時代の失敗を総括できず、烏合の衆であり、朝令暮改体質で、言動が根拠薄弱で、自分たちの行動に責任が持てません。(実現性ゼロでも)政権奪取を謳う共産党の方がよほど頑張っています。野党第一党なんですから、(ドン・キホーテでもいいから)蓮舫首相への首相交代・政権奪取を看板に掲げ、シャドウキャビネットを作り、政策をぶっ立てて、自民党に挑まなければならないはずです。しかし、民進党からは蓮舫首相を目指そうという機運が全く伝わってきません。自分たちで選んだ代表を支えないという民進党の体質も、いまだに変わっていないようです。
2017年、アメリカやヨーロッパではポピュリストどもによる祭りが予定されています。
今さら国家主義・全体主義の祭りなんて暢気なものです。すでに先んじて、日本では国家主義・全体主義政党が、あべちゃんというファシストをリーダーとした安定政権を形成しています。世界のトレンドに先んじているとは、さすがニッポン。世界に誇るべき美しい国ですね。
【ファシストの先達】
【選民思想の先達??】
【本来の理想的な指導者】
【美しいクンニ・ニッポン】
第20回 2007/01/11 | 江頭2:50のピーピーピーするぞ!各回概略
美しいクンニ日本!女性の社会進出は慰安婦制度の復活で。
— GO!ヒロミ44' (@gohiromi44) 2015年7月16日
美しいクンニ日本。少子化は近親相姦で解決します。
美しいクンニ日本。沖縄の基地はドローン飛行場に。
美しいクンニ日本。貧しい年寄りは山に捨てましょう。
つづく。 pic.twitter.com/WXibHEgeWw