続きましては、岡和田晃さんとアトリエサードの皆さんの関連の合宿企画です。久しぶりに姿を拝見した永瀬唯さんもいらっしゃって、大いに盛り上がりました。
【関連リンク】
岡和田晃 Akira OKAWADA (@orionaveugle) | Twitter
Flying to Wake Island 岡和田晃公式サイト
岩田恵@文フリ東京キ-01〜02 (@mahamayuri) | Twitter
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【ナイトランドの部屋】
まずは一昨年に復活した《ナイトランド・クォータリー》および〈ナイトランド叢書〉から。植草さんがアトリエサードに加入して編集が始まり、読者視点から見れば《ナイトランド》はここまで順調に号を重ね、叢書も安定したペースで刊行されてきました。しかし、それでも岩田さんは厳しいことをおっしゃるんですね。いつも感じることですが、リトルプレスとしての岩田さんの矜持は本当に素晴らしいものです。
パネルの内容は、《ナイトランド・クォータリー》復活の経緯および叢書第2期・第3期の紹介でした。《ナイトランド》復活については当ブログで以前まとめていますので、そちらをご参照ください。
2016SFセミナーレポートその5 合宿「ナイトランドセッション出張版 ナイトランド叢書のいままでとこれから」「MELANO MUSEUMの謎」 - otomeguの定点観測所(再開)
ナイトランド叢書第2期のラインナップは次の通りです。
- 作者: クラーク・アシュトン・スミス,安田均,広田耕三,山田修
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最新刊の『ジョージおじさん』はまだ読んでいないのでコメントは控えますが、日本で流布しているダーレスの誤った印象を払拭する内容になっているそうです。
第2期の継続として以下が予定されています。
『紫の雲』M・P・シール
『ジョン・サーストンの事件簿』M・W・ウェルマン
そして、第3期のラインナップは次の通りです。
『魔術師の帝国3 アヴェロワーニュ篇』クラーク・アシュトン・スミス
『古き魔術』アルジャーノン・ブラックウッド
『見えるもの見えざるもの』E・F・ベンスン
『フラックスマン・ロウの心霊研究』E&H・ヘロン
『魔女を焼き殺せ』A・メリット
『白蛇の巣』ブラム・ストーカー
『メデューサ』E・H・ヴィシャック
『セイレーンの歌/ルクンド』エドワード・ルーカス・ホワイト
いやあ、怪奇幻想の徒としてはよだれが止まりません。豪華なラインナップです。刊行ペースが安定しているので、今後もしっかり楽しませてくれることでしょう。岩田さんが引き締めている限りは大丈夫であると信じます。
そして、アトリエサードは昨年からSFの出版にも進出し、ケイト・ウィルヘルム復活という功績を成し遂げましたが、
翼のジェニー〜ウィルヘルム初期傑作選 (TH Literature Series)
- 作者: ケイト・ウィルヘルム,伊東麻紀,尾之上浩司,佐藤正明,増田まもる,安田均
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2016/10/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今年の『SFが読みたい!』の出版予告で、幻のヒューゴー賞受賞作の登場に驚喜した方は多かったはずです。
Stand on Zanzibar (S.F. Masterworks)
- 作者: John Brunner
- 出版社/メーカー: Gollancz
- 発売日: 1999
- メディア: ペーパーバック
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そう、ジョン・ブラナー『ザンジバーに立つ』。ヒューゴー賞受賞作の中で邦訳がなされず、SFファンの間で常に話題になっていた作品です。まさかこれの翻訳に巡り合える日がこようとは。ブラナーの英語は造語が多くて訳しにくいうえに、この作品は英語で700ページを超えるボリュームです。よく企画して実行してくれたと思います。いや、まだ出版されていませんけどね。ヒューゴー賞受賞作の中で見てしまうとクオリティの高い作品ではありませんが、刊行されること自体が快挙であり、事件です。
SFセミナー合宿のオープニングで大森望さんが岩田さんに「本当に出るの?」と突っ込んでいましたが、「出すといったら出す」そうです。でも、年内は難しいようです。植草さんによると、日本語にすると2000ページ以上になるかもしれないとか。三分冊かもしれないですね。翻訳作業も編集作業も大変のようです。まあ、焦らずに待つのが吉でしょう。
【岡和田晃 新刊を語る】
世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷〜SF・幻想文学・ゲーム論集 (TH SERIES ADVANCED)
- 作者: 岡和田晃
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2017/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ミッション:インプポッシブル(トンネルズ&トロールズ・アンソロジー)
- 作者: ケン・セント・アンドレ,安田均,エリザベス・ダンフォース,マイケル・A・スタックポール,安田均/グループSNE
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2017/05/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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SFセミナーではこの2点の書籍の先行販売も行われていたので、購入してきました。共にまだ未読なので感想は控えます。論集のPRのために合宿にパネルが立てられ、岡和田さんが論集について語るという企画でした。しかし、横にいた永瀬唯さんが勢い余ってコメントを連発して、場を占拠することしばしば。まさに「永瀬無双」という感じでした。しばらく闘病などのためお見かけしていませんでしたが、お元気そうな様子で何よりです。
かなり領域が広くボリュームのある論集なので、なかなか焦点が絞りにくいのですが、岡和田・永瀬間で飛び交い、私もほんの少し絡んだキーワードは「ポストヒューマン」「文学における政治性」「思弁的実在論」「伊藤計劃以後」「トランプ現象というマンガ的な世界」「トランプはWWEのレスラーである」「マンガ的な世界を表現する言説とは」「文学・文藝の判断停止状態」「文学研究の衰退」「荒巻義雄」「思弁小説(スペキュレイティブ・フィクション)」「円城塔」「奇妙な味」「国会図書館の利用法」「精神分析の崩壊」「人間の意識なるものはない」「フーコーは怪物である」「後期ハイデガーとテクノロジー」・・・とこんなところですかね。岡和田さんの守備領域の多彩さには毎度ながら舌を巻くばかりです。
ここでごちゃごちゃ書くよりも本に目を通していただいた方が早いでしょう。パネルでTRPGに関するコメントが出なかったのが残念でしたが、とにかく読んでみろということでしょう。
論集に収録されている論考に関する当ブログの記事を貼っておきます。
思弁的実在論関連サルベージ~《ナイトランド・クォータリー》vol.04 「ウィリアム・ホープ・ホジスンと思弁的実在論/岡和田晃」への反応 - otomeguの定点観測所(再開)
《ナイトランド・クォータリー》vol.5 「アリス&クロード・アスキューと思弁的実在論/岡和田晃」への反応 - otomeguの定点観測所(再開)
2016極私的回顧その16 思想・評論 - otomeguの定点観測所(再開)
結局、皆さんが撤収してからも午前3時過ぎくらいまで永瀬さんとハイデガーやらアレントやらについて話し込み、知的で楽しい時間を過ごすことができました。どうもありがとうございました。