『煌』短評
このブログで極私的回顧以外で時代小説のコメントをやるのはかなり珍しいですが、毎年一定量は読んでいるんですよね。たまにはこうして吐き出すことも必要かと。
レビューが遅れましたが、今年の7月に徳間書店から出た短編集で、花火をモチーフに各短編が緩やかにつながった連作集です。江戸の市井の人々のあたたかさや切なさ・たくましさなどの生き様を江戸市中の情景に乗せて語る人情物が志川節子の持ち味ですが、登場人物の息吹や心情などが切々と伝わってくる志川節はこの作品でも健在です。6つの短編に捨て作品がなく、完成度は高め。短編ゆえに心情や人情の掘り下げが浅めですが、適度にまとめて読み手をほっこりさせたり泣かせたりするのが人情物の肝であり乙なところですから、清酒でもやりながら肩の力を抜いて読めばいいということでしょう。
【江戸のお酒ではありませんが、この作品に合いそうなお酒】
でも、そろそろ次は重厚なテーマの長編に取り組んでほしい気もするんですが、いかがでしょうか。