2017年極私的回顧《スポーツ》① マラソン・長距離(男子)
それでは、遅ればせですが、本年度の極私的回顧を始めたいと思います。まずはスポーツ系のテキストをさっさと片付けてしまいましょう。
【2017福岡国際マラソン】
ただひとり「世界レベル」の大迫傑。 独自のメソッドで五輪メダルを狙う|陸上|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva
大迫傑が作った日本の新スタンダード。マラソン界に刻まれた2時間7分19秒。 - 陸上 - Number Web - ナンバー
モーエンが福岡国際を欧州記録で制する 大迫はベスト更新で「練習に間違いない」 - スポーツナビ
先日の福岡国際マラソンは既報の通り、ノルウェーのモーエンが18年ぶりの欧州新記録となる2時間5分48秒で優勝。日本勢では大迫が2時間7分19秒で3位に入りました。テレビ中継は優勝選手のインタビューをすっ飛ばして大迫のインタビューを行うという失礼極まりない振舞いを行い、そして瀬古をはじめ陸連がはしゃぎまくるという醜態。各紙とも大迫の走りを讃えて世界レベルだなんだと風呂敷を広げる記事が居並ぶ始末。マスコミも陸連もどこまで能天気なのでしょうか。
久しぶりに国内レースで日本選手がまともなマラソンレースをしたことに舞い上がるのは結構ですが、まだ7分台のタイムを出しただけの選手に対して過大な評価や期待をするのはやめましょう。いずれ大迫が日本記録を破る機会もくるでしょうが、東京五輪をにらむと、やはり4・5分台を出さなければケニア・エチオピア勢とは勝負になりません。今回の大迫の記録は2017年の世界ランキングでは40位の記録に過ぎません。それに、まだトラックのスピードも含めて大迫はまだまだ発展途上の選手です。今回のレースも一つの過程に過ぎず、収穫と課題を冷静に分析して次につなげていくべきです。まあ、本人がクールにインタビューに応えていたので特に心配はしていませんが。
大迫のことよりも、相変わらず深刻なのは、国内の実業団勢が30キロ手前ですべて脱落し、勝負の土俵にすら乗れない体たらくであったことです。1キロ3分という日本人に合わせたスローペースだったのに、終盤までついていけたのは大迫1人。挙句、大迫を除く国内招待選手の日本人が全て川内優輝にまくられる始末。一般参加の選手にサブテンが出て陸連が喜んでいましたが、いまだサブテンごときで喜ぶ日本マラソンのレベルの低さを嘆くとともに、改めて日本選手のひ弱さがあらわになった大会でもありました。みんなでコップの中の争いにかまけて傷をなめ合っている限り、日本マラソン・長距離の夜明けはまだまだ遠いです。強化の役に立たないMGCなどやめてしまいましょう。代表選考は東京マラソンの一発勝負でいいと思います。
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC) - Marathon Grand Championship
【史上最低の2017年】
2017年は日本の男子長距離・マラソンの歴史上最低の年でした。福岡で大迫が7分台を出したことで最後に何とか格好がつきましたが、大迫はアメリカのオレゴン・プロジェクト所属の選手です。国内所属の選手に限れば8分台2人・9分台8人と、相変わらず低調な水準でした。
https://www.iaaf.org/records/toplists/road-running/marathon/outdoor/men/senior/2017
今年、最も深刻だったのは、マラソンよりもトラックの長距離の惨状です。5000m・10000mにおいて世界陸上に1人も代表を送れませんでした。大迫さえ基準記録を突破できず、ロンドンの地を踏めませんでした。この危機的状況がもっとクローズアップされてしかるべきですが、陸上関係者からはこの惨状を嘆く声も反省する声もほとんど聞こえてきません。
大迫、日本人トップの2位も世界陸上の参加標準届かず/陸上 - スポーツ - SANSPO.COM(サンスポ)
現状、日本の長距離界が取り組むべきは、東京五輪でマラソンのメダルを目指すという絵空事ではありません。トラックのスピードを地道に強化して、国内の実業団・大学から大迫に伍する選手を1人でも2人でも出すことです。そして、記録水準においては5000mを12分台、10000mを27分台前半から26分台へと引き上げ、トラックの層を厚くすることです。地道なスピード向上の果てにマラソンの強化が見えてくるはずです。いくら若い選手がマラソンに取り組む機会を増やしたところで、基礎能力の低い選手が8~10分台あたりをうろついているだけでは、何の強化にもなりません。大迫クラスの選手が最低あと5・6人は出てきて、競い合ってほしいところです。実業団の選手たちにはアスリートそしてプロスポーツ選手としてのプライドを持って競技に取り組んでほしいものですが、駅伝というコップの中の祭りにかまけているうちは無理ですね。
【金栗翁・・・】
間もなく年が明け、ニューイヤー駅伝と箱根駅伝が行われます。選手の競技力と無関係なお祭りにスポットライトが当たるばか騒ぎ。駅伝を目指して1年間練習に明け暮れるという、目的と手段をはき違えた競技生活。プロとしての自覚を持たない選手と指導者たち。いつからこんなにひ弱になってしまったんでしょう。本来、駅伝とはマラソンの練習の一環です。箱根駅伝は強いマラソン選手を輩出するために始まった大会です。駅伝自体が目的となってしまった現在の状況をご覧になったら、金栗翁はさぞ怒り狂うことでしょう。
箱根駅伝100回記念大会から全国化検討、その背景 - 陸上 : 日刊スポーツ
でも、やっぱりそれでも夢想せずにはいられません。2018年こそは国内の男子選手たちが奮起して大迫に迫り・追い抜き、5000mと10000mで日本記録破り合戦が行われ、マラソンでは日本人が5・6分台の記録に手をかけるはずです。来年こそ、強くて速い日本男子選手の姿が観られることを切に切に祈ります。