2017年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫)
続いて極私的回顧第7弾、歴史小説・時代小説に参ります。まずは文庫からで、書籍は次の項目に回しています。いつものことですが、テキスト作成のため各種ランキングおよびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。また、他ジャンルに比べると読書量が少なく、軽量級のラインナップになっていることをご容赦ください。
【マイベスト5】
1、いつかの花: 日本橋牡丹堂 菓子ばなし
主人公の少女のひたむきな姿に強く感情移入したので、これを1位にしてみました。物語は軽めですが、お菓子を題材にした時代小説ですし、お茶を片手に楽しむにはこのくらいで調度いいと思います。作者がフードライターでもあるので、調理などの描写は堂に入ったものです。肩の力を抜いてほっこりと軽い気持ちで読みましょう。
2、鯖猫(さばねこ)長屋ふしぎ草紙
鯖猫が一番偉いという奇妙な楽屋を舞台にした人情噺です。一応謎解きの要素もありますが、あくまで味付けなのでミステリ風味はあまり期待しないこと。威張っているくせにドジで愛嬌のある鯖猫を巡る人情のやりとりを気楽に楽しむのが乙でしょう。
3、出世侍
真面目にコツコツ働く主人公が誠実さを買われて出世していくという、表題通りの物語です。上司からの妨害、組織の不条理、思わぬミス、上司の娘との結婚話など、現代のサラリーマンにも通じる悲哀が見られ、同じ勤め人として強く感情移入できます。現代の実社会に照らしてみるとご都合主義的なところもありますが、主人公が成功してくれないと読み手として元気が出ないので、これくらいの塩梅でいいと思います。
4、ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんや
多彩なジャンルを書いている作者であるためか、時代小説にしては疾走気味のプロットですが、料理を巡る人情の機微と美味しそうな料理の描写は堂に入ったものです。「飯テロ」なるレビューもありましたが、まさに日本酒と合わせたくなるような味わいのある作品です。でも、ここは敢えて和食に合うワインでいってみましょう。
5、空也十番勝負 青春篇
今さら佐伯泰英をベスト5に入れるのは憚られるところもありますが、どこかで入れておかないと触れる機会もないので、ご容赦ください。やはり安定した面白さとマンネリズム(悪い意味でなく)には、酒の肴のように安心した味わいがあります。
【2017年とりあえず総括】
時代小説の文庫は仕事の息抜きやイライラ解消のために読む場合が多いので、主に肩の力を抜いて読めるものを買っています。2017年は特にその傾向が強かったらしく、振り返ってみたら人情噺ばかりになってしまいました。2018年はもう少し手を拡げたいところですが、仕事のストレス次第ですね。
文庫の時代小説は安定したジャンルだと思っていたのですが、どうやらそうでもないようです。
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そういえば、確かにレーベルの数が減っているし、『この時代小説がすごい!』は出なくなったし、書店での時代物文庫のスペースが狭くなった気がするし。出版の厳しい流れには抗えないようです。世知辛いですねえ。読者としてはあまりそういうマイナスは気にせず、酒の肴としてだらだら楽しんでいきたいものです。