2017年極私的回顧その16の3 思想・評論(思弁的実在論SR・オブジェクト指向存在論OOO・新しい唯物論NM・新しい実在論NR・プロメテウス主義/加速主義・ゼノフェミニズム)
やたら長いタイトルになりましたが、それでは思想・評論の本丸に参りましょう。一連の思弁的実在論の流れにおいて、2017年は、SR・OOO・NM・NR・加速主義・ゼノフェミニズムの受容および日本での展開について際立った動きが見られた、極めて知的刺激の強い・楽しい1年でした。キーワードを端的にまとめつつ、2017年(あるいはそれ以前)を振り返ってみたいと思います。なお、いつものお断りですが、記事にリンクを貼った複数の書籍の内容を参考にしつつ、テキストを書いております。特に千葉雅也さんのテキストに多くの内容を依拠しております。
『複数性のエコロジー』レビュー?? - otomeguの定点観測所(再開)
2017SFセミナーレポート⑥ 《ナイトランド》&岡和田晃新刊~アトリエサード関連 - otomeguの定点観測所(再開)
《ナイトランド・クォータリー》vol.5 「アリス&クロード・アスキューと思弁的実在論/岡和田晃」への反応 - otomeguの定点観測所(再開)
思弁的実在論関連サルベージ~《ナイトランド・クォータリー》vol.04 「ウィリアム・ホープ・ホジスンと思弁的実在論/岡和田晃」への反応 - otomeguの定点観測所(再開)
思弁的実在論関連サルベージ~ハーマン批判テキスト~ - otomeguの定点観測所(再開)
レトロゲームやってみた①~serial experiments lain~ - otomeguの定点観測所(再開)
【《現代思想》2018年1月号と《ゲンロン》7】
『現代思想』2018年1月号と『ゲンロン7』のあいだをつなぐ - Togetter
東浩紀@ゲンロンカフェ5周年(@hazuma)/2018年01月07日 - Twilog
発売されてからしばらく時間がたってしまいましたが、昨年末はなかなか知的に楽しい時間を送ることができました。養老孟司や柄谷公人と中沢新一あたりは相変わらずですね。しかし、極私的にはやはり現在進行形で不定形な思想の動きに触れていたいところです。様々な異論が出てくるかもしれませんが、やはり日本における現代思想の主流(??)はSRに続く一連の系列ということにしたいところです。そして、カント以降の相関主義を離脱して超越論的に人間を脱-中心化(というよりは恐らく脱自化)しようとするSRの試みを歓迎したいと思います。SF者としては文芸評論における新たな地平・挑戦をもっと見たいと思っています。しかし、2017年も文芸・文学サイドからのSR関連に対する応答はあまり活発ではなかったように思えます。何度も書いていることですが、相変わらず文芸・文学サイドのSRおよび関連理論に対する反応は鈍い気がします。一方、哲学サイドの文藝・文学作品に対するアンテナの狭さ・鈍さも変わっていない気がします。複数ジャンルを架橋できる方も少数ながらいらっしゃるんですが。こんな批判的なことを書きつつ、私のサーチが甘かったら申し訳ありません。
【こちらへのコメントはSFの項で・・・】
世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷〜SF・幻想文学・ゲーム論集 (TH SERIES ADVANCED)
- 作者: 岡和田晃
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2017/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【追記】 分かりました、読んでみます。
思弁的実在論の動向。イアン・グラントって訳すの難しそうですが、出るのか。加速主義については、私、『高橋和巳、世界とたたかった文学』にも書きました。 https://t.co/cWsUpElhZn
— 岡和田晃_近刊『ベア・カルトの地下墓地』 (@orionaveugle) 2018年2月15日
otomeguさんは『タエ、恩寵の道行』を読んでいないっぽい。読まないとアカンですよ!
— 岡和田晃_近刊『ベア・カルトの地下墓地』 (@orionaveugle) 2018年2月15日
2017年極私的回顧その11 詩 - otomeguの定点観測所(再開) https://t.co/5f85e4Sumv
【千葉と國分と篠原と清水】
動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 (河出文庫)
- 作者: 千葉雅也
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2017/09/06
- メディア: 文庫
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中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
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良くも悪くも前面に出てくるので各所で批判を浴びることもあるようですが、やはり日本のSR関連ではまずこの2人です。その他、SR関連では篠原と清水の名前を挙げておけば、若手の主要著作者を俯瞰することになるでしょう。
一応これも貼っておきます。
哲学のホラー――思弁的実在論とその周辺 - 仲山ひふみの日記
一部SR関連以外の著作もありますが、2017年前後の彼らの主要著作としてはこんなところでしょうか。かなり乱暴ですがそれぞれの傾向をまとめてしまうと、東浩紀のドゥルーズ読解・表層の否定神学・クラインの壺・誤配空間というそれぞれの極を受容しつつ、
ポストモダンが近代的主体の超克を試みながら実際には近代的主体をより強固にした(新自由主義やリバタリアニズムにもつながる)ハイパーな主体を構築しつつも、相対主義と個のあり方について明快な解を示しきれなかったという問題意識のもとに近代的主体について問い直そうとしている國分、主体のあり方を動物や物自体や社会の構造などにまで拡張して準主体的なオルタナティブな主体のあり方を目指す千葉、OOOに依拠しつつモートンのエコロジーをもとに環境と人間の関係性に解を見出そうとする篠原、思索の結果として西田幾多郎とハイデガーという現象学における時間観念の基盤へと立ち返った清水、と並べておけばマッピングになるでしょうか。
【追記】誤読でしたら申し訳ございません・・・。
うーむ。まぁ僕は今のところハイデガーはあまり意識していないんだけどね。
— 清水高志 (@omnivalence) 2018年2月15日
恐らく4人に共通しているのは、主体や社会や権力や環境の観念を変容し超克した後、政治の観念をも変容させ、その先にポストモダンがなしえなかった達成、オルタナティブに伴う現実の政治の変容を目指すという、アクティブな視座および企図でしょう。
ポストモダンは哲学・思想的に高い到達を得ながら、現実の政治状況においては新自由主義や反知性主義の跋扈を許し、政治的に無関心な哲学的・文化的趣味人を生産し(私もその一人ですね・・・)、結果としてリベラルの衰退を招きました(??)。政治的にアクティブな観念を再構築し、近代主義の対抗軸を再定義し、権力と欲望と政治に揺さぶりをかける。SR関連の哲学・思想が発展した先に、現実の転倒を夢想し、夢想を現実化する。彼らの思索が本当に情況を変える駆動因となるなら、これほど痛快なことはありません。まだまだ先のことになるでしょうが、彼らの到達点をしっかりと見据えていかねばなりません。
続いて、2017年およびその前後のSR関連の翻訳状況や周辺状況などについて、いくつか抜粋気味にまとめてみたいと思います。
【SRおよびOOO⇒ハーマンの翻訳状況】
SRの代表者をメイヤスーとブラシエとグラント、OOOの代表者をハーマンとするなら(ここではハーマンを3人から分けてカテゴライズします)、最も翻訳が進んでいるのは間違いなくメイヤスーでしょう。彼の著作や論文はだいたい日本語で読める状況になっています。
- 作者: カンタンメイヤスー,Quentin Meillassoux,千葉雅也,大橋完太郎,星野太
- 出版社/メーカー: 人文書院
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ブラシエやグラントについては全く翻訳されていないという不遇な状況ですが、前述の
《現代思想》2018年1月号・千葉雅也「ラディカルな有限性」によると『ニヒル・アンバウンド』の翻訳が準備されていて、
Nihil Unbound: Enlightenment and Extinction
- 作者: R. Brassier
- 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
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グラントの翻訳を進める動きもあるそうなので、
Philosophies of Nature after Schelling (Transversals: New Directions in Philosophy)
- 作者: Iain Hamilton Grant
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とりあえず気長に待つといたしましょう。
2017年のSR関連の翻訳の最大のトピックは、やはりハーマンの翻訳がようやく出たことでしょう。遅きに失した感がありますし、ハーマンにはもっと訳すべきテキストがいろいろあります。これを機にどんどん翻訳が進んでほしいところですが、なかなか難しいかなあ。
SRにおいては実在しない実在すなわち我々と非相関的な数学的実在は我々の実存とは無関係に存在しますが、OOOにおいては実在しない実在=非在の絶対性がさらに強まっており、我々と非相関的な実在しない実在は物自体だけでなく状況や観念なども含めてそれ自体の実在的位相において他者や他存在とは全く無関係にただそれだけにおいてあります。端的に言うなら、SRとOOOの違いは無関係な関係性の強度の差異です。使い古された例示ですが、『serial experiments lain』における玲音=lain=れいんの神的描写やラヴクラフトにおける超越者=邪神の描写は、ライプニッツよりはむしろスピノザへと回帰する汎神論的なセグメントであり、実在しない実在でありながらただそれだけにおいて存在するというOOOの、すなわちハーマンのオブジェクトなるものをフィクションとして顕した格好の範例であるといえるでしょう。
- 作者: グレアムハーマン,Graham Harman,岡嶋隆佑,山下智弘,鈴木優花,石井雅巳
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http://dar.aucegypt.edu/bitstream/handle/10526/5311/Global%20Finitude.pdf?sequence=1
- 作者: H.P.ラヴクラフト,Howard Phillips Lovecraft,大瀧啓裕
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【NM⇒諸学関係性の領野】
SRやOOOがポストモダン的な枠組みから脱却しているのに対して、NMにおいてはポストモダン的な関係性の視座が存続し、人間が属している関係性を人間から脱自的視座に移ることでより広範なシステムとしてとらえようという意図が見られます。現象学的な他者がまだ有効であり、むしろ結節として活発に機能している印象です。そして、関係性のネットワークによって周辺の諸学を取り込みつつ、人間から人種やジェンダー、動物、非有機的なものから果ては社会や自然のシステムそのものにまで考察を加えて圏域を拡大しつつ、様々なトピックを扱う(/ぶち込む)スタイルが主流になっている印象があります。一読者としては、(破綻しない限りにおいて)参照項をどかどか盛り込んでくれるのは歓迎です。また、他分野の研究者がNM的な手法を利用=援用する機会も増えているように思えます。SRやOOOがソーシャルな関係性を逸脱しているのに対し、NMはソーシャルであることで圏域を拡大しています。 極私的にはここにダナ・ハラウェイの思考の変遷を絡めることができるのが、ハラウェイが私にとって最重要の思想家であるだけに、嬉しいですね(ハラウェイをNMに組み込むことに対しては異論もあると思いますが)。
法が作られているとき―近代行政裁判の人類学的考察 (人類学の転回)
- 作者: ブルーノラトゥール,Bruno Latour,堀口真司
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現代思想 2017年12月号 人新世 ―地質年代が示す人類と地球の未来―
- 作者: ブルーノ・ラトゥール,ダナ・ハラウェイ,ティモシー・モートン,中村桂子,北野圭介,篠原雅武,大村敬一,奥野克巳,水口憲哉
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Manifestly Haraway (Posthumanities)
- 作者: Donna J. Haraway
- 出版社/メーカー: Univ Of Minnesota Press
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パネル12:人新世/アントロポセンと人文科学|第12回大会|Conventions|表象文化論学会
パネル12 人新世/アントロポセンと人文科学 | 第12回大会報告 | Vol.31 | REPRE
http://www.sssjp.org/2015122883520126088653016529365298.html
ただし、SF者および思想の徒としての私は、ハラウェイの「サイボーグ宣言」⇒サイバーパンク&ポストヒューマン/「伴侶種宣言」⇒人類学/「クトゥルフ世」⇒人新世・・・汎神論的な関係性=世界と歴史に伴う主体の再考というNMにも接続された彼女の志向を理解できますし大いに賛同したいのですが、科学コミュニケーション/科学ウォッチャー的な視点で考えると、完新世の次に人新世という地質年代を加えることにはすごーく違和感があるので、NM的なハラウェイ解釈についてはとりあえずまだ判断保留とさせていただきます。
【NR⇒マルクス・ガブリエル】
Fields of Sense: A New Realist Ontology (Speculative Realism)
- 作者: Markus Gabriel
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https://www.toyo.ac.jp/uploaded/attachment/18676.pdf
http://www.zenkokuyuiken.jp/contents/taikai/39taikai/resume/39bunkakai3_resume_nakashima
なぜ世界は存在しないのか 書評|マルクス・ガブリエル(講談社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
講談社学術図書第一出版部さんによる『なぜ世界は存在しないのか』マルクス・ガブリエルさんから日本の読者へメッセージ つぶやき まとめ(180217) - Togetter
2017年は人文書復権の年だといわれましたが、年明け最初の哲学書の売れ筋がまさかこの人になるとは。NRについてはSR・OOO・NMに続く新たな軸という評価があり、また、ポストモダン的な相関主義・相対主義と自然科学、あるいはポストモダンとSR・OOOの対立を調停する新たな流派、という評価がなされています。ある対象を複数の視座でとらえたとき、それぞれの主体の視座がとらえた像はそれぞれ別の実在として実在しており、全ての実在は認識論的な意味の場と照応しています。そして、実在を単一の物自体や単独者の認識に局所化することなく、複数の意味の場の存在が絡み合って世界が構築されている・・・というのが、千葉雅也のテキストに依拠しつつマルクス・ガブリエルを読んだうえでの私のざっくりとした見解です。千葉はガブリエルの思索の彼方に強い政治性を伴った民主的な哲学を見出していました。
私のガブリエル理解はまだ不十分な点が多いですが、現代思想的なスペックを剥いでいくと実はガブリエルのやっていることはものすごくシンプルかつオールドスクールなものであり、ガブリエルの企図は、ハイデガーやマルクスを介してカントに立ち返ってドイツ観念論の堅固な理性を復活させることであるように思えます。カント以来の観念論の超克を目指すSR・OOOやポストモダンの関係性の要素を継続しているNMとは異なり、従来の唯物論の問い直しを行っているのではないかという気がします。ガブリエルについてはまたまとまり次第(意見が変わるかもしれませんが)テキスト化できればと思います。
- 作者: カント,Immanuel Kant,篠田英雄
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- 作者: カント,Immanuel Kant,篠田英雄
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- 作者: カント,波多野精一,宮本和吉,篠田英雄
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千葉雅也のつぶやく通り、サイエンスにアンテナを張っている視座から見るといろいろツッコミどころもありますし、(思想の徒としては理解しますけれど)ホーキングの扱いが明らかに不当ですし。
マルクス・ガブリエルの『なぜ世界は存在しないのか』(における「新しい実在論」)に対しては、今後、自然科学を重視する立場から批判がなされるんじゃないかと思っています。そういう論争がぜひ起きてほしい。ガブリエルのある種の多元論がどこまでロバストなのかどうか。
— 千葉雅也『メイキング・オブ・勉強の哲学』発売中 (@masayachiba) 2018年1月23日
【SRの政治的マニフェスト⇒加速主義およびゼノフェミニズム】
《現代思想》2018年1月号で最も意義深かったのは、SRおよびOOOの政治的応用であり行動に向けたマニフェストである、加速主義とゼノフェミニズムが翻訳・紹介されたことでしょう。両者とも極めて扇情的な文章であり、哲学・思想的にどこまで妥当性を有するのか、現実の状況にどれほどコミットできるのか、怪しげな箇所も散見されます。これらのマニフェストが肯定的な変容をもたらすのか、あるいは新自由主義に加担してさらなる抑圧をもたらすのか、あるいは単なるニヒリズムに過ぎないのか。その行く末は分かりませんが、まずはその刺激とカッティングエッジをしっかり味わいたいと思います。
Inventing the Future (revised and updated edition): Postcapitalism and a World Without Work
- 作者: Nick SRNICEK,Alex Williams
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#ACCELERATE MANIFESTO for an Accelerationist Politics
Brometheanism | Alexander R. Galloway
「加速派政治宣言」では、無力な抵抗運動へとなり下がった左派やリベラルの運動体が無意味なフォーク・ポリティクスであるとして一刀両断され、可能な限り加速的な技術の発達と人間労働の縮小をむしろ積極的に引き受けていく戦闘的な左派の思想が呈示されています。ポストヒューマンはおろかアンチヒューマンへと突っ込んでいる危険度ですが、決してナンセンスではないところが興味深いですね。
Laboria Cuboniks | Xenofeminis
Laboria Cuboniks (@Xenofeminism) | Twitter
こちらも刺激的ですね。かつて、サイボーグ・フェミニズムに初めて触れた時の興奮が甦ってくるような感じでした。テクノロジーと加速的な未来を肯定した上でのジェンダー抑圧の変革。生ぬるい似非フェミニズムの排除。現在のテクノロジーによる疎外を反転させる甘美な論理構成。まだマニフェストの端緒が発されたばかりで、理論化・体系化はまだまだこれからですが、エキセントリックであるがゆえに魅力的です。
これはOOOからのフェミニズムですね。まだ入手したばかりできちんと読んでいないので、きちんと理解してからテキスト化することができればと思います。
2017年は日本語圏のSR関連が知的に豊饒に駆動した年でした。今年は更なる刺激的な展開が行われるとともに、政治状況を突き上げる鋭利な哲学・思想の運動体が顕現することを期待します。