『元禄六花撰』短評
この本は元禄の文化論なのか歴史小説なのか迷うところですが、私は歴史小説として評してみたいと思います。
【書評】市井の経済描いた実験小説 『元禄六花撰』野口武彦著(1/2ページ) - 産経ニュース
元禄六花撰 野口武彦著 現代との共通性 縦横無尽に :日本経済新聞
毎度ながら遅ればせのレビューですが、今年読んだ歴史小説の中では今のところ一番面白かった作品です。野口武彦の作品はフィクションとノンフィクションの境界線上のものが多いですが、この作品はフィクション側に寄った「ネオフィクション」だそうです。社会科学的な論考の部分もありますが、やはり歴史小説として読むのが一番しっくりきます。
上記にリンクを貼った書評や帯の文句とも重なりますが、所詮、江戸時代も現代も人間のやっていることは変わりません。二流の作家が井原西鶴を痛罵して信用を失い、物書きとして大成することなく人生を終えたことに、現代のネット言説を重ねてみたり。トランプ賭博で歴史が動いてしまう様をいい加減だなと思いつつも、現在のアベノミクスも日銀の振舞いもばくちみたいなものだと思ったり。あさましい金の世である元禄が歌舞伎を通じて描かれますが、お金に執着する現代人も大して変わらないと思ったり。『曾根崎心中』の現代性に改めて膝を打ったり。うーむ、いつも自分がやっているしょうもない日常とあまり変わらないなあ・・・。
こういうときはいろいろ自省をしつつ、冷酒で頭を休めるのがいいのでしょう。