『コズミックフロント☆NEXT』よりペルム紀と三畳紀の大量絶滅
『コズミックフロント☆NEXT』で、大量絶滅をテーマにして、ビッグファイブのうち2つをカバーした回が放送されました。ビッグファイブのうち約6500万年前・白亜紀末の恐竜の絶滅についてはよく取り上げられていますが、他の4つについて扱ったコンテンツはあまりないので、貴重な回だったと思います。そして、この番組でも屈指の知的興奮に満ちた良回でした。
今回のテキストは番組のネタバレを大量に含み、ところどころふざけた箇所もありますので、ご注意かつご容赦ください。
NHKオンデマンド | コズミック フロント☆NEXT 地球 謎の大絶滅史 「史上最大の大量絶滅 真犯人を追え!」
ツイッターの力の入り方がおかしいですね。
本日29日(木)のCF☆Nはお休み、次週4月5日(木)には生物大絶滅の謎に再び肉迫。と言っても今回のテーマは、巨大隕石衝突での恐竜絶滅の2億年近く前の大惨事。その絶滅の規模は地球史上で最悪、全生物種の90%以上が滅んだと言われています。宇宙からの脅威はあったのか?興味大膨張!
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年3月29日
次回のCF☆Nの舞台は2億5千万年余り前、現在とは海陸の配置が全く違った地球です。ところでプレートテクトニクスという言葉、ご承知ですよね? 皆様も気づかれたことがあると思いますが、現在の地球の大陸を隣同士近づけるとぴったり一致する、という不思議の原因がプレートテクトニクス。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年3月30日
時間を逆回転して大陸を隔てている海洋をどんどん狭めて2億5千万年余、ついに5大陸は1つの巨大な超大陸となります。時代の名前は古生代ペルム紀。ペルム紀の超大陸にはシダ植物やイチョウ・ソテツの裸子植物、巨大な両生類や爬虫類が大繁栄。しかし!この生き物天国はやがて地獄へ・・。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年3月30日
人類が繁栄し多くの生物種を窮地に追いやっている現代も生物大絶滅の時代だとか。そんな人間の力も全く敵わない恐るべき脅威、生物もろとも地球を死に追いやる恐怖、怖いもの見たさでこの惨状を味わうにはCF☆N「地球 超未来への旅」をNODで!https://t.co/VQBVWSfjnE
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年3月31日
生物種の8割を消し去った2.5億年前の大量絶滅。その謎を追究する科学者たちの地道な努力によって、宇宙と地球内部との間で起きた別々の事件が絡み合って最大級の凶行に及ぶ偶然のシナリオが明らかになりました。5日(木)22時、貴方は最高級SF映画を軽々と凌ぐ知的興奮に包まれます!
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月1日
大量絶滅をもたらした地球内部の大異変。何とその名残を現在の風景の中に見出すことができるのです。勿論CF☆Nではその奇観を求めて世界中を取材し、驚くべき光景を皆様に徹底紹介。原色に彩られた世界一低い火山、海底火山の大溶岩地帯、地磁気を記憶したペルム紀の生物化石を含む岩石・・。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月2日
新年度最初のCF☆Nだけに取材に力が入ったことは分かりますが、次々に広がる奇観の数々には驚きます。そして岩石が語る太古の激変の物語の映像化。こんな贅沢な番組、滅多にありません!しかも大量絶滅の原因を明らかにしようと、現在の最先端科学の象徴、あのCERNにまでロケ。見るしかない!
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月2日
宇宙探査機は様々な計測装置を積載していますが、その一つが磁力計。目的の天体に磁場があるのかどうか、それが判ると天体の内部の状況が見えてくるそうです。地球を例にとれば、深層の核の金属が液体のように流動し、その結果磁力が発生するという説が有力。さて、最近耳にするのはチバニアン。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月3日
実験と探査をもとに研究者たちが描くミステリーの内容をちょっとだけ明かすと・・。宇宙の彼方で起きた大事件による強烈な宇宙線が古生代ペルム紀末の地球に襲来。まさにその時、超大陸にはある重大な異変が生じていて、そのゴタゴタ?の最中に鉄壁の宇宙線防御網に破綻が!これ以上はヒ・ミ・ツ。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月4日
番組キーワードは「超大陸」と「宇宙線の?」の2つ。さて【?】は漢字一文字。ヒントは四季のうちの1つ、と言えばカンの鋭い貴方なら想像できますよね。地球史で最初の陸上大型脊椎動物たちを徹底的に死滅に追いやった、それは酷暑だったのか極寒だったのか。答えは明日5日(木)BSP22時に。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月4日
本日は、全ての生き物が生き生きとして清らかに見える、という二十四節気の #清明 (せいめい)です。清明は生命に通じる、としたら、今夜の #コズミックフロント ☆NEXT「地球 謎の大絶滅史 史上最大の大量絶滅の真犯人を追え!」は、その真逆の生命の悲劇をTV画面に再現した超力作。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月5日
今からおよそ3億~2.5億年前の古生代ペルム紀。広大な超大陸の上を闊歩していた大型脊椎動物たちは、次の中生代に栄えた恐竜と外見が似ていますが、実は違う種類です。その中には後の恐竜や哺乳類の祖先も含まれていました。幸運だったものだけが生き延びて、現在につながったわけですね。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月5日
それにしても凄まじい大量絶滅の真実! 普段耳にすることが殆ど無いパンゲア、ペルム紀、スーパープルーム、巨大メガリス・・・、驚きの連続の #コズミックフロント ☆NEXT「地球 謎の大絶滅史 史上最大の大量絶滅の真犯人を追え!」再放送は来週11日(水)BSP23時45分から。
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月6日
大量絶滅を招いた環境激変はWパンチで発生したらしい!この辺りも今夜のCF☆Nは鋭く深堀り。掘ると言えば、番組中の研究者たちも地球の奥深く迄、まさにねほりんぱほりん的?に掘り進み貴重な証拠を発見。教科書の図でしか知らなかったアノ実物も初お目見え。BSP今夜22時、お見逃しなく!
— コズミックフロント☆NEXT (@nhk_space) 2018年4月5日
【ビッグファイブとは?】
長々とすみません。では、テキストにいきましょう。まずは基本的なおさらいで恐縮ですが、過去幾度となく繰り返されてきた生物の絶滅事変のうち、古生代以降の大量絶滅をビッグファイブと称します。
そのうちわけは、
1、オルドビス紀末(約4億4000万年前)
2、デボン紀後期(約3億7400万年前)
3、ペルム紀末(約2億5100万年前)
4、三畳紀末(約1億9960万年前)
5、白亜紀末(約6500万年前)
となります。
現在、人類が進行させている絶滅事変を6つめの大絶滅とする見方もありますが、今回はそれを除いて考えます。
5度地球を襲った大量絶滅「ビッグファイブ」とは?そして6度目の大量絶滅が少しずつ始まっている…。 - そよかぜ速報
ビッグ5(大量絶滅) - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ
史上最初の大量絶滅は火山活動が原因 東北大が解明 | 財経新聞
史上最大の地球温暖化と大量絶滅 ( その他自然科学 ) - EARTH, OCEAN, and LIFE - Yahoo!ブログ
番組で取り上げられていたのはペルム紀末の絶滅と三畳紀末の絶滅でした。
【ペルム紀末の大量絶滅】
ペルム紀大絶滅、わずか20万年で | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160818_02web.pdf
ペルム紀大絶滅の原因は微生物? 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
大量絶滅 海の酸欠が一因 2億5000万年前、東北大調査 :日本経済新聞
http://www.ogeochem.jp/pdf/ROG_BN/vol23_24/v23_24_pp5_11.pdf
なんぼでも貼れますが、これくらいで。
白亜紀末の恐竜の絶滅については、小惑星の衝突が原因であるとほぼ特定されていますが、それ以前の大絶滅の原因についてはまだ諸説入り乱れた状態のようです。ペルム紀の大量絶滅は、2回にわたって事変が起き、合わせて地上の生物の約96%を絶滅させたとされる、地球史上最大の絶滅事変です。
http://www.ogeochem.jp/pdf/ROG_BN/vol32/v32_pp19_53.pdf
では、ここから番組で紹介されていた絶滅の原因について見ていきます。ネタバレを大量に含みますのでご注意ください。
ペルム紀は、恐竜が出現する以前の時代であり、地上に初めて大型の脊椎動物が現れた時代でした。爬虫類もそれなりに繁栄していましたが、地上の覇権を握っていたのは単弓類である盤竜類や獣弓類でした。番組でディメトロドンが狩りを行っている場面のCGが流れていましたが、これはかなり珍しいものだと思います。
dic.nicovideo.jp(大変失礼しました)
ペルム紀の前半は二酸化炭素濃度が現在よりもはるかに高く、気候が非常に温暖でした。極地には氷ではなく森林が広がっていたそうです。また、大陸は現在のように分裂しておらず、超大陸・パンゲアとして1つになっていました。この超大陸の存在が大量絶滅の原因となります。
地球の磁場は太陽風や宇宙線などから地球上の生命を守るバリヤーのような役割を果たしています。磁場は地球の外核における液体金属の対流によって発生しており、磁場のN極とS極は過去幾度となく逆転を繰り返してきました。磁場が逆転する過程で磁場が弱くなったり消滅したりすると、地球に太陽風や放射線や宇宙線などが降り注ぎ、生命に大きな被害をもたらします。
ペルム紀の前半は磁場が安定しており、磁場の逆転は数千万年に一度のペースでした。ところが、ペルム紀の後半には数十万年に一度のペースで磁場が逆転しており、逆転のペースが非常に早くなりました。この乱れが磁場の弱体化をもたらし、地球に大量の宇宙線を降り注がせたのだそうです。
磁場の乱れの原因となったのは、超大陸・パンゲアでした。パンゲアは複数のプレートが衝突して構成されていました。プレート同士が衝突すると、下に沈んだプレートの一部がマントル内で融解し、巨大メガリス(スタグナントスラブ)となります。この巨大メガリスがマントル内を落下し、外核の表面に達します。このメガリスの影響によって外核における対流が乱れ、地球の磁場に異常が発生したのだそうです。
メガリスの落下といえば『日本沈没』ですが、話がわき道にそれてしまうのでスルーします。また、メガリスは落下しないという説もあるそうですが、それを認めてしまうと番組の仮説が根本から揺らぐので、やはりスルーします。
スタグナントスラブ:マントルダイナミクスの新展開(深尾 良夫):文部科学省
沈み込んだプレートの穴と長白山火山の起源のなぞ | UTokyo Research
宇宙線が地球に降り注ぐといろいろな悪影響がありそうですが、番組では、宇宙線の影響で分厚い雲が地球を覆ったために気候の寒冷化が進行した、という仮説が紹介されていました。寒冷化のため、まず地上の生命の約60%が絶滅したのだそうです。熱帯地域を中心に、寒冷化に対応できなかったと思われる生物が絶滅したり、生息数が減少したりしているのが、化石から推測できるそうです。
番組では、宇宙線が地球の大気にぶつかるとある粒子が形成され、その粒子が増えると雲を形成する核になると説明していました。宇宙線雲形成説と呼ばれる説です。しかし、肝心の、雲の核になる粒子の名前が番組内に出てきませんでした。宇宙線の影響でイオン化した複数の物質の粒子が雲の核になるようですが、もう少し具体的に説明するべきだったと思います。宇宙線雲形成説には反論もあるようです。しかし、宇宙線雲形成説を否定すると番組の仮説が成り立たないので、ここもスルーします。
http://aplab.konan-u.ac.jp/thesis/paper/2012/ueda/ueda-thesis.pdf
銀河宇宙線の増大による寒冷化の最新研究報告:「地球磁場の弱化が気候に多大な影響を及ぼす証拠を発見〜銀河宇宙線が作る雲が深く関与し寒冷化が起こる」 - るいネット
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/119/3/119_3_519/_pdf
【ペルム紀・第2事変⇒100万年続いた噴火】
続いて、絶滅事変の第2撃目にいきましょう。先ほどの巨大メガリスの落下によって、マントル内にスーパープルームが発生しました。スーパープルームは地殻まで上昇し、巨大噴火を引き起こしました。噴火は100万年も続いたそうです。噴火によって大量の二酸化炭素やメタンが地上に放出され、今度は急激な温暖化と乾燥化が進みました。辛うじて寒冷化を生き延びた生物も、8割以上が激変についていけずに絶滅しました。ここまでがペルム紀における地球史上最大の大量絶滅の概要です。
史上最大の大量絶滅、ペルム紀末の『大規模噴火』証拠発見 : ZAPZAP!
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160818_02web.pdf
http://ea.c.u-tokyo.ac.jp/earth/Members/Isozaki/12Iden.pdf
http://sanriku-geo.com/column/地球規模の大変動と絶滅と繁栄/
番組では触れられていませんでしたが、この大噴火の痕跡とされるのがロシア・ウラル山脈の東に広がるシベリア・トラップです。溶岩が噴出した地域は西ヨーロッパの面積に匹敵するほどの広さで、噴火が200万年以上続いたという説さえあるそうです。
シベリアトラップ説〜史上最大の噴火はシベリアで起こった。だとするとインド北上は、シベリアのプルームの衰退の結果ではないか。 - るいネット
🔶《第7回》私の『137億年の物語』 - takeo1954’s diary
続いて、三畳紀の事変に参ります。ビッグファイブの中でも、約5000万年という最も短いスパンで起こった大絶滅です。番組では、三畳紀の大絶滅の原因は、ペルム紀の第2事変と同じく、パンゲアが引き金となった巨大噴火であると説明していました。恐竜の絶滅と同じように巨大隕石の落下に原因を求める説もあるようです。しかし、ここでは番組の通り、巨大噴火が大絶滅の原因であるとしておきます。
三畳紀末(2億1500万年前)の大量絶滅の原因も超巨大隕石だった! : サイエンスジャーナル
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_20160708180644005662788491_877986.pdf
2億1500万年前の巨大隕石衝突で海洋生物が絶滅した証拠 - 熊本大らが発見 | マイナビニュース
三畳紀は、海洋生物相が劇的な変化を遂げた時代でした。ペルム紀の大量絶滅によって発生したニッチを埋めるように、アンモナイト、ベレムナイト、翼形二枚貝、コノドントなどの新しい生物たちが出現し、海中の風景は大きく変わりました。
一方、陸上では恐竜の祖先や哺乳類の祖先が出現しましたが、地上の覇権を握っていたのは現在のワニの祖先にあたるクルロタルシ類でした。恐竜や哺乳類はまだ体の小さいものが多く、生態系の頂点に立つものはいなかったようです。
最強動物列伝~三畳紀編~ | 川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人 Powered by Ameba
三畳紀末、またしても巨大噴火が地球上の生命を襲いました。ペルム紀末ほどの巨大な規模ではなかったものの、それでも噴火は数十万年は続いたそうです。噴火の影響で大気中の二酸化炭素濃度が2倍以上に上昇し、地球上は超温暖化の状態になりました。この気候変動に対応できなかった生物たちが絶滅しました。巨大噴火の痕跡は中央大西洋マグマ区(CAMP)と呼ばれる一帯です。分裂を始めていた超大陸パンゲアの影響で地殻との境界付近にあったマントルが融解し、プルームとなって、激しい噴火につながったのだそうです。
三畳紀末の大量絶滅、原因は溶岩の噴出 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
三畳紀末の大量絶滅、最新技術で時期を詳細に特定 「誤差2万年」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.sc.ouj.ac.jp/center/miyagi/news/upload/放送大学4.pdf
Central Atlantic magmatic province - Wikipedia
ジュラ紀に入ると、生き残った恐竜と哺乳類が新たなニッチに進出し、恐竜時代が始まりました。後の展開については、多くの方がご存知の通りです。恐竜時代の始まりと超大陸パンゲアの終わりは。ちょうど同じような時期の出来事でした。
【2億年後の超大陸】
大陸は現在も移動を続けています。そして、約2億年後に再び合体し、新たな超大陸が形成されるといわれています。
もちろん人類が未来の超大陸に出会うことはありません。2億年後の世界で地上の覇権を握る生物がどんなものなのかは全く分かりませんが、極私的には、イカが知的生命体として地上の覇権を握ってもいいと思います。
ドゥーガル・ディクソンの生物群② フューチャー・イズ・ワイルド - otomeguの定点観測所(再開)
2億年後、第2パンゲアが原因となって巨大噴火が起こり、メガスクイドやスクイボンなど森のイカたちは超温暖化または超寒冷化の餌食になるでしょう。頭足類の絶滅を悼み、謹んでご冥福をお祈りします。