2018SFセミナーレポートその4 『BEATLESS』~「かたち」と「こころ」の物語
テキストをあげられるうちにどんどんあげないと。SFセミナーのレポート第4弾は、本会企画4コマ目のアニメ『BEATLESS』に関するインタビュー企画です。司会は堺三保、出演者は長谷敏司・雑破業の各氏でした。
- 作者: 長谷敏司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/10/11
- メディア: 単行本
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例によってなんぼでも貼れますが、とりあえずこれくらいで。
アニメ『BEATLESS』は、今年のアニメ作品の中でも上位にランクされると思います。2クール目もずっと観続けております。最初は原作との差異を楽しんでいましたが、最近はアニオリの要素も細部をつつきながら楽しめるようになってきました。何とか最後までこのクオリティを保ってほしいところです。
このアニメの特徴は、原作者・長谷敏司が脚本会議に積極的に参加して、アニメ制作に強くコミットしていることでしょう。後でどかっと設定を送られてきてチェックするより、会議に参加してその場で決めた方が時間も手間も省けるのだそうです。原作で置き換えのきく部分についてはいろいろアニオリを入れているとのことで、まだまだこちらが発見していないアニオリもありそうです。
長谷敏司は小説とアニメ脚本との大きな違いを感じているとのことで、いくつかの要素を挙げていました。なかなか興味深い内容だったので、ここでまとめてみます。
まずは読者および視聴者に対する説明です。SFは難解なものを難解なままにしておいても作品が成立して読者が受け入れてくれるという、便利な特性を有するジャンル小説です。例えば、グレッグ・イーガンの作品に登場するテクノロジーを科学的にきちんと理解できる読者は、恐らく半分もいないと思います。それでもイーガンの作品は年間ベストの上位にきますから、他ジャンルの読者から見ると奇異な感じもするはずです。しかし、同じSFでもアニメでは事情が異なります。登場するテクノロジーや設定について、視聴者が理解できるように分かりやすく説明しなければなりません。アニメを観るというのは受動的な行為なので、説明不足で分かりにくいと判断されると、視聴者がそれ以上は観てくれません。つまり「切られる」わけです。私も毎クールかなりの数のアニメを「切って」いますが。アニメ化の際、小説の設定の多くの部分で修正が必要だったとのことです。
セリフの書き方も小説とアニメでは異なるそうです。小説では、説明的なセリフなどで何行にもわたるセリフがありますが、アニメの脚本では、セリフは2行に渡ってはいけないそうです。長いセリフは声優さんに負担をかける上、冗長になって視聴者に飽きられてしまうとのことです。
また、時間感覚も小説とアニメでは異なるそうです。読むという行為は能動的で読者による速度と時間の調整がきくので、小説ではページごとに流れる時間の速さが異なっても特に問題ない場合が多いそうです。しかし、映像にすると、小説では想定していなかった時間の長短が発生するため、シナリオの長さを調整するのが難しいとのことです。映像になって初めてわかるケースも多いそうなので、読者・視聴者としては、小説を片手に比較しながらアニメ鑑賞するのが面白そうですね。
このように小説とアニメ脚本の違いを経験し、モチベーションや説明をドラマの前に置いたり、セリフを読みやすくしたりするなど、長谷敏司には小説創作へのフィードバックもあったとのことです。そのフィードバックを踏まえ、文庫版『BEATLESS』には多くの修正を入れたそうです。
このパネルを通じて、アニメ『BEATLESS』では原作者と制作サイドが一体となっているという、強いエネルギーを感じました。長谷敏司が原作者として関わることで細部の情報が増し、映像のクオリティが上がったそうです。また、長谷敏司が、へたに原作に忠実に作るよりも面白い映像作品にしてほしい、というスタンスだったのも良かったようです。適度な距離感で仕事ができているのでしょう。長谷敏司の「幸せな原作者」という言葉が印象に残りました。
アニメ『BEATLESS』への興味をさらに引き出してくれる、好パネルでした。ところで、『ストライクフォール』の続編は今年中に出るんでしょうか?