otomeguの定点観測所(再開)

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マニエリスム談義感想??

 毎度毎度の遅ればせですが、今年4月に出たタイトルの本の感想です。だいぶ前に読み終わっていたのですが、テキスト化がすっかり遅れてしまいました。

 【完全理解するには私の知的体力がとても足りず・・・】

マニエリスム談義 驚異の大陸をめぐる超英米文学史 書評|高山 宏(彩流社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

マニエリスム談義: 驚異の大陸をめぐる超英米文学史 感想 高山 宏,巽 孝之 - 読書メーター

『マニエリスム談義 驚異の大陸をめぐる超英米文学史』 | 高山宏、巽孝之(著) - SFWJ:新刊案内

『マニエリスム談義』を読むには読んだが・・・ | 教授のおすすめ!セレクトショップ - 楽天ブログ

高山宏&巽孝之『マニエリスム談義』 - オベリスク備忘録

 もっといっぱい貼れますが、とりあえずこんなもんで。

 うーん、すごいですね。高山宏巽孝之の2人が、圧倒的な読書量と守備範囲の広さを駆使して縦横に語りあっています。矢継ぎ早に繰り出される無数の書籍を読んでいて、かつ内容を理解していることを前提に話が展開されているため、内容があまりにも広くて深すぎ、理解できない部分があまりに多いです。自分の知的体力のなさ、読書量の少なさを痛感させられました。これが知的快感につながるのは、お二人の知的世界が心地よいから。私のようなバカを置き去りにしていくスタンスですが、学問って本来はこういうものです。上のリンクにインデックスがないことを批判している人もいましたが、分からなければ自分で必死に調べろということです。人文科学を志す人は、まずこの本を読んで、文学や哲学の深さ・広さをしっかり体感するべきでしょう。

 というわけで、本全体を「面」や「線」として理解するには至らず、各所に私が理解しうる「点」が散らばっているという情けない状態だったので、この本の全体的な感想を記すのは不可能です。特に、第1章「アメリカ・ルネッサンスマニエリスム」および第2章「ピクチャレスク・アメリカ」については、英文学・米文学・歴史・芸術などに疎い私には非常にきつい内容でした。辛うじて、ところどころで挿入されるSF・ミステリ・怪奇幻想および哲学・思想的なネタや文学理論の話題を断片的に理解できる程度でした。

 とりあえず、第1章と第2章で理解できた「点」を箇条書きにしてみます。

 

【第一章アメリカ・ルネッサンスマニエリスム」】

ポスト・トゥルースとSF・ファンタジーを同列にくくられたことでル・グィンが激しく怒った。

2018SFセミナーレポートその5 ル・グィン追悼 - otomeguの定点観測所(再開)

・ヒエロニスムス・ボスと荒巻義雄『神聖代』の関係性。 

神聖代 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 6巻)

神聖代 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 6巻)

 

 ・メタフィクション批判としてのアヴァン・ポップと、アヴァン・ポップ運動の果てに顕れたマニエリスム的極致の一つ『紙葉の家』 。

紙葉の家

紙葉の家

 

 ・ポーとヴェルヌの地球空洞説とその小説群。

地底旅行 (岩波文庫)

地底旅行 (岩波文庫)

 

 ・マニエリスム現代文学の関係性、ピンチョンやディレイニーなどのメガノベル。

ダールグレン(1) (未来の文学)

ダールグレン(1) (未来の文学)

 
ダールグレン(2) (未来の文学)

ダールグレン(2) (未来の文学)

 

・カントの三批判がポーの文学理論「真理の領域」「倫理の領域」「美の領域」に対応している。 

E・A・ポウを読む (岩波セミナーブックス)

E・A・ポウを読む (岩波セミナーブックス)

 

 

【第二章「ピクチャレスク・アメリカ」】

・ド・マンもマニエリストである。 

サイバーパンクと廃墟⇒香港の九龍城塞とギブスンのチバ・シティ

2016日本SF大会 いせしまこんレポート④~サイバーパンクの部屋~ - otomeguの定点観測所(再開)

 

 と、こんな感じですね。あとはほとんど知らないことばかりだったので、内容のつまみ食いさえできない有様でした。

 第三章「アメリカ・文学・日本」ではSFに話を展開してくれたので、ようやく談義の内容が理解できるようになりました。第三章では、荒巻義雄マニエリスム作家として評価した後、原民喜などの類似の作家を並べて作家・作品論が展開されたのち、一・二章でも取り上げられていた人文科学と政治の関係性、および現代の政治家の知的貧困さへの嘆きで締められていました。

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 そして、終章「マニエリストはどう生きるか」では現代のマニエリスム的小説・思弁小説を次々に取り上げながら、各所に散種されてしまった思考の断片をマニエリスム的思弁で織り上げていくことが現在必要であり、マニエリスムなしでどうやって生きていくんだという叫びで本が締められていました。

 三章・終章の本の終盤でようやく私の圏域でとらえられる話になってくれて、談義の内容をある程度は理解できるようになりました。 

もはや宇宙は迷宮の鏡のように

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競売ナンバー49の叫び (Thomas Pynchon Complete Collection)

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【「新青年」版】黒死館殺人事件

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アインシュタイン交点 (ハヤカワ文庫SF)

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大渦巻への落下・灯台: ポー短編集III SF&ファンタジー編 (新潮文庫)

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薔薇の名前〈上〉

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薔薇の名前〈下〉

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2666

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アリス狩り 新版

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 散漫なテキストになってしまいましたが、つまり、私のような知的弱者でも、断片を「点」として拾うことで何とか楽しめる本であったということです。これらの破片を寄せ集めるだけでも知的弱者にとっては修業になるので、全体をとらえる知的体力がなくても十分に読む価値のある本だと思います。もっと勉強しろってことですね。