2018極私的回顧その2 ライトノベル(単行本・ノベルズ・ノベライズ・リプレイなど)
それでは、文庫に続いて単行本・ノベルズです。一昨年から『このラノ』で部門が分割されたのに伴い、当ブログもその分け方に倣いました。ノベライズやリプレイの一群もここに含めております。版型がめちゃくちゃになっとるというツッコミはなしでお願いします・・・。なお、いつものお断りですが、テキスト作成に『このラノ』およびamazonほか各種レビューを参照しています。
【マイベスト5】
1、FLOWERS 1 ―Le volume sur printemps- フラワーズ〈春篇・上〉
FLOWERS 1 ―Le volume sur printemps- フラワーズ〈春篇・上〉 (星海社FICTIONS)
- 作者: 志水はつみ,Innocent Grey,スギナミキ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/06/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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2018年は百合物件の当たり年で、これから極私的回顧の中にいくつか出てくる予定ですが、百合の濃厚さと酩酊具合という点において、原作ゲームを忠実にトレースしていたこの作品をノベライズ一群のトップとして推します。ゲームのテキストでは軽くしか触れられていなかった少女たちの心情が細やかに描写されていたり、ゲームでは未確定だった伏線が張られていたり回収されていたりなど、ゲームを補完する機能も備えており、原作ゲームのファンにはマストアイテムでしょう(周辺商品のテキストでゲームの内容を補完するのはイノグレのいつものやり口ですが)。箱庭の百合の甘やかな世界がお好きな方なら、ゲームが未プレイでも愉しめると思います。
FLOWERS -Le volume sur printemps-(春篇) 通常版
- 出版社/メーカー: InnocentGrey
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: DVD-ROM
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FLOWERS -Le volume sur hiver-(冬篇) 通常版
- 出版社/メーカー: InnocentGrey
- 発売日: 2017/09/29
- メディア: DVD-ROM
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FLOWERS -Le volume sur automne-(秋篇) 通常版
- 出版社/メーカー: InnocentGrey
- 発売日: 2017/09/29
- メディア: DVD-ROM
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FLOWERS -Le volume sur ete-(夏篇) 通常版
- 出版社/メーカー: InnocentGrey
- 発売日: 2017/09/29
- メディア: DVD-ROM
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極私的な感想ですが、『Flowers』にも『エコール』にも一切言及せず、ガチ百合としゃれの百合を十把一絡げにして、『ウテナ』『神無月』『大運動会』はいいとしても、『lain』『電脳コイル』など百合がメインテーマではないアニメを「百合アニメ」と称していた《SFマガジン》の百合特集は、ジェンダー&セックス的なエッジの鋭さにおいても、変態性の深さにおいても、ぬるいと言わざるを得ません。この特集程度のジェンダー&セックス的な思索や変態性など、すでにフェミニズムやフェミニズムSFにおいて超克されています。
serial experiments lain Blu-ray BOX
- 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 発売日: 2015/10/23
- メディア: Blu-ray
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(『大運動会』OVAのトランスジェンダー的要素/男の娘に言及しない作品紹介はあり得ないでしょう)
2、サン娘~Girl's Battle Bootlog
サン娘~Girl's Battle Bootlog (ブックブラスト)
- 作者: 金田一秋良,射尾卓弥
- 出版社/メーカー: マイクロマガジン社
- 発売日: 2017/10/05
- メディア: 単行本
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2017年の作品ですが、遅ればせながら読んだのが今年なのでランキングに入れました。レイズナー、ザンボット3、スコープドッグなど、懐かしのサンライズロボットの力を宿した少女たちのバトルアクションです。ロボットアームを使った戦闘描写もいいですが、少女たちの熱い魂のぶつかり合いが壮絶ながらも瑞々しい青春ドラマとなっていて、大いに感情移入しました。ストーリー的には非ロボの方でも楽しめる作りですが、やはり元ネタが分かったほうが面白いでしょう。
3、JKハルは異世界で娼婦になった
異世界転移もののファンタジーですが、主人公の女子校生・ハルには異能がなく、男尊女卑の世界でやむなく娼婦として身を立てていきます。ハルの一人称は一見さばさばとした語り口ですが、実は前向きでタフなハルのキャラクターに好感が持てます。セックスの相手との交流も細やかに描かれています。物語終盤のどんでん返しも堂に入った作りであり、完成度の高い作品だと思います。
4、 若おかみは小学生! 劇場版ノベライズ
TVアニメも佳作でしたが、口コミで評判の広まった劇場版は傑作でした。その劇場版のノベライズです。現実の厳しさや冷たさなどを味わいつつも、健気に奮闘して逆境を乗り越えていくおっこの姿が印象的です。基本的に映画と同じ構成ですが、単体の小説としても読みごたえのある作品です。
5、ソード・ワールド2.5リプレイ トレイン・トラベラーズ!
ソード・ワールド2.5リプレイ トレイン・トラベラーズ! (ドラゴンブック)
- 作者: ベーテ・有理・黒崎/グループSNE,かわすみ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/08/20
- メディア: 文庫
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2.5へとバージョンアップしたソードワールドのリプレイです。魔動列車の設定が斬新で、剣と魔法と列車がうまく融合しながら、PCたちのやりとりがアップテンポに展開されていきます。個々のPCも魅力的ですが、やはり彼らが織りなす骨太な物語こそこの作品の軸でしょう。
【とりあえず2018年総括】
ライトノベルの本丸とは異なる感性や趣向を持った作品を、どこまでライトノベルとみなしていいのでしょうか。ライト文芸にせよノベライズにせよリプレイにせよ、ターゲットとする読者層を一般のラノベ読者とは異なる層に置いています。それぞれがライトノベルのサブジャンルとして機能してはいますが、やはり文芸としてはライトノベルの本丸とは異質な要素を備えています。そんなことを考えているうちに2018年も終わってしまいそうです。
引き続き横断的なジャンル把握が不可能な状況なので、1年を通じてつまみ食い的な読書に明け暮れた結果、ベスト5がサブジャンルの入り乱れた不揃いなものになってしまいました。来年もこのカオスな状況に追い立てられ、新刊の山と戦う日々がずるずる続く気がします。読者としては非常に幸福な状況なのでしょう。