otomeguの定点観測所(再開)

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2019ニューイヤー駅伝・箱根駅伝雑感

 年末年始は延々と仕事をしていたため、いつものごとく更新が滞ってしまいました。本来なら極私的回顧のミステリ部門を進めなければいけないんですが、少し足踏みをして、毎度毎度の大変遅ればせながら本年冒頭の駅伝についてまとめておきます。否、disっておきます。

 【見た目は激戦、中味は凡戦】

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ニューイヤー駅伝2019|TBSテレビ

 まず、元旦のニューイヤー駅伝から。最後のゴール前の激戦を制し、旭化成が見事3連覇。MHPSとの競り合いは見ごたえがありましたし、伝統のプライドを感じさせる見事なレースでした。「平成最後の駅伝王者」となり、実業団陸上の雄であることを改めて見せつける結果となりました。MHPSはやはりもう一枚準エース級の選手がほしかったですね。井上だけではやはり厳しい。層の厚さで旭化成が上回った結果になりました。3位以下はトヨタ自動車富士通コニカミノルタ。平成の駅伝を彩ってきた強豪が並び、全体には締まった駅伝になったと思います。あとは、この盛り上がりが東京マラソンびわ湖マラソンにつながることを期待しましょう。

 ・・・とおためごかしはこれくらいで。

 ニューイヤー駅伝を見ていていつも思うのは、インターナショナル区間という意味不明な設定への違和感です。他国からの助っ人を全て2区に押し込めて、出場できる外国人選手は1名という意味不明な制限を行い、日本人同士のコップの中の争いで勝った・負けたで盛り上がる。マラソンで世界を目指すと宣言しながら、長距離では勝負するまでもなく白旗を掲げるいびつさ。この後ろ向きの発想が日本のトラック長距離を低迷させているんですが、改善しようという動きはまるでありません。勝つことを放棄するという、アスリートとしてはまるで駄目なことをみんなでやっている、ぬるま湯の環境。否、ニューイヤー駅伝にはアスリートなんてほとんどいないんでしょうね。

 優勝した旭化成はこの後が問題のはずです。エキシビジョンで3連覇しても、何の価値もないわけですから。MGC出場権を獲得した男子が21名に達する中、旭化成は未だゼロ。マラソンの終盤で旭化成勢がなす術なく失速していくのは、今や定番になりつつあります。駅伝には強くても、マラソンにおける栄光と伝統はもはや見る影もありません。この2・3月のレースで巻き返してくれるのか。ポテンシャルの高い選手たちを多く抱えているだけに、責任は重大なはずです。ま、正直、期待してはいませんが。

マラソングランドチャンピオンシップ - Wikipedia

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箱根駅伝公式Webサイト

 続いては箱根駅伝。下馬評では青山学院1強という声が強かったですが、蓋を開けてみれば青山が4・5区で失速し、往路6位という意外な展開に。青山が早々に優勝争いから脱落したことで、東海大にとっては極めて有利な展開となりました。東洋大は往路に主力5人を投入しましたが、復路における東海大との戦力差を考えるとあと2分はリードしたかったところでしょう。東洋を射程距離においた東海が計算通りの流れで差を詰めて、見事に初の総合優勝に輝きました。

 東海は現3年が黄金世代といわれながらなかなか結果に恵まれてきませんでしたが、この優勝で一皮むけるかもしれません。次年度は3冠を狙うとの声もありますが、黄金世代の集大成として素晴らしいシーズンが期待できそうですね。青山学院は復路で見せ場を作りましたが、やはり往路でのブレーキが全て。王者の立場から退きましたが、挑戦者として原監督がどんなチームを作ってくるのか、東洋とともに3強の戦いが熱くなりそうです。

 ・・・こちらもおためごかしはこれくらいで。エキシビジョンの結果で選手を評価しても意味はないので。

 今年は学生陸上にたいした選手がいなかったんですよね。3区・8区の区間記録は見事だったとしても、気象条件が良かったですし、別にトップ選手が集結する区間ではなく走りやすいコースなので、トラックの走力を考えれば出てもおかしくはない数字です。青山・東洋・東海の3強に10000m27分台の選手が1人もいないというのは、やはり時代遅れの低レベルといわれても仕方ない気がします。そもそも青山は10000m27分台の選手を輩出したことがないですし。東海の黄金世代からさっさと10000m27分台を複数出せと言いたいです。実業団勢がトラック長距離にやる気を見せていない中、学生陸上からの突き上げは必須のはずですが。2019年のトラックシーズンで伸びてくる選手はいるんでしょうか。

 極私的に最も価値を感じたのは、塩尻和也の2区66分45秒です。区間賞は逃しましたが、三代以来20年ぶりに出た日本人最高タイム。3000m障害が専門の選手ですから、さすがにこれ以上は望めないかと。五輪出場・アジア大会銅メダルなどの実績を併せれば、箱根駅伝史上最強の日本人選手の1人といっていいと思います。そして、2018年に低迷極まる日本の男子トラック長距離の屋台骨を1人で支えた仕事は、本当に価値の高いものでした。濃密な4年間、陸上ファンとして大いに楽しませてもらいました。お疲れ様でした。

 富士通への就職が決定していますが、早々に3000m障害の日本記録を更新し、低迷する日本の中長距離トラックを牽引してほしいところです。