極私的回顧第15弾はギャルゲーです。表題からお分かりの向きも多いと思いますが、今回は18禁の上、小児性愛的要素が含まれますので、その手の趣向を許容できない方はこの先のテキストをお読みにならないようお願いします。また、いつもの通りテキスト作成の際にamazon、DMMほか各種レビューを参照しています。
【マイベスト5】
1、素晴らしき日々 ~不連続存在~フルボイス版
- 作者: ウィトゲンシュタイン,野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/08/20
- メディア: 文庫
- 購入: 29人 クリック: 278回
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- 作者: エミリーディキンスン,Emily Dickinson,新倉俊一
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 1993/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: エドモンロスタン,Edmond Rostand,渡辺守章
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/11/11
- メディア: 文庫
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『素晴らしき日々』考察―この物語は、あらゆる人を救うための物語―(28438文字) - 古明堂
ケロQ『素晴らしき日々〜不連続存在〜』読書会レポ: 京大SF・幻想文学研究会ブログ
素晴らしき日々、というゲームについて。(1)|Colstrains|note
パロディネタ - 素晴らしき日々~不連続存在~ @まとめwiki - アットウィキ
ニコニコ大百科: 「素晴らしき日々~不連続存在~」について語るスレ 121番目から30個の書き込み - ニコニコ大百科
なんぼでも貼れますが、こんなもんで。
新作ではありませんが、『すばひび』はギャルゲー史上屈指のシナリオの完成度を有する作品であり、上記リンクにあるように発売された当時は『終ノ空』に引き続き(見かけ)ヴィトゲンシュタインの哲学をベースにしたシナリオに触発されて様々な批評・解釈テキストが生産されていました。過去に当ブログで書いた批評テキストは3年前に吹っ飛ばしてしまいましたが・・・。そして、シナリオだけでなく演出やグラフィック、ハードな世界観、Hシーンの描写、楽曲などにおいても高い完成度であり、『すばひび』は間違いなくノベルゲーム史上の頂点に立つ作品の1つです。2018年、久しぶりにプレーしましたが、屹立した存在感は全く褪せていませんでした。
OOOにかぶれた向きからすると『すばひび』はヴィトゲンシュタインの言語哲学というよりはヴィトゲンシュタインの認識論を経由したカントの認識論をベースにして独我論的に実存の暗部を解釈し単独者としての生と幸福をトートロジー的に正当化しているためそのアプローチは古き良き実存主義的に過ぎており間社会的存在としての人間に対する考察をオミットしている感があるのですが、かつてサルトル現象学にまみれた向きからすると言語=コギト=意識を手がかりに人間の圏域を対自が観測できる範囲に基定して実存を即自的世界を切り離して内世界に頽落し独我的に突き詰める『すばひび』のアプローチは認識論的にオーソドックスな印象のものでした。結局、哲学的に基定するとマルクス・ガブリエルなどと同じく、『すばひび』も『終ノ空』もドイツ観念論の系譜に属する作品なのだと思います。
2018年10月臨時増刊号 総特集◎マルクス・ガブリエル ―新しい実在論― (現代思想10月臨時増刊号)
- 作者: マルクス・ガブリエル,野村泰紀,大河内泰樹,宮崎裕助,斎藤幸平,小泉義之,浅沼光樹,清水高志
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2018/09/19
- メディア: ムック
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神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Νύξ叢書)
- 作者: マルクス・ガブリエル,スラヴォイ・ジジェク,大河内泰樹,斎藤幸平,飯泉佑介,池松辰男,岡崎佑香,岡崎龍
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
- 発売日: 2015/11/27
- メディア: 単行本
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ゼロ年代のノベルゲームの知的到達の極北がここにあります。もしかしたら人生観に重大な影響を与える作品ですので、プレイする際はご注意ください。
Summer Pockets -サマーポケッツ- (サマポケ) オフィシャルサイト | Key Official HomePage
不定期スタッフ日誌|Key Official HomePage
Key開発室 (@key_official) | Twitter
第2位はこの作品になりました。毎度の手抜きで恐縮ですが、当ブログでレビュー済みなので再掲します。
新機軸こそありませんが、Keyの定番といえる要素を凝縮した、ブランドの復活を宣する傑作です。
今回、制作スタッフが並々ならぬ決意で制作に臨んだことは上記リンクからも辿れますが、その決意は鮮やかに結実しました。『Kanon』『AIR』『CLANNAD』の系譜に連なる作品であり、「泣き」のシナリオ、疵を持つヒロイン、隠しルートと真相に至るサプライズが盛り込まれたエンディング、ミスリーディングを誘う重層なシナリオ、ピュアな恋愛、癒しへと至る収斂などのKeyの定番の要素が軒並み盛り込まれています。2016年に掲げられたヴィジュアルアーツの「原点回帰」というスローガン通り、Keyが初心に還ったといえる作品でしょう。そして、「原点回帰」は成功したようです。『Summer Pockets』終了時には『Kanon』『AIR』『CLANNAD』で感じたノスタルジーと切なさが甦ってきました。
『Kanon』『AIR』『CLANNAD』終了時には、ぽっかりとした喪失感と充実感を覚えたものですが、今回そこまでに至らなかった原因は、『Summer Pockets』のクオリティ云々ではなく、私が歳をとった上にいろいろな作品をやり過ぎてピュアではなくなっているからでしょうね。また、『Summer Pockets』のシナリオのボリュームに『Kanon』『AIR』『CLANNAD』ほどの幅や壮大な仕掛けはなく、コンパクトにまとまった作品になっています。作品のキャッチコピーにあるようなひと夏の眩しさ・清々しさを表現するには、これくらいのボリュームでちょうどいいと思います。
今年のギャルゲーにおいては間違いなく最上位に位置付けられる普遍的な傑作であり、是非プレイしてほしい作品です。そして、Keyというブランドが健在であることも証明されました。すでにアニメ化も決定しているようなので、今後『Kanon』『AIR』『CLANNAD』に近づく評価を得られるかどうかは、FDも含めた今後のメディアミックスの成功も必須条件になるでしょう。
願わくば、アニメ化が成功して、『CLANNAD』の奇跡をもう一度見てみたいものです。とにかく、続報を待ちましょう。
3、ランス10
http://www.alicesoft.com/rance10/
2018年のギャルゲー最大のニュースはやはり『ランス10』完結でしょう。約30年というこのシリーズの歴史が終わる感慨は非常に大きなものでした。これだけの年月をかけて1人の主人公について描いたシリーズ作品(しかも18禁)というのは恐らくゲーム史上でも他に類を見ないものでしょう。ゲーム形式の変化や2Dから3Dへの変化などの変遷を経て、幾度かのリメイクを重ねながら、それでもなお〈ランス〉シリーズが厳然と続いてきたのは、(時代の変化に対応しながらも)キャラクターや世界や物語などに揺るがない土台があったからであり、30年間ゲームの面白さで最前線を突っ走り続けたからです。大河シリーズを作り上げたスタッフの皆様に改めて大きな敬意と感謝を払うとともに、世界のゲーム史に残るシリーズをコンプリートし、私の人生が豊かなものになったことに深く感動しました。
4、甘園ぼ
https://app.candysoft.jp/products/amaenbo
『隠恋ぼ』『通心ぼ』に続く「ぼ」シリーズ第3弾。2018年ほぼ唯一の良質ロリゲーでした。今回も無垢な少女たちに変態主人公が性教育(=調教)を施すというフォーマットは健在で、明るくストレスフリーに〇学生とSEXできるシチュも過去2作と同じでした。安定した作りの概ね良質な作品ですが、青姦シチュが多いうえ、ロリ巨乳もいますので、つるぺたがや室内Hがお好きな方には合わないかもしれません。
5、RIDDLE JOKER
RIDDLE JOKER 4コマ劇場その4「※ただの水です」 - YouTube
RIDDLE JOKER リドルジョーカー OFFICIAL WEBSITE|ゆずソフト
ゆずソフトらしい分かりやすい学園もので、定型的なキャラ萌えのエロゲーです。小難しい物語や舞台設定はなく、キャラの魅力で惹きつける佳作です。細かいことを考えずに『はじるす』『はじいしゃ』以来お世話になっているむりりんやこぶいちの描く女の子のかわいさを味わえればそれでよいと思います。
こぶいち@大阪のどこか (@kobuichi) | Twitter
【2018年とりあえず総括】
相変らずギャルゲー市場は厳しい状況が続いているようですが、極私的には2018年は『すばひび』『サマポケ』『ランス10』とギャルゲー全盛期を彷彿とさせるような大作・傑作が相次ぎ、久しぶりにギャルゲーの血がたぎった1年でした。これで『おとボク3』が傑作だったら言うことなしだったんですが、残念ながらそこまではいきませんでした。
幼分補給については、ロリゲーがほとんど発売されなくなったので、枯渇しきっている状況です。2018年末に『まいてつ Last Run!!』が発表されたので、そこに期待しましょう。これでまたしばらく生きる理由ができました。