2018極私的回顧その19 SF(国内)
極私的回顧第19弾は国内SFについてのまとめです。毎度のおことわりですが、SFにジャンル分けできるものでも、作品によっては近接ジャンルのファンタジー・幻想文学などに配置している場合があります。また、テキスト作成のために『SFが読みたい』およびamazonほか各種レビューを参照しております。なお、今回のテキストには一部ですが濃厚な小児性愛的要素が含まれますのでご注意ください。
【マイベスト5】
1、最後にして最初のアイドル
短編としては2016年の回顧でベスト5に入れた作品ですが、2018年に文庫化されたので、改めて。草野原々はオタクキャラとしてのアイコンが先行する作家で、本人が多分に意識して演じている側面もあると思いますが、彼はあくまで和製ワイドスクリーンバロックの担い手として評価すべきです。その根本は稀有壮大な奇想と練り込まれた架空理論であり、アカデミックな思弁とロジカルさであり、哲学・科学文献を狩猟した知的背景であり、分析哲学を基にした思考力です。最新作でもぶっ飛んだ個性を発揮してくれているので、引き続き日本SFを攪乱してくださることを願っております。
2、プラスチックの恋人
https://ja.uncyclopedia.info/wiki/山本弘
「プラスチックの恋人」を読んで思ったこと、感想とか。(2018/1/27加筆修正) - 今日もはなまる。
プラスチックの恋人 - 自らの似姿を越えたものを愛すること - シミルボン
作者・山本弘はこの作品を「リトマス試験紙」と評しましたが、マイナー・オルタマシンとのSEXに賛同し、小酒井氏に強く感情移入した私は言うまでもなく小児性愛者です。2019年現在でも少女のラブドールはありますので、マイナー・オルタマシンはそれの発展版と考えれば違和感はありませんでした。
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現在は2次元に欲望を抑え込んでいますが、1998年の児童ポルノ法施行前は私も作中に名前の出てきた石川洋司や清岡純子の写真集に触れ、小酒井氏同様ヌイたこともありました。でも、当時は私のまわりに同じようにヌイていた男子はいましたし、書店で普通に美少女ヌード写真集を売っていたので、特に背徳感はありませんでした。当時、清岡純子のモデルとなった少女の中には、将来女優にしたいからと親が応募してきた例とか、医者の娘なんて例もありましたので、美少女ヌードが18禁のポルノとして扱われていなかったのも事実です。何とも牧歌的な時代でしたね。いつか再び少女たちの裸を健全に愛でることのできる時代がくるといいのですが、それはさすがに無理か。
小酒井氏は経営者としては失策を犯し、隠遁生活に入りましたが、自分の理想である少年少女を愛でながら生活するというのは何と甘美でうらやましい環境なのでしょう。やはり少年少女は現実ではなく理想において愛でるべきものです。Yes,ロリショタ。No,タッチ。ポリシーを貫く彼の生き方には深い感銘を覚えました。
でも、1つ彼に対して不満があるのは、マイナー・オルタマシンの年齢設定の下限を9歳にしたことです。なぜ5歳や6歳や7歳にしなかったのか。第二次性徴に伴う変化が始まる前のつるぺたボディを愛でる魅力が分からなかったのでしょうか。身長110~120センチの少年少女とのSEX描写を読みたかったです。
・・・話をまともな路線に戻しましょう。
3、零號琴
ディレイニーやヴァンス、エリスンなどの往年の作家たちを連想とさせる奇想と異形を、麻薬的な強度を込めた流麗な文体で描き、各種のパロディとネタを満載にして突っ走った、圧巻の傑作です。あまりにも美しく、あまりにも清らかで、あまりにも禍々しい作品であり、この圧倒的な質量はベスト5に入れるしかありませんでした。現時点における作者の最高作品でしょう。
4、文字渦
どこの項に入れるかかなり迷いましたが、やはりSFとして評価するのが適切だと判断し、ここに入れました。ぶっとんだ奇想と紫煙をくゆらせるような妙味が同居しながら超絶技巧が乱れ飛ぶばか騒ぎは、円城塔にしかできない芸当です。小説を書くこと=読むことから跳躍し、言語そのものを解体していく愉楽へと至る、これぞポスト・ヒューマニティの時代にふさわしい現代SFの最先端です。
5、ランドスケープと夏の定理
2018年の和製ハードSFではこの作品がベストだったと思います。壮大な理論や概念を次々に繰り出し、超未来の技術を射程に入れ、物語の最後では世界や宇宙そのものの変容を鮮やかに描き切りました。知的到達で読者の脳を揺さぶる作品ですが、姉と弟とがかけ合いをなす軽快な文体なので、読みづらさはありません。SFだからこそ描きうるスケールの大きな作品であり、ハイレベルなデビュー作です。
【とりあえず2018年総括】
2017年の回顧で、スペキュレイティヴ・フィクションとして見たとき、国内SFの方が海外SFよりハイレベルであるという総括をしましたが、その流れは2018年も変わりませんでした。独自の思弁を展開する新人たちが次々に登場するとともに、ベテラン・中堅どころがそれに刺激されたのか、作風をうまくアップデートしている印象で、運動体としての日本SF全体に強いエネルギーが感じられました。SR・OOO・NMなど、これらポストヒューマン/ポストヒューマニティSFを批評するための理論的背景も整いつつあるので、2019年も知的刺激に富んだ楽しい1年になりそうです。
最大の問題は、私の読書量が少なくて特にSF短編をなかなか追い切れていないことなんですが、ここはめげずに頑張ります。