2018極私的回顧その24 科学ノンフィクション
極私的回顧がようやくオーラス。予定より1カ月遅れとなってしまいました・・・。科学ノンフィクションについては、ジャンル全体を俯瞰するのが難しいため、ベスト5の感想のみにとどめております。また、いつものお断りですが、テキスト作成のために『SFが読みたい』およびamazonほか各種レビューを参照しております。
【マイベスト5】
1、なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか
2、 絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ
絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ
- 作者: M・R・オコナー,大下英津子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: 単行本
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当ブログでは外来種問題を繰り返し取り上げ、外来生物の評価や自然観を改めるべきだという立場を述べています。この手の翻訳書としては4・5冊目になります。外来生物が生態系に与える被害(ロス)よりも、雑種形成などにより長期的に生物多様性に外来生物が貢献すること(ゲイン)の方が大きいとして、ロジカルに議論を進める『なぜわれわれは・・・』。ティモシー・モートンのダーク・エコロジーやハイパーオブジェクトをベースに従来の自然観の転回を試みる『絶滅できない動物たち』。両者とも、外来種が駆除できない以上は現実的な発想に立ち、現実的な対応をしていくべきだという点では共通しています。日本国内でもこの種の議論をもっと取り上げるべきだと思いますが、(在来種保護や外来種駆除をしている方々を貶めるつもりはありませんが)日本では未だ旧来の原理主義的な考えがまかり通っているので、冷静な議論は難しそうですね。
【当ブログの外来生物関連記事】
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在来種という概念など犬に食わせろ - otomeguの定点観測所(再開)
そうはいってもやはり外来種は駆除すべきである - otomeguの定点観測所(再開)
外来種の駆除は不可能でありカネと時間の無駄である - otomeguの定点観測所(再開)
3、実は猫よりすごく賢い鳥の頭脳
鳥の脳には層になった皮質がなく、容積も小さいため、長年、一部の鳥を除いて鳥の知能は高くないとされてきました。しかし、鳥の脳内では哺乳類とは別様に発達した神経核がネットワークを作り、それによって高度な知性や社会性を獲得していることが分かってきたそうです。タコやイカも含め、人間のそれではない知能の発達の様式などいくらでもあるのだということがよく分かります。
4、我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち
我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)
- 作者: 川端裕人,海部陽介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/12/14
- メディア: 新書
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人類史においては、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人やデニソワ人などとの交雑、アフリカ単一起源説が崩れて世界各地で多様な人類が発達していた歴史など、新しい事実が近年次々に明らかになっています。この本では、アジアにおける多様な人類の発達、とりわけ原人についての最新研究が、川端裕人によって分かりやすくまとめられています。最後の章ではあるスリリングな説が示されているのですが、ネタバレを控えますので、ご自分で読んで確かめてください。
5、フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体
筆者はフォッサマグナの専門家ではないそうですが、フォッサマグナについての近年の諸研究が手際よくまとめられていて、入門書として適しています。また、日本列島の成り立ちについて筆者の大胆な仮説が示された箇所もあり、科学的飛躍を楽しむこともできます。記述も平易な肩の凝らない科学ノンフィクションです。