otomeguの定点観測所(再開)

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2019春マラソンまとめ・・・というよりはMGCをdisってみた

 毎度毎度の遅ればせで恐縮ですが、3月のびわ湖、名古屋ウィメンズと終りましたので、まだ海外のロンドンやボストンを残していますが、マラソンの男女日本勢の状態についてひとまずまとめておきたいと思います。

 【新勢力台頭なし!】

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www.lakebiwa-marathon.com

http://www.lakebiwa-marathon.com/pdf/result_74.pdf

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womens-marathon.nagoya

http://womens-marathon.nagoya/news/20190310-1500/pdf/result.pdf

 日本勢の結果だけで見ればともに凡戦、新勢力の台頭はありませんでした。MGCファイナリストが複数名出たじゃないかという話はありますが、今さら2時間10分~12分台、2時間24分~26分台の選手なんか量産したって、オリンピックでは勝負にならないわけです。女子に至っては量産すらできませんでしたし。辛うじて、福士加代子がMGCファイナリストになったというのが、唯一の明るいニュースでしたかね。代表選考の大勢に影響はないと思いますが。

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 これでMGCファイナリストは男子30人・女子14人となりました。

www.mgc42195.jp

www.mgc42195.jp

マラソングランドチャンピオンシップ - Wikipedia

 まだワイルドカードで加わってくる可能性もありますが、この選手たちで9月15日のMGCは行われるわけです。どこまでのレベルのレースになるのかははなはだ疑問ですが。

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 MGCシリーズによって男子を中心にマラソン志向が強まり、選手層は厚くなりました。一方で、女子は選手層の薄さが目立ち、ゼロ年代初頭の水準にすら届かない状況です。競技環境の変化があるとはいえ、どうにも寂しいことです。

全文表示 | 日本女子マラソン低迷の元凶は... 「東京五輪でメダル」への課題 : J-CASTニュース

有森裕子 マラソン女子の低迷脱出のカギは?:有森裕子の「Coolランニング」:日経Gooday(グッデイ)

 また、男子では旭化成のMGCファイナリストが今のところゼロ。駅伝では強くともマラソンでは30キロ手前で旭化成勢が失速するというシーンが今やおなじみとなってしまい、旭化成はすっかり「駅伝屋」になり下がってしまいました。ニューイヤー駅伝3連覇は何の意味もないということですね。エキシビジョンやホームラン競争で勝ったって仕方がないんですから。

MGCに届かなかった旭化成の3人 びわ湖毎日マラソン - 毎日新聞

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 以前から書いているとおり、私は国内の興行優先の論理で決まったMGCには否定的な立場です。WMMの1つである東京マラソンを男女ともに選考会にして一発勝負にすれば済む話で、わざわざ面倒な構造をつくる必要はなかった、と今でも思っています。世界のレースの格付けと国内のレースの格付けがちぐはぐであることがそもそも問題なのです。昔々、オリンピックのマラソン代表は「世界選手権」とされていた福岡での一発勝負でした。それが1988年ソウル五輪で陸連が瀬古を出したいからと後出しジャンケンで複数の選考会を設定し、そこから迷走の歴史が始まりました。それから30年余り、日本マラソン界はいまだに明確な解を作れていません。

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オリンピックの度に繰り返されるマラソンの選考問題。それは1987年福岡国際マラソンから始まった。翌年のソウルオリンピックの一発選考会であったはずの福岡国際マラソンは、その直前、エース瀬古選手の怪我により、突如複数選考会の一つに変更される。さらに、3大会連続代表選出された宗茂選手の引退表明。そんな淀んだ空気を吹き払うようにスタート間もなく中山選手の激走が開始される。5km毎のラップを14分台半ばで刻み、中間点は1時間1分57秒。先日行われた東京マラソンで、中間点付近まで一人アフリカ勢に食らいついた村山選手のチャレンジが話題となったが、この中山選手の中間点の通過記録は、その東京マラソンの記録より約1分早い。29年前、ペースメーカーもまだいない時代に中山選手は東京マラソンの先頭集団よりはるか前方300m以上先を一人激走していたことになる。さらなる驚きは、この中山選手の記録は、2014年にケニアのキメットによって樹立された現在の世界記録2時間2分57秒の中間点の通過記録1時間1分45秒に遅れることわずか12秒。29年前日本人選手の独走により打ち立てられたこの記録は正に驚愕に値する。如何に日本マラソンが強かったのかを物語る具体的データだ。桁外れの世界記録間違い無しと思った途端、ふり続ける冷たい雨が、無情にも豪雨に変わっていく。。。
残念ながら記録達成は成らなかったとは言え見事な優勝。レース後、インタビューに答える中山選手の言葉には、混迷を極める選考会に対する選手としてストレートな気持ちが溢れている。29年前に発せられたこのピュアなランナーに対する言葉に対し、日本陸連は未だ明快な答えを返す事が出来ない状況が続いている。

You Tubeの映像紹介を引用)

 

 国内の論理でしか考えていないから、こんな齟齬も発生します。ランキング制導入の際、参加標準記録が厳しくなることも予想されていたはずです。何をいまさら。それに心配するなら、男子のトラック長距離も心配しなさいよ。このままだと、地元の東京五輪で男子トラック長距離は出場選手が塩尻だけになりますよ。

number.bunshun.jp

 

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 4月7日のロッテルダムラソンでは、男子でマリウス・キプセレム(ケニア)が大会新記録の2時間4分11秒で優勝、2位に入ったトルコのオズビレンも日本記録を上回る2時間5分27秒でした。一方、日本勢の女子の田中・大森はともに振るわず、MGCの権利獲得にすら至りませんでした。この後、ボストンマラソンロンドンマラソンが終われば、現在の世界の勢力図が明らかになりますが、結局日本は蚊帳の外になってしまいそうですね。