2019SFセミナーレポートその5 ゆうきまさみインタビュー
SFセミナーレポート第5弾は、本会及び合宿企画の「ゆうきまさみインタビュー」です。聞き手は林哲矢氏でした。
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SFファン的にはゆうきまさみ作品といえば『あ~る』『パト』『バーディー』ということになるのでしょうが、極私的にゆうき作品で一番好きなのは『じゃじゃグル』です。ま、この辺の話はあとにするとして、まずは本会の流れをまとめてしまいましょう。
ゆうきまさみのSF初体験は、振り返ってみると『鉄人28号』や『鉄腕アトム』だったとのことです。後にSFとのかかわりは深くなりますが、小さい頃にジャンルSFを意識したことはなかったそうです。一番好きな漫画家は横山光輝だったとのことです。一応、横山作品にもSFはありますが。
どちらかといえば理屈っぽいSFは苦手で、作品には絵から入るタイプだったそうです。でも、作品には1つこの世ならざるものが入っているものが良くて、それが現在の創作にも引き継がれているとのことです。7つ年上のいとこの大学ノートの漫画に影響を受けていて、その中にSFが多かったそうです。
1978年末、友達の新谷かおるFCの新年会に行って、そこで同人漫画を手伝うようになったのが、漫画を本格的に始めたきっかけだそうです。その後、江古田にあったまんが画廊の知り合いに声をかけられて、《月刊OUT》へ。そしてそのままデビューすることになったそうです。
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1982年、会社員をやめて専業作家になりました。マンガを描いていることが会社にばれて、会社を選ぶかマンガを選ぶか迫られて、1回目は会社をとったそうですが、2回目で踏ん切りをつけてマンガ一本にしたそうです。《アニメック》からオリジナルを描かないかという誘いがあり、それが専業への呼び水になったとのことです。とり・みきと原田知世がらみで盛り上がっていたというエピソードも語られていましたが、本筋とは関係なさそうなので、というか極私的にあんまり興味がないので、申し訳ないですが割愛します。
その後、パラレル・クリエーションに《サンデー》の編集者が出入りしていたために小学館との縁ができ、いよいよ『あ~る』連載へと入っていきます。
SFファン的にはここからが本題ですね。まずは『あ~る』からいきます。
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1984年に『あ~る』が開始されましたが、どうやって『あ~る』という作品ができたのかは思い出せないとのことでした。友人の板橋高校の人間をポンコツのアンドロイドにしたことは覚えていたそうですが。昨年、10巻が出て話題になりましたが、『あ~る』30周年の時に企画ものの読み切りを描いたものなど、何本か短編がたまったので、描き足して単行本にしたそうです。2020年に『あ~る』の続きを描こうと思っているそうなので、期待しながら待ちましょう。
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実は、『あ~る』より早い時期に『パト』は企画されていたそうです。まんが画廊に集まっていたクリエイターたちがアニメ企画的なものを出し合う「企画ごっこ」なるものがあったそうで、その発展から『パト』が生まれたそうです。最初は地球が舞台ではなかったんですが、そのうち舞台が東京になりました。1982年ごろ、出渕裕が企画をサンライズに持っていったのですが、しばらく塩漬けにされたとのことです。それを1986年に立て直し、ようやく企画が動き出したそうです。この辺りの経緯はwikipediaなどにもいろいろ出ています。『パト』がお蔵入りになっていたかもしれないと思うと、ひやひやしますね。
皆様ご存知の通り『パト』はメディアミックスの先駆的存在であり、アニメとコミックが互いに独立しつつ補完し合っています。出版社同士の関係などもあり、ゆうきまさみ原作と銘打ってしまうと、《アニメージュ》などでの紹介が2ページに制限されてしまうため、PRに限界が出てしまうとのことです。そのため、企画そのものを原作であるとし、原作に出版社やその絡みを入れないという判断をしたそうです。
アニメージュ編集部 (@animage_tokuma) | Twitter
さて、皆様ご存知の通り、『パト』のアニメとコミックの大きな違いの1つが、イングラム2号機のバックアップであるこの2人です。
コミックで香貫花・クランシーではなく熊耳 武緒が2号機のバックアップになったのは、ゆうきまさみが香貫花のキャラクターをうまくつかめなかったからだそうです。入れ替え委員長と称されていましたが、なんだかなあ。後半になって香貫花のキャラがつかめるようになったので、コミックにも登場させたとのことです。才媛2人のやりとりは面白いから、まあいいっちゃあいいんですが。
とにかくコミック版はアニメに負けないように描こうという、強い矜持があったそうです。最初はコミックもOVAに併せたストーリーで描いていましたが、途中から独自展開に持っていきました。横山光輝のストーリーの作り方のように、途中から『パト』の話をうまく転がせるようになったとのことです。
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『バーディー』では、最初の設定でラスボスを何にするかは決めていなかったそうです。まじか・・・。ゆうきまさみの場合、設定については割と大まかにしか決めずに描き出すことが多いそうで、ストーリーが進むうちに設定が追加されたり変わったりすることがよくあるそうです。そういえば、『パト』の熊耳さんも最初はキャラが固まっていなかったといわれていますね。
21世紀に入ってからのアニメ『DECODE』及びコミック『EVOLUTUON』は、21世紀に合わせる形でリブートした作品にしたそうです。物語の進行年次を調えるという意味もあったそうですが、初めて読み始める人を意識して、リニューアルすることで新しい読者が入りやすくしたのだそうです。一見さんお断りで突っ走る作品もありますが、新規読者への配慮を欠かさないのは、ゆうきまさみの粋なところなのでしょう。ちなみに、中杉 小夜香は原作者権限でアニメから引っ張ってきたそうです。
現在進行中の『新九郎、奔る!』は、2015・16年ごろに構想を固めたそうで、北条早雲が描きたくて始めたそうです。連載が始まってから応仁の乱ブームが来たので、ラッキーだったとのことでした。
夜の合宿企画には、残念ながら仕事の関係でご本人はいらっしゃらなかったんですが、1980年代前半のサンデー系を中心に、かなり濃厚なオタク話が展開されました。SFセミナー参加者はみんな業が深いということがよく分かりますね。
さて、ここまでSF話を展開しておいて恐縮ですが、極私的にゆうきまさみ作品で一番好きなのは『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』です。
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駿平とひびきの成長物語という人間ドラマについて、少年誌では珍しく2人の恋愛を結婚や妊娠までしっかり描き切ったのも素晴らしいですが、極私的には人間ではなくて競走馬、ストライクイーグルがお気に入りです。ズブさや不器用さが当時好きだったマヤノトップガンと重なり、大いに感情移入しました。