otomeguの定点観測所(再開)

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『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編』短評

 6月に入って、多忙やら体調不良やらが続いたため、すっかり更新が滞ってしまいました。約1か月ぶりの更新ですね。なまけまくりの場末ブログですが、飽かずお付き合いいただければ幸いです。

 〈ユーフォ〉最終楽章の短評に参りましょう。アンフェアなレビューですが盛大なネタバレを含んでおりますので、未読の方、そしてアニメを楽しみにしている方は十分にご注意ください。

 【見事、大団円。しかし、小説単体としては・・・】 

 「京都府立北宇治高校吹奏楽部。ゴールド金賞!」

 これだけ記せば、ずっと〈ユーフォ〉を追いかけてきたファンにとっては、深い感慨が湧き上がることでしょう。久美子たちがついに大目標を達成しました。昨年、関西で敗退してたどり着けなかったゴールを、走りぬいて、走りぬいて、そしてつかみ取りました。全国大会の演奏の素晴らしさと久美子たちの集中そしてテンションは、削り込まれた音楽描写から美しく伝わってきました。3年間の全てが報われた、感動的なハッピーエンド。日本のアニメ及びライトノベル史上に残る青春シリーズの華やかな大団円に、祝杯を挙げたいと思います。作者・武田綾乃の成長とともにしなやかに伸びてきた小説〈ユーフォ〉。シリーズ当初はアニメの補完的な出来に過ぎなかったものが、小説単体として見応えのある物語になりました。物語を鮮やかに着地させた作者の力量の高まりも、〈ユーフォ〉を追い続けた身としては嬉しく感じるところです。

 大筋としては。

 以下、コメントのスタンスが変わります。

 この巻に限ると、心情描写の不足や伏線の未回収などが目につき、小説としては散漫な出来になってしまいました。特に、amazonのレビューにもありましたが、真由と麗奈の扱いを粗雑にした結果、青春小説としての瑞々しさがかなり削がれてしまいました。キャラが多く、全てを補完するには紙幅が上下巻では足りなかったというところでしょう。言い訳にはなりませんが。ファンとしてはアニメまたは外伝で補完されるのを待てばよいのですが、小説単体としての評価を下げざるを得ないのが残念です。

 結局、アニメあっての〈ユーフォ〉という力学は最後まで変わりませんでしたね。

 

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