otomeguの定点観測所(再開)

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ウイロイド

 久しぶりのサイエンス・生物系のテキストですね。今回は「ウイルス」ならぬ「ウイロイド」について書いてみたいと思います。

  ウイルスといえば、インフルエンザウイルスやタバコモザイクウイルスなどがよく知られています。

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インフルエンザとは

インフルエンザウイルス - Wikipedia

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タバコモザイクウイルス - Wikipedia

 ウイルスは細胞など他の生物体に取りつかないと増殖できず、自立した自己増殖ができない生物体なので、定義上は生物の定義から外されていることが多いです。しかし、極私的にはウイルスも生物の範疇に含めるべきだと思います。また、ウイルスの中には巨大ウイルスをはじめ複数のドメインが存在しており、現在定義されているウイルスというカテゴリーは多系統の寄せ集めなのではないかと思います。あくまで素人考えですが。

パンドラウイルス属 - Wikipedia

https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/60/Snet60-column.pdf

巨大ウイルスが明らかにした、生命と進化の知られざるからくり(武村 政春) | ブルーバックス | 講談社(1/2)

巨大ウイルスが明らかにした、生命と進化の知られざるからくり(武村 政春) | ブルーバックス | 講談社(2/2)

111.巨大ウイルスは自分の遺伝子を創り出す | 一般社団法人 予防衛生協会

 上記リンクにもあるように、かつては病原体や厄介者としてくくられていたウイルスが、現在は地球生態系になくてはならない存在としてその役割が理解され、大分研究のスタンスも変わっています。地球上にはありとあらゆるところに無数のウイルスが存在しており、まだそのほとんどが未発見・未解明だというのが現状です。

 さて、現在ウイルスとされている一群の中で、最小の病原体と言われているのがウイロイドと呼ばれるグループです。1971年、ジャガイモやせいもウイロイドが発見され、初めて明らかになったグループだそうです。

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ジャガイモがまるでショウガに? 不思議な病原体「ウイロイド」の正体 - ログミーBiz

ジャガイモやせいもウイロイド - Wikipedia

セオドール・ディーナー - Wikipedia

 通常のウイルスは、DNAやRNAがタンパク質などの殻に包まれている構造です。しかし、ウイロイドは殻を持たず、RNAがむき出しの状態で飛び回っている生物体です。また、ゲノム上にタンパク質をコードすることもないそうで、一般的に知られているウイルスとはかなり特異な形状や機能をしているようです。今のところ、ウイルスとは異なるサブウイルス病原という位置づけだそうですが、恐らくウイルスとは別のドメインに属する生物体というべきでしょう。今のところ、ウイロイドは種子植物に取りつく種類しか見つかっておらず、動物からの発見例はないそうです。極私的には、動物にも取りついているけれど見つかっていないだけのような気がしますが。ジャガイモやせいもウイロイドをはじめ、病原と称されるものが多いですが、実はウイロイドが病気を発症させる例は少なく、当たり障りなく宿主に寄生するのが彼らの生存戦略のようです。

ウイロイド - Wikipedia

ウイロイド

http://jsv.umin.jp/journal/v60-2pdf/virus60-2_177-186.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/54/3/54_170/_pdf

http://www.jppa.or.jp/shiryokan/pdf/68_12_21.pdf

 また、ウイロイドは生命の起源に深くかかわる存在ではないかとも言われています。生命の起源についての仮説は、RNAからなる自己複製系が先に確立して生物へと進化したというRNAワールド仮説と、アミノ酸たんぱく質などの有機物が触媒となり生命が生まれたというプロテインワールド仮説に、大きく分かれます。そして、近年、プロテインワールド仮説を支持する実験結果が多く得られているそうです。しかし、タンパク質の殻なしで平然と飛び回り・増殖し・進化するウイロイドの存在は、RNAワールド仮説を支持するものであり、ウイロイドはRNAワールドの生き残りではないかという説もあるようです。極私的には、是非ウイロイドとRNAワールドが連環してほしいところです。

生命の起源 - Wikipedia

RNAワールド - Wikipedia

https://www.kuba.jp/syoseki/PDF/3265.pdf

ウイルスから学ぶ太古生命体のRNAワールド | ニュースルーム | KEK

生命の起源 RNAワールド以前の世界 | 日経サイエンス

Viva Origino No. 37, 2009

 これまたあくまで素人考えですが、RNAワールドにせよプロテインワールドにせよ、どちらが先に生じたというものではなく、両者を含む同時多発的な無数の相互作用の中から生命が生じたと考えるのが自然である気がします。ウイロイドにしても、RNAワールドの生き残りかもしれませんが、ウイルスであった生物体がタンパク質の殻を脱ぎ捨ててウイロイド化した可能性も考えられるでしょうし。いずれにせよ、ウイロイドたちが生命の起源へと迫る興味深い存在であることは変わらないでしょう。

 もし太陽系内で地球外生命が発見されるとしたら、細胞を持った生物ではなく、ウイルスやウイロイドのようなごくシンプルな構造を有した生物体群かもしれませんね。

エンケラドゥス (衛星) - Wikipedia

エウロパ (衛星) - Wikipedia

ガニメデ (衛星) - Wikipedia