otomeguの定点観測所(再開)

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MGC⇒あえて否定的に評価してみる

 既報の通りで毎度の遅ればせですが、MGCが行われ、男女ともに五輪代表3名の内2名が内定しました。マスコミでもSNSでもWEB上にはプラスのコメントが溢れているようですが、ここは敢えて否定的な側面からテキストを起こしてみたいと思います。

 こんなことになるかもしれないと思った。だからMGC開催には反対だったんです。

 

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 まず、改めて私の見解を述べておきます。MGCは不要です。国内選手だけを寄せ集めた低レベルな選考レースを開催する意味はありません。世界6大レースの一角である東京マラソンがあるのですから、男女ともに東京マラソンでの一発勝負にすれば済むだけの話です。MGCは一発勝負を謳いながら、3番手の選手を宙づりにするという、これまでの生殺しと変わらない既得レースへの忖度が残っています。国内の複数レースの利害関係に忖度した一連のMGCの狂騒の結果、特に男子は長距離の競技基盤が根底から崩れ去りました。このつけは東京五輪の後にたっぷりと出てくることになるはずです。

 では、男女のレースを振り返ってみたいと思います。

 

【男子⇒日本人1位を巡って争った凡戦】

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 敢えて言います。退屈なレースでした。国内の男子マラソンで見られるいつもの風景。アフリカ勢が飛び出し、日本人選手がトップ争いに加わらず日本人1位を巡ってけん制し合う退屈な展開。今回、飛び出した設楽がペースダウンして後ろの集団に吸収されたため、結果として戦闘争いが熾烈を極めたように見えますが、要するに、けん制し合ってスローペースで進み最後にヨーイドンでスパートをかけるという、国内レベルでしか通用しないレース展開を見せられたに過ぎません。こんなもののために2年間もばか騒ぎにつきあってきたのかと思うと、落胆の念しかありません。3年前の東京マラソンを彷彿とさせるような凡戦でした。

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 レースを退屈なものとした戦犯はやはり設楽と大迫でしょう。本来ならレースの中心となるべき2人のエース(だったはずの選手)は、ともに無様な姿をさらしました。

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 設楽のレースには同情や共感の声も多いようですが、これはただの無謀な失敗です。大逃げ宣言をしておきながら、結果が求められる最重要レースで失速したんですから、もっと糾弾されるべきです。しかも、チャレンジが許される20代前半の若手ならともかく、設楽は結果が求められるべきエース級のランナーです。ツインターボとは立場が違います。あれだけビッグマウスをしておいて30キロもたないの? と、観ていて思ってしまいました。

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 そして、大迫。

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 本来ならここで勝って強さを示さなければいけなかったはずのエースは、レースの主導権を握ることなく、ほとんど見せ場なく3位という中途半端な順位に終わりました。本人は力負けと言っていますが、スローペースに巻き込まれて乱戦になってしまったという、作戦及び判断のミスでしょう。どうせなら設楽のハイペースについていけばよかった気がします。そうすれば、設楽失速の後、大迫の独走になって、悠々と優勝できたのではないでしょうか。国内の実業団選手のスローペースの中に埋没する姿を観ながら、何のためのプロランナーなの? 何をしにオレゴンに行ったの? と思ってしまいました。大迫は2017年に世界陸上のトラック代表になれず、失態を犯しましたが、ここ一番に弱さのあるランナーという印象になってしまいました。正直、大迫に対する評価は下げざるを得ないと思います。

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 この後、3位で福岡・東京・びわ湖の結果を待つことになりますが、どうなりますやら。一発勝負を謳いながら、既存のレースに忖度する曖昧さ。やはりMGCの意義には疑問があります。

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 結局、優勝したのは伏兵といわれた中村で、4強の一角・服部が2位を確保して、ここまでが東京五輪代表内定となりました。中村はほとんど下馬評に上がっていなかったので、驚きの声も多かったようですが、キプチョゲが世界記録を出した昨年のベルリンマラソンで4位に入っている選手です。このとき、唯一ましなレースをした日本人選手だったんですが、やはり力はあったということですね。

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 とはいえ、瀬古御大は本番で日本選手が通用すると息巻いていますが、果たしてどこまでいけるものやら。

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 東京五輪にはこの怪物も出てくるはずですからねえ。

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【女子⇒前田が見せたわずかな光明】

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 わずか10人でのレースとなった女子は、案の定、選手が早い段階でばらけて単独走になるという、アジア大会などの少人数レースでよくみられる展開になりました。スローペースに堕した男子に対し、女子では前田がただ一人、最後までハイペースを維持して、夏マラソンとしてはかなりの好タイムでゴールしました。テレビの中継では五輪本番でも通用する走りだと叫ばれていましたが、うーん、どうですかね。高橋尚子は昔、もっときつい条件下で衝撃的な走りをしていたはずですが。

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 五輪本番でメダル争いをするなら、今回のMGCの条件下でも前田の自己ベストを出していかないときついと思います。サブ20の選手たちとはまだ数段の壁のある状態でしょう。

 しかし、それでも、けん制し合った男子に比べて、チャレンジをして押し切った前田の好走は、退屈だった今回のMGCにおいてただ一つの光明でした。五輪本番に向けて、数少ない期待の材料でしょう。

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 2位・鈴木亜由子、3位・小原怜は、このレースだけで見てしまうと、本番で入賞争いできるレベルではありませんね。特に鈴木は何をやっていたのか。トラックや駅伝の実績を考えれば、ハイペースに乗るレースが求められる選手のはずです。五輪代表内定こそ勝ち取りましたが、前田についていって競り合う姿が見たかったです。

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 期待外れに終わったのが松田瑞生ですね。序盤のハイペースに遅れ出し、わずか1.5キロで脱落、なすすべなく消えました。私は彼女が本命だと思っていましたし、ついていけないペースではなかったと思うので、消極的なレースになってしまったのが残念でした。きちんとペースに乗っかれば2位以内には入っていたのではないでしょうか。男子の大迫同様、作戦ミス・判断ミスというところでしょう。今後の選考会で巻き返してほしいところですが、メンタルの立て直しがうまくいくかどうかでしょうね。

 幸い、選考会があと3レース残っています。大阪あたりで2時間20分・21分あたりで勝つ新星が出てきて代表の座を奪い取っていくことを祈るのみです。