otomeguの定点観測所(再開)

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2019極私的回顧その4 サッカー日本代表(女子)

 極私的回顧第4弾はなでしこジャパンの総括にいきます。2018年、復活の兆しが見えたかに思えたなでしこでしたが、2019年はその希望が見事に打ち砕かれた1年でした。

 【結果だけが良かったEAFF 女子E-1サッカー選手権】

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 まずは昨日のこいつからですね。既報の通り、なでしこはEAFF 女子E-1サッカー選手権で韓国を破り、見事優勝を飾りました。高倉なでしこはアジアには強いですよねー。来年の東京五輪に向けて、結果だけ見ると大したものですが、内容的には岩淵・長谷川不在でろくに機能しなかった攻撃陣など、惨敗したW杯からの前進は特に見られず、収穫のほとんどなかった大会であるような気がします。

 2019年は女子サッカーの世界的な地勢が大きく変わった1年だったと思います(予測されたことであったはずですが)。2015W杯では日本・オーストラリア・中国とアジア勢は3チームがベスト8に残りましたが、2019W杯ではアジアは1チームもベスト8に残れず、欧州勢の台頭を許しました。そもそも女子サッカーにポゼッションを持ち込んでシステムの進化・変化を促したのはなでしこです。しかし、欧州勢が着々と組織力や技術力を強化する中、なでしこは2011年以来のパスサッカーをマイナーチェンジするのみで、新しい試みをしてきませんでした。男子同様、ガラパゴス化の厳しい現実を突きつけられたということです。

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 W杯で観た限り、オランダもイングランド組織力では日本より上でした。そして、日本のウィークポイントははっきりしていて、ボランチにプレスを仕掛けて日本のパスをカットし、手数をかけずにカウンターに行くというやり方を各国ともとってきていました。かつてのなでしこであれば、攻撃の緩急をつけたり、大きな展開を試みたりと、相手に応じて戦い方を変える柔軟さがあったのですが、現在のなでしこはショートパスをつなぐいわゆる「日本のサッカー」「自分たちのサッカー」を行うのみで、打開力を失っていました。進歩した欧州と劣化した日本、そして戦術的な劣勢を直視しない日本という男子同様の構図は明らかでした。なでしこにもジャパンズウェイという空想の呪縛がかかり、泥臭いDNAは失われてしまったようです。

 それでもなお、オランダ戦は内容的に勝てない試合ではなかったと思いますし、もしオランダに勝っていれば、準々決勝のイタリア、準決勝のスウェーデンともにやはり勝てない相手ではなかったと思うので、決勝進出の可能性もあったチームでした。しかし、チームのピーキング、代表選手の選考、W杯本番の采配など、高倉がいくつもミスを犯し、チームのポテンシャルを引き出しきれなかった。そんな総括が正しいのではないでしょうか。本来、なでしこに課せられるノルマはベスト4、甘くてもベスト8が妥当のはずです。ベスト16という結果はとても満足できるものではないはずです。

 しかし、森保同様、高倉にも協会は甘い評価を下しました。内輪の論理でなでしこがどんどん劣化していく・・・。

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 なでしこジャパンはW杯優勝経験国、そして列強の一角として世界からリスペクトされる存在でした。しかし、2019年、自らその地位を投げ捨てました。2020年の東京五輪は開催国でもあり、これまでの実績を考えればメダル獲得がノルマになるはずです。2019年の屈辱を覆し、再び列強としての地位を取り戻すことができるのか。明るい材料が見えてこないまま、2019年は終わろうとしています。 

21年に女子プロリーグ誕生「なでしこ」と別に新設 - サッカー : 日刊スポーツ

 ようやくプロリーグ具体化の話も出てきましたが、東京五輪の結果次第ではこちらも頓挫しかねませんね。可能性は限りなく低いですが、来年、強いなでしこが帰ってくることを切に祈るのみです。