本日のレビューは5月に発売された時代小説になります。
昨年発売された『介錯人』に続くシリーズ第2弾の連作短編集です。介錯人とは武士が割腹するときに斬首を行う仕事で、お家の事情で外に出せない難渋を抱えた様々な武家から依頼が入ります。しかし、壮絶な仕事にもかかわらず「首斬人」と蔑まれる理不尽さを抱え、苦悩の中で仕事に精を出す主人公・別所龍玄。
斬るものと斬られるもののドラマが錯綜しており、1巻よりも読み応えが増した感が強いです。周囲から蔑まれながらも自らの仕事に強い矜持を持ち、剣の腕も確かな龍玄。彼の仕事にかける情念が行間から立ち昇ってくるようで、実に気迫みなぎる作品です。その一方で、人の生き死ににかかわる愛憎や憐憫なども乱れ飛び、人の情がど真ん中に据えられた時代小説の傑作です。
爽やかな表紙のデザインが壮絶な小説の中身と好対照をなしているのもいいですね。