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井村君江HAPPY Birthday お祝い企画 【NLQオンラインセッション #08】 妖精の輪の中で――井村君江とお茶を 雑駁な感想

 3月1日はかの井村君江先生のお誕生日で、《ナイトランド・クォータリー》が主催した誕生日のお祝いのZoom配信企画がありました。僭越ながら私も末席からちょこんと見ておりましたので、雑駁ですが感想をまとめたいと思います。

 井村君江 - Wikipedia

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・・・とりあえずこんなもんで。

 

 かなり昔、宇都宮に行ったとき、何かのトークイベントで遠くから井村先生のお顔を拝見したことはあるのですが、Zoom越しながらお目にかかるのは初めてでした。プロの面々の中で一読者の私がしゃしゃり出るのも僭越なので、少しお声かけしただけであとは聞き役に徹しました。根性がなくてすみません。

 お誕生日のお祝いなので、基本的には内輪の和気あいあいとしたノリ。にこやかにお話しになる井村さんはとてもお元気そうでした。今年以降、とりあえず出版予定の本が7冊。さらに《ナイトランド・クォータリー》(以下《NLQ》)のコラムが40本ネタが予定されていて既に20本書き上げているとか、未だパワフルな仕事ぶり。御年89歳ですが、妖精の女王としてまだまだ軌跡=奇跡を積み重ねていかれるようです。

 では、イベントで出てきた極私的に気になる情報について、いくつか触れておきます。

 

【『シルヴィとブルーノ』の井村訳が進行中!?】 

シルヴィーとブルーノ - Wikipedia

 聞いていて最もテンションが上がったのがこの話です。アトリエサードから出版する予定だそうですが、井村訳の美しい日本語で幻の物語を読める日が来るとは。出版されること自体が日本の幻想文学・ファンタジーにおける一大事件です。ルイス・キャロルの作品でありながら、「アリス」「スナーク狩り」に比べて日本ではほとんど知られていない作品です。私も一応原文で読んでいますが、作品としての価値は「アリス」「スナーク」に比べて劣るものではないので、不当な不遇であったといえるでしょう。今まで完全な訳が存在しなかったそうなので、井村訳が完成すれば、ルイス・キャロルの翻訳がようやく出そろうことになります。

 

【コティングリー妖精事件の書籍関連】

コティングリー妖精事件 - Wikipedia

 妖精といえばこれは外せない事件ですね。フランシスとエルシーがいたずらを仕掛け(??)、コナン・ドイルが騙されてから(??)、2020年でちょうど100年。科学的に見てしまえば稚拙な捏造写真であり、心霊主義にかぶれたコナン・ドイルの証言は信用できないということになります。しかし、オカルト・妖精学的には誤った言説が流布しており、正しいことが語られておらず、学術的に詰めていくべき箇所がまだまだあるのだそうです。私はコティングリーについて言及・断定できるほど詳しくないので、安易な判断は避けますが。

 関連の書籍が複数の出版社から予定されており、まだ語られていない新しい事柄も盛り込まれるとのことなので、楽しみですね。

 

 妖怪や妖精は存在するのか、しないのか。井村先生はイギリスにいると妖精の気配を感じるとおっしゃっていました。水木しげるもイギリスで妖精の気配を感じていたそうで、鬼太郎は妖怪だけど妖精に非常に近い妖怪なのだとか。また、妖精という語に関しても、fairy=妖精なのではなく、明治以来、fairyに対しては「仙女」など様々な訳語があてられており、画一的に考えるべきではないということもおっしゃっていました。

 私はオカルトに対してどうしても安易に科学的アプローチで迫り、否定的なスタンスで臨む人間ですが、妖精の女王を前にしてその認識が崩れていくのを感じました。短い時間でしたが、非常に楽しい経験となりました。

 

 この後、《NLQ》では井村先生によるZoomセッションが引き続き予定されているとのこと。仕事があるのでどこまで参加できるか分かりませんが、引き続き楽しみにしております。