2020極私的回顧その25 アート(地方芸術祭まとめ→1つだけですが・・・)
極私的回顧第25弾はアートです。例年、地方芸術祭のゆるい感想をまとめているのですが、2020年はコロナの影響で多くが開催延期になり、私もさすがに遠出できませんでしたので、ほとんど足を運べませんでした。とりあえず近傍の1つだけを記しておきます。
2019極私的回顧その25 アート - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)
2018極私的回顧その17 アート(地方芸術祭まとめ) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)
2017年極私的回顧その17 アート(芸術祭まとめ) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)
2016極私的回顧その17 アート - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)
【さいたま国際芸術祭2020】
さいたま国際芸術祭2020 (art-sightama.jp)
さいたま国際芸術祭2020さん (@artsightama) / Twitter
上のリンクの2016の回顧でコメントしていますが、前回のさいたまトリエンナーレにおいては地元との一体化に失敗し、余計な経済効果を期待するなど散々だったさいたまの芸術祭。4年の時間を経て、コロナのため開催は半年延びましたが、今回は前回の失敗を生かして、余計な政治的干渉が入ることなく、地域に立脚した地方芸術祭らしい催しになったと思います。一部の作品は展示中止になるなど苦難もあったようですが、同に開催にこぎつけました。遅ればせですが、関係の皆様のご苦労に御礼申し上げます。
まず、見どころだったのは、各所に散種された最果タヒのテキストでしょう。彼女の師はやはり空間芸術そして空間そのものとやはり親和性が高いですね。特に、メインサイトである旧大宮区役所へと至る、大宮駅前から通じる地下通路に記された彼女のテキストの断片群。道路用の白い塗料で記されたテキストが文字通り道路標識のように観客を導き、芸術祭の物語空間への自然な導入になっていました。
虫のように、鳥のように。橋本麻里が見た「さいたま国際芸術祭2020」|美術手帖
大宮駅近くの路地裏に、詩を書きました。デザインは佐々木俊さん。さいたま国際芸術祭の作品なのですが、コロナで開催が延期になり、春から謎の路地裏ポエムとして時々話題になってましたが……わたしです……お騒がせしました…… pic.twitter.com/5vZjS1kx62
— 最果タヒ(Tahi Saihate) (@tt_ss) 2020年6月25日
メインテーマは「花」でしたが、メインサイトである旧大宮区役所の展示はartscapeのレビューにもあったように、「花」というよりは「廃墟」。かつて大勢の人間が行きかっていた空間の存在だけが残る静謐。そこに砂山やドラムセットなどの展示が建物との境界が曖昧な様態で展示されていて、なんともシュールな印象を受けました。コロナの影響で観客もあまりいなかっただけに、はかなさの際立つ演出でしたね。
一方、旧大宮図書館で開催されたアネックスサイトの展示で印象に残ったのはカニエ・ナハの展示でした。物語空間への自然な導入となっていた最果タヒのテキストとは対照的に、建物の設備、机やいす、傷や汚れなどに言葉を付与することで違和的な価値(??)を与え、観るものをうまく惹きつける。空間・時間軸の彼方に追いやられていた事物たちが言葉の力で現在に引き戻される、お手軽なタイムリープ。爽快感の伴う展示だったと思います。
前回の2016年に比べると華やかな演出はなく、コロナの影響で期間が1か月に短縮されてしまいました。しかし、その分、地元との一体感が醸成され、コンパクトにまとまった、地方芸術祭としてとてもいいイベントになっていたと思います。閉幕後も映像やトークなどの発信が行われているので、そちらに注目するのも一興でしょう。
2021年も引き続きコロナで行動が制限されている状況ですが、何とか1つでも多く地方に足を運べるようになってほしいと思います。今の無為な政治の状況を見ているととても期待はできないのですが・・・。