otomeguの定点観測所(再開)

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科博「大地のハンター展」感想

 毎度毎度の遅ればせですが、上野の国立科学博物館で開催されている「大地のハンター展」に行ってきました。久しぶりの特別展、非常に楽しかったです。コロナの中、開催にこぎつけてくださった関係の皆様にまず感謝を申し上げます。

 【関連リンク】

特別展「大地のハンター展 ―陸の上にも4億年―」2021年3月9日(火)〜6月13日(日)|国立科学博物館(東京・上野公園) (exhn.jp)

【公式】大地のハンター展さん (@huntersonland) / Twitter

国立科学博物館の「大地のハンター展」が、なんだかいろいろ面白いらしい。 - Togetter

【以前の当ブログの特別展の感想】

上野国立科学博物館 恐竜博2019感想 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

科博「大哺乳類展2」感想 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

科博『昆虫』展感想 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

上野国立科学博物館 特別展「マリモの謎」感想 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

上野国立科学博物館 特別展「深海2017」感想 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 ・・・とりあえずこんなもんで。

 上のTogetterでもまとめられていますが、展示の圧がすごいです。哺乳類、爬虫類、鳥類のハンターたち、危険なので普段はなかなか近くでお目にかかれない生物の剥製や標本がずらり。捕食中の姿を再現したものも多く、説明のコラムも充実していて、生物好きとしては久しぶりに渇きを満たされた1日になりました。やはり特別展は違いますね。足を運んだのが春休み中だったので、子供連れの家族が多かったです。子供たちのはしゃぎようを見ていると、やっぱり動物は子供との親和性が高いと感じました。

 レストランも再開していますが、10時半オープンで11時を回ったころにはもう行列ができていたので、やはり、科博に行く場合、お昼は早めのほうがいいですね。なかなか確保するのが難しいですが、ベストはガラス張りの展示室近くの席でしょう。新しく吊り下げられたマッコウクジラの裏側がよく見えます。幸い、この日はクジラの見える席に座れたので、マッコウクジラの骨格とメロンを肴に昼からワインをいただきました。

レストラン・ムーセイオン 国立科学博物館店|上野精養軒【公式】 (seiyoken.co.jp)

 

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 ・・・本題に戻りましょう。

 見どころはいくらでもあるのですが、極私的に気になったものについて、以下、雑駁にまとめていきます。

 

モグラ型の収斂進化

研究と標本・資料 ≫ 研究者紹介 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo (kahaku.go.jp)

私の研究-国立科学博物館の研究者紹介- (kahaku.go.jp)

研究室に行ってみた。国立科学博物館 哺乳類分類学 川田伸一郎 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)

川田伸一郎 - Wikipedia

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  断言します。今回の特別展で最も充実していたのはモグラの展示です。他の捕食者と比べるとマイナーで、身近な生き物のはずでありながら、たぶん人気もそんなにない動物たち。でも実は個性豊かな連中。今回もモグラに割かれたスペースは小さいものでした。しかし、注目はこちらのリンクでも述べられているように、剝製や標本の大きさとかビジュアルとかではなく、標本ラベルです。

【感想】特別展「大地のハンター展」に行ってきたよ | 初心者備忘録 (ka-net.org)

 標本ラベルとは、その動物をいつ・どこで誰が採集したかを示す貴重な情報。いわば標本の名刺です。採集されたモグラの生息域や環境が推測できますし、どのような調査が行われたのかについて思いを馳せることもできます。

 モグラたちは半地中性のものから地中性のもの、水中に進出したものまでさまざまなものが集められており、実はモグラが多様な環境に適応している動物であることがよく分かる展示になっています。また、世界各地のモグラが配されており、アジアと北米でそれぞれ独自の進化を遂げたモグラの比較もできます。

 そして、極私的に最も嬉しかったのは、有胎盤類であるモグラたちの隣に、さりげなくこいつの標本が置かれていたことです。

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フクロモグラ - Wikipedia

 以前、「大哺乳類展2」で有袋類の扱いが良くない! と極私的に理不尽な怒りを抱いたことは上記リンクにも記しておりますが。有胎盤類と同様の収斂深化を遂げ、地中生活に適応した、有袋類のこいつもいないと画竜点睛を欠きます(??)。オーストラリアは乾燥した大地のためほとんどミミズがいないので、主食はアリやシロアリだそうです。日本ではなかなか目にする機会のない標本ですし、充実したモグラの展示と併せて比較する機会は非常に貴重だと思います。

 できればアフリカ獣類であるキンモグラも並べられていると最高だったのですが、やはり難しいか。

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Golden mole - Wikipedia

 

【多彩多様なるクモ】

大地のハンター展 〜陸の上にも4億年〜❷(国立科学博物館) | ダンス徒然草 〜千葉・社交ダンス教室のあれこれ〜 (ameblo.jp)

「大地のハンター展」 | 青い日記帳 (jugem.jp)

 モグラの次に楽しかったのがクモの展示です。昆虫と比べるとマイナー(??)な虫かもしれませんし、クモといえば糸を用いた網というイメージもあるかもしれません。しかし、実際には、粘液性の糸を武器としてハンティングを行うものや、糸を使わず肉弾戦を挑むもの、地中に潜むもの、洞窟の中を徘徊するものなど、バラエティに富んだ生物群なのです。

研究と標本・資料 ≫ 研究者紹介 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo (kahaku.go.jp)

私の研究-国立科学博物館の研究者紹介- (kahaku.go.jp)

世界のクモ 分類と自然史からみたクモ学入門 | STANDARD BOOKSTORE (thebase.in)

 しかし、今回クモについて最も衝撃だったのは、展示ではなく図録の文言でした。ムーセイオンでほろ酔いで図録を繰っていたら、自分の中の常識が覆され、アルコールが吹き飛んで衝撃とともに帰宅する羽目になりました。自分はまだまだ不勉強だと痛感した次第です。

今世紀に入ってから、クモにも草食性の種が存在することが判明した。

  え? そんなニュースあったっけ? 痛恨の見落としです。草食性のクモ、調べてみたら確かにいました。

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草食のクモを初めて確認 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)

バギーラ・キプリンギ - Wikipedia

 小動物の捕食や共食いも行うそうですが、90%以上の食物が植物という珍しいクモです。こういうのがいるから生物って面白いんでしょうね。

 

 久しぶりに科博の展示に没入できた、楽しい1日でした。また機会を見つけて再訪したいと思います。