otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

『コティングリー妖精事件 イギリス妖精写真の新事実』

 先日のZOOMによる井村君江先生の講義の関連の書籍になりますが、早速拝読しました。

 

井村君江ZOOM講義「おぼえておいて欲しいこと」【NLQオンラインセッション#11】講義ファイル3「コティングリー妖精事件とその周辺 その1」レポート - otomeguの定点観測所(再開)

 貴重な情報が多数集積された好著です。上のリンク先でも書きましたが、もともとは妖精写真展の図録として企画されていた書籍です。それが諸般の事情で刊行がずれ込み、結果として今年、コティングリーに関して様々な刊行が相次いでおり、タイムリーな刊行になりました。

 コティングリーに関する写真・証拠物件・関係者の証言・現在のコティングリーの様子などの実証的な視点、写真史としての文化論、コナン・ドイルを中心とした当時の文化史・表象史、妖精の受容に対する心理の考察などなど、収められた論考の視座は多岐に渡ります。ビリーバーでもなく否定派でもなく、コティングリーを20世紀の精神史・文化史における一大事と位置付けて冷静に議論する。日本においては、超自然・オカルト・オカルティズムに対するアカデミックなアプローチが少ないですから、学術的な書籍は存在自体が貴重なものです。

 上記リンク先の、井村先生の講義内容と関連させながら、興味深く拝読しました。私自身は妖精に対してバサッとやってしまう否定派に近い人間ですが、それでもやはり、表象としての妖精を許容する襞の深さは持っていなければいけないと思います。

 来月はアトリエサードの《ナイトランド・クォータリー》でコティングリー関連の増刊が出る予定だそうなので、そちらも楽しみにしております。